第10話


しばらくしてあたしたちは落ち着きを取り戻した。

気付けば夕方6時親もそろそろ帰ってくる頃だ。

ゆうすけは立ち上がり家に帰ろうと支度した。

すると突然チャイムが鳴った。


「あっ!ちょっと待ってて」


あたしは帰ろうとしてるゆうすけに言い玄関へ向かう。

扉を開けるとそこにはひまりがいた。


「あれ?ひ、ひまり!どうしたの?」


あたしは慌てた口調で聞いた。

ひまりはあたしの言葉を無視して玄関に並べられた靴を見て聞いてくる。


「おとこ?今日ひかりバイトじゃなかったの?」


下を見てゆっくりと落ち着いた口調で言う。

すると階段を降りる音が聞こえた。


「ゆ、ゆうすけ!なんであんたがひかりの家にいるの?」


ひかりの口調が少し怒ったようだった。


「べ、別に!ちょっと勉強わからないところがあったから聞くがてら教えてもらおうと」


ゆうすけは落ち着いてあたかも本当のことのように話した。

でもひまりは知っている。

最近二人が何やらこそこそ仲良くしていることを。

そしてコンビニで話していたことを。


「嘘、なんか約束していて会ってたんでしょ!二人はどういう関係なの?」


ひまりは泣きそうな顔で聞いてくる。

とりあえず玄関で話してこの状況帰って来たママが見たら困るからとあたしは二人を部屋に入れた。


そしてあたしは気付く。

さっきまで二人で見ていたえいなちゃんグッズがあちらこちらに置いてあるのを。


「ひかりこれは...」


やってしまった。

あたしはなんとか誤魔化そうと頭をフル回転に考えたがこの状況で誤魔化しても意味がない。

ひまりにはえいなちゃんを見られたくなかった。

ひまりはえいなちゃんが嫌いだからだ。

あたしが焦っているとゆうすけは口を開けた。


「俺たちえいなちゃん同盟なんだ!ひまりにはわからないかも知れないしキモいかも知れないけどな!今日もえいなちゃんグッズを見て二人で萌えていた」


とうとうひまりにバレてしまった。

嫌、もうこれはいい機会なのかも知れない。

あたしもゆうすけに続いて話そうとしたときひまりは崩れ地べたに座った。


「そ、そうなんだ。なんだ!そっか...よかった...」


ひまりはなぜか泣いた。

まさかの出来事にあたしとゆうすけはどうしたらいいかわからずひまりが泣き終わるまで待つことしか出来なかった。

しばらくしてひまりは涙を拭き泣き終わる。


「ご、ごめんなさい。てっきり二人は付き合ってるのかと思って」


それを聞いたゆうすけは大爆笑。

全力でないないと答えた。

そこまで言わなくても...。

逆にあたしが泣きたいわ!そんなことを思いながらあたしはひまりの側に近付いた。


「黙っててごめんね、言おうと何回も思ってたんだけど前にひまりがえいなちゃんあんまりって言ってたからなかなか言い出せなくて」


あたしが本当の気持ちをひまりに伝えるとゆうすけは時計を見てそろそろ本当に帰らないとと言い出した。

部屋にはあたしとひまりだけ。

ひまりがあたしを抱き締めた。


「あたし...好きなの」


少し空いている窓から風が入りカーテンがヒラヒラと動き夕焼けの日差しが部屋いっぱいになった。

たくさんの人がいるこの日本に今あたしはまるで二人だけしかいないんじゃないかとさえ思えた。



※今回の推しあるある


部屋を見たらオタクだとすぐにわかる

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