帰宅部はただ帰る部活ではなかった?

結野ルイ

帰宅部て、何するんですか!

ある高校にこの春に入学してからはや1ヶ月経っていた。


「決めたか? もう決めるぞ!」

「いや、別に勝手に決めていいですよ。部活なんて、興味ありませんから」


職員室に担任に呼ばれ、部活のことについて話していた。

この学校は、部活強制らしい。


「しょうがない、帰宅部でどうだ?」

「あー、それでいいですよ。それじゃあ失礼します」


担任の困った顔を見ながら職員室を出た。

校内は、皆各部活で賑わってる中俺は静かに帰る準備をした。


「ねぇ、君。1年生だよね?」

「あーはい。部活には興味無いので失礼します」

「ちょっと待って!」


1年上の女子の声を無視して俺は、逃げるようにロッカーからローファを取りだし、直ぐに玄関から飛び出して行った。


部活なんて、めんどくさいし、休みを使って練習するなんて辛い。

中学生時代、部活に入っていたが、あまりの辛さに1年半で辞めてしまった。

その事がきっかけで俺は、部活を拒否している。


次の日


学校に来るとやけにクラスがざわついていた。


「か、会長。どうしたんですか?」

「いえ、ちょっと彼に用事がね」


この騒ぎは、美少女生徒会長がクラスの廊下にいたせいらしい。

まぁ興味ないけど...


「ちょっといい?」

「はい?」


美少女生徒会長は、俺に声をかけると頬杖をついていた右手を、ぶんどるかのように引っ張り屋上に連れてこられた。


引っ張られた右手を離され、近くにあったフェンスにもたれた。


「また部活勧誘ですか? 生徒会長さん」

「ち、違うから!」


少し頬赤く染めて否定された。


「じゃあなんですか?」

「ちょっと話したいことがあって...」

「話したいこと?」

「話したいことていうのは、君は今帰宅部に入ってるよね?」

「あー、担任に勝手に入れられたけど...」


そのことにほっとしたのか、彼女は胸に手を置いて一息ついた。


「そのね、帰宅部て言っても一応集会あるから来て欲しいんだけどいいかなって」

「へぇー集会あるんだ。帰宅部なのに」

「うん。それで今日の放課後生徒会室に来てくれないかな?」

「いいですけど、なんで生徒会室?」

「いいからいいから。じゃ放課後に」


彼女は俺に手を振って屋上を後にした。

俺はフェンスに、もたれながら考えていた。


生徒会長なんで、俺が帰宅部だってこと知ってるんだ?

てか、なんで生徒会室に集合??

うーん。さすがにいかないとまずいよな...


悩んでいるといつの間にかチャイムが鳴り、俺は慌てて教室に戻った。


放課後


言われた通りに、生徒会室の目の前に来た。

3回ノックをして入ると見覚えのある生徒会長と、他に二人いた。


「きたきた、じゃはじめよっか」

「はい。しかし、会長いいのですか?」


頭良さそうなメガネをかけた男が俺を睨みつけてきた。

「え? 別にいいよ。谷先生にはお世話になってるんだし」

「なるほど、なら問題ないでしょう」


谷先生て、俺のクラスの担任じゃね?

なんで...


「君は、いつまでそんなとこに立ってるの? 早く中に入ったら?」

「そうですよね〜」


生徒会室に入り、椅子に案内されて座ると目の前にいい香りがする紅茶とケーキが出された。

いいのか、これ


「遠慮しなくていいから、食べて」

「甘いものはあまり...」

「え、じゃあ、ぼ、僕が!」


目の前にいた小柄な男が目の前のケーキに触れようとすると、真横に居た生徒会長にその手を跳ね除けられた。


「少しは遠慮しなさい!」

「いや〜あはは」


なんだこの生徒会。


「あ、そうだこれ読んどいてね」

「これ、帰宅部の資料ですか?」


受け取った資料をぱらぱらめくると、遊び尽くしてるような写真ばっかり載っていた。


「そう、一応帰宅部件生徒会件遊び部だけどね」

「へぇー、え?」

「あ、言ってなかったけ」

「聴いてないですけど...」


真横にいる生徒会長を睨むと、困ったような顔をし始め、もうひとつの資料で自分の顔を隠した。


「会長。それぐらい説明しておいて下さいよ」

「ごめんごめん。忘れてた」


なんだこの人たち...


「一応何となくわかったと思うけど、私達も君と同じ帰宅部なの。そして生徒会でもある。ここまで質問は?」

「ないけど...なんで、生徒会....」

「お、いいとこ気づきますね。それはこの学校は部活動強制のため、放課後部活しているものは忙しい。なので、我々帰宅部が生徒会をやろうという生徒会長の考案により結成されました!」


メガネをかけた頭良さそうな男がメガネに手を当てて、語り出した。

そもそも生徒会なかったのかよ。


「あー、元々生徒会はあったから安心して」


俺のここを呼んだかのように、彼女が突然答えた。


「あんたはエスパーか!」

「いや〜何となくわかるだけだよ。ふふふ...」

「会長。怖いですよ」


小柄な男が怪しげに笑っている生徒会長にツッコミを入れた。


「え〜いいじゃん。エスパーなんだし〜」

「よくないですよ」

「よくないな。お嬢様なんだからそこは上品にな...」

「家の事は学校で関係無いでしょ!」


へぇー会長お嬢様なんだ...


「と、とにかくよろしくね。えーと」

「あ、桐谷 薫です。よろしくお願いします」


その後、俺は生徒会の一員として働き暇のない学校生活を送った。

でも、この楽しい生徒会も残り数ヶ月になっているのは誰も知らなかった。







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