第16話
「それでは、御馳走さまでした。あ、お好み焼き、美味しかったです」
間もなく上前津に到着という所で吉川は加代子にお礼を言った。
「はい、美味しかったですね。えーと、あの、ま、また行きましょぅ……」
加代子なりに精いっぱい答えた。
吉川はドキっとし、
「はい、ぜひ、あの、また行きましょう」
吉川も返した。
上前津に到着し吉川は降りて行った。
楽しかったな……
加代子は吉川が見えなくなるとすぐにスマホを取り出し、
「とても楽しかったです。また行きたいと思います」
と自分の気持ちを素直にメールで送った。
「はい。私も同じ気持ちです」
すぐに吉川から返信が来た。
自室に戻った吉川はスマホを見つめていた。
――家に着きました――
というメールが来るのではないかと思っていたからだ。
まだ午後10時前だが、女性を一人駅からマンションまで歩かせるのはたとえ日本と言えどもいささか心配であったからだ。
吉川は今日の食事の時からずっと思っている事があった。
彼女が自宅に着いたら、電話して気持ちを伝えよう。
そう考えていた。
10分程でメールの着信が鳴った。
慌ててメールを開く。
「家に着きました」
それだけのメールだった。それでも吉川には嬉しかった。自分が心配している事を察してメールを送ってくれているのか判らないが、こういう事が出来る人が好きだった。
意を決して電話をかけた……。
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