第12話
おはようございます
お疲れ様です
おやすみなさい
・
・
・
二人は毎日、こんなメールのやり取りを続けた。
最初の出会いから2週間が経とうとしていた。
吉川は相変わらず業務連絡の様なメールを、毎日加代子と交わしている。
その頃になると隣のデスクの千鶴も見慣れてきたのか特に何も言わなくなり、暖かい目で見守るように見てくる様になった。
吉川は加代子をまた食事に誘いたかったが解らない事が多すぎる。
どのくらい間を置いて次を誘えば良いのか。メールで良いのか。迷惑じゃなかろうか……。
吉川には全てが初めての経験である。誰かに相談するにも相手もいない。
いや、いるではないか。
「あ、あ、あの、加藤さん。ちょ、ちょっといいですか?」
「なんですかー? 先輩から話しかけてくれるなんて珍しいですねー?」
千鶴は嬉しそうに答える。
「こ、ここではアレなんで、ちょっと廊下でお願いします」
「いいですよー」
吉川は千鶴を廊下に連れ出し人気のない所で話した。
「ふむふむ~。食事に誘うタイミングですな」
「ちょ、ちょっと声が大きくないですか?」
「女性としてはですねー、よほど嫌いな相手でもない限り誘われたら嬉しいものですよ。毎日メールを交わす程の仲ならなおさらですな」
「そ、そういうものなんですかね?」
「うんうん、自身を持ってお誘いすれば良いと思いますよー」
女性からの生のアドバイスを貰えた事に吉川は勇気付けられた。
「わ、わかりました。加藤さん、ありがとうございます」
「へへへ、また報告してくださいねー」
千鶴はニヤリとしながらデスクへ戻って行った。
しかし、途中で立ち止まり、
「あ、それと先輩、自分で気づいていないかも知れませんが、かなりイケてますよ」
「……」
よし、今夜メールで誘うぞ。
そう思うと吉川もデスクへ向かった。
帰宅しコンビニで買ってきた弁当を食べた後、吉川はスマホを手にした。
なんて誘えばいいだろう? 内容も加藤さんに聞いておくべきだったな……
後悔しつつも文章を打った。
「渡辺さん、今晩は。今週の金曜日ですがご都合はいかがでしょうか?」
文章として変ではないか? と思いつつも送信ボタンを押した。
すぐに返信があった。
「金曜日は特に何もしておりません。と言いますか、毎日何もしておりません」
自分と一緒だ……
吉川はそう思いながらも一先ず安心し次のメールを送った。
「もしよろしかったら、食事でも行きませんか?」
またすぐに返信が来る。
「お誘い有難うございます。喜んでお受けいたします」
吉川は胸をなで下ろした。
加代子からすぐに続きのメールが来た。
「次は私が御馳走しますので。何がよろしいでしょうか?」
吉川はすぐには決まらず、
「金曜日までに考えておきます」
とだけ返した。
その後、待ち合わせの時間と場所を打ち合わせをした。
吉川はドキドキしながらシャワーを浴びる為に浴室へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます