第4話
沈黙の中あたしたちは歩いた。
どれくらいたっただろうか?
もう少しであたしの家に着く。
あのとき蓮月くんはあたしの腕を掴み
「送るよ」
と言ってくれた。
しばらく歩いたが二人はずっと隣で歩くだけで無言が続いた。
蓮月くんにはいろいろ話したいことはあった。
だけどどう切り出していいかわからずにいた。
そんなことを思いながら歩いてるとこの沈黙の中最初に破ったのは蓮月くんの方だった。
「この前の話だけど」
蓮月くんが言うこの前の話...。
きっとそれは二人で水族館に行ったときのことだろう。
蓮月くんに突然告白され慌てたあたしは逃げるように帰っていった。
「あ、あのときはその...ごめんなさい」
ずっとこの事について謝りたかった。
前にえいなちゃんのイベントに出たかったとき変わってくれて助けてくれたのにあたしは恩を仇で返したような振る舞いをしてしまったからだ。
「嫌、俺も突然言ったのが悪いから」
またあたしたちは沈黙になった。
何をどう話したら良いんだろう。
頭の中をフル回転させ考えたがもう少しで家に着く。
「送ってくれてありがとう」
結局何も言わないまま家に着いてしまった。
「この前言ったことなかったことにしてって言おうと思ったけどやっぱり諦めきれないや」
突然蓮月くんが静かに笑って言った。
そして続けて
「もし水無月さんに好きなやついないなら付き合ってよ!試しにでも構わない。好きにさせるから!それじゃ」
あたしの返事を聞かずそれだけ言って去っていった。
何これ?
何が起きた?
この間のこともだけどあたしは男の子になんて告白されたことなんて一度もなかった。
ましてや男の子を好きになったこともない。
あたしの中心はえいなちゃんだけだったしドキドキしたり幸せを感じたり辛い思いもしたり...それは全部えいなちゃんしか味わったことないことだった。
「もしもし。急にすみません」
「お!天使さんお久しぶりですね」
あたしは今さっき起きたことをひなさんに話を聞いてもらうため電話をかけた。
「なるほど...きっと彼は本気で天使さんのこと好きなんですね」
ひなさんは真剣に聞いてくれた。
そしてひなさんは凄いことを言い出す。
「いいじゃないですか、試しに付き合ってみても」
まさかの答えにビビってしまった。
「待ってくださいよ!好きかわからない人と付き合うなんて。ましてやえいなちゃん以外の人間を好きになったことなんてないんですよ」
あたしの慌てっぷりにひなさんは大笑いした。
そしてすぐに落ち着き謝ってきた。
「えいなちゃんを思う気持ちとても素晴らしいです!さすが天使さんですね!自分もそう思います」
ならあたしの気持ちわかりますよね?
付き合うなんて考えたこと..そう言おうとしたがひなさんはゆっくり話を続ける。
「えいなちゃんはえいなちゃんで大切に思って彼のことも少しで良いから考える時間を作ればいいんじゃないですか?」
いろいろ話してひなさんとは電話を切った。
結局自分がどうしたいのかもわからないままあたしは寝落ちした。
ある人がSNSを投稿してるのも気付かずに。
※今回の推しあるある
ガチ恋勢になると周りが見えなくなる
推しと他の人を比べてしまう
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