俺の幼馴染は天然美少女過ぎて俺の恋心に気づいていない……

華川とうふ

ホラーorミステリー?

「ホラーにするか、ミステリーにするか……」

 宮森アリス俺の幼馴染はそういって、かれこれ一時間以上ぶつくさ言っている。


 一体なんのことだと思って、アリスがときどきチラチラと眺めては呻き声をあげるスマホをのぞき込むとそこには小説投稿サイト『カクヨム』の画面があった。


 どうやら、カクヨムのイベントで小説を書くのにお題が『ホラー』か『ミステリー』だったらしい。


 どっちでもいいから、悩んでないのに書けば良いのにと俺は思うけれど、アリスは書き始めるどころか机に額を打ち付けそうになったり、眉間に深い皺を刻むのに忙しい。


 せっかく可愛い顔をしているのに勿体ない。

「嫁のもらい手がなくなるぞ。         そのときは俺が貰う

 といつもならからかうのだけれど、今日はなんだか真剣な感じがして言えなかった。


 幼馴染のアリスは可愛い。そして、すごくマイペースだ。

 先月だって、バレンタイン特集の記事を俺に見せて「コレ食べたいの~、作って~」とねだってくるし。(「どれが食べたい?」と聞かれると思ってちょっとドキドキした俺の気持ちを返せ!)


 そのおねだりに負けてバレンタインに手作りチョコを俺が渡したのに、ホワイトデーにお返しはなかった。


 本当は昨日なにかあるのではないかと期待していたのに。

 昨日は「来週出かけよう」ってメッセージが送られてきただけだった。たぶん、これは脈なしだ。脈なしというかアリスが誰かに恋愛感情を抱くなんてことがこの先あるのかも疑う。


 そんなマイペースで美少女な幼馴染に惚れてしまった俺はきっとこのままアリスの側に居続けるのだろう……。


 でも、その代わり俺以外の誰かを好きになることもなさそうというのはちょっとだけ安心なところだ。

 初めてあったときからアリスのことが好きだった。


 こんなに可愛らしい子がいるなんてと子供ながらに驚いた。

 色素の薄いやわらかい髪は太陽の下では金色に輝くし、ミルクのように白い肌、薔薇のように赤い唇。

 その姿は物語にでてくるお姫様そのものだった。


「ねえ、ホラーとミステリーどっちがいいと思う?」


 一時間以上、一人で悩み続けて限界なのかアリスが、机にピトリとほほをつけた状態で俺にたずねる。


「どっちでもいいんじゃない?」


 俺が適当に答えるとアリスはぷくっと頬を膨らませる。


「そんな他人事なんて、ひど~い」


 いや、他人事だし。

 だって、小説の話なら作者であるアリスの問題だ。

 俺が下手に口を出すべきじゃない。


 アリスは拗ねたまま、スマホの上で指をすべらて画面をみつめる。

 ときどき、そのすらりとした指先の桜貝のような爪が画面にあたりカツカツと小さな音を立てているのがなぜかすごく愛しかった。


 それから、俺にスマホの画面を突きつける。


「これか~」


 そういって、ホラー映画のポスターを見せる。

 そして、俺がその映画のタイトルを読み終わるか読み終わらないかのうちに、再びスマホを引っこめて操作して、


「これっ!」


 次はミステリー映画のポスターだった。


 えっ? どういうことなんだ。

 俺が戸惑っていると。


「バレンタインデーのお返しに映画おごるって昨日言ったじゃん」


 アリスの頬がさっきよりも濃い桜色に染まっていた。

 照れているみたいだ。

 いや、アリス、昨日は『来週でかけよう』としか言ってないし。

 もしかして、デートってことだろうか……。

 ……俺たちってもしかして両思い?


 というか、ホラーかミステリーかって小説を各話じゃなかったのかよ。


「ほら、ホラーorミステリー? どっちにするの?」


 俺はアリスが一時間悩んだ映画2本のポスターを見比べたあと、がっと頭を下げながら言った。


「エヴァをみにいきたいです!!」


 ものすごく怒られたけれど、来週はアリスと一緒にエヴァを見に行けそうだ。

 なので、ネタバレはしないで欲しい……。

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俺の幼馴染は天然美少女過ぎて俺の恋心に気づいていない…… 華川とうふ @hayakawa5

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