第17話
「は、はい、渡辺でございます」
「あ、吉川です」
「はい、ど、どうも……」
「あ、渡辺さん、えとですね、実は、希望がありまして」
「はい、なんなりと……どうぞ……」
「えとですね、初めて、あの、渡辺さんとお会いした時からなんですが、私と、私は渡辺さんともっと、一緒に話をしたり、食事をしたり、したいと、思っておりました……」
「あ、あ、そうなんですね……ええ、はい、私も同じ気持ちです……」
吉川は続けた。
「そ、それでですね、えと、もっと渡辺さんの近くに……いたいと思っておりまして……」
「あ、そうなんですね……はい、えと、奇遇ですね……」
「もし、あのー、ご嫌でなかったらなんですが」
ご嫌という言い方は正しいのだろうか。
「あの……あ、はっきり言いますね。えと、渡辺さんの家の近くに、えー、あの、引っ越してもよろしいでしょうか?」
「……」
「あ、迷惑ですよね……すみません、すみません……」
「いや、違うんです。あのー、えーと、あ、吉川さん。いい情報が、あります……」
寒さと緊張で吉川の身体が震える。
「私の隣室が今、空き室になっております……」
おしまい
二人だけの同窓会 折葉こずえ @orihakze
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