光の風を復活させ、夫を倒そうとした妻が、逮捕されました。

@maetaka

第2話 夫婦ゲーム(夫婦補完委員会?)

 こんな言葉に騙されては、ならなかった。

 「家庭では、良き妻でありなさい」

 そう言っていたのは、誰だったのか?

 良く考えれば…。

 それを言っていたのは、ゴミ出し作業を勘違いしている、へっぽこワールドカップの定年退職世代おじさんたちじゃあ、なかったのか?

 頭が、痛くなってきた。

 ちょっと話は変わって、この社会を守るのは、社会に生きる者としての責務だろう。 

 けれども、定年退職世代のおじさんたちが作り上げた時代錯誤のこの社会を守る価値って、どのくらい、あったのだろうか?

 もう、ほとんどの人が、気付いているはずだ。

 「定年退職世代のおじさんたちが作ったこの社会は、守るんじゃなくて、戦って、変える必要もあるのかもしれない。終身雇用の生き方は、変えようよ」

 行動をしなければ、ならなかった。

 「そうだ…」

 迷う心が、弾け飛んだ。

 心が、煮詰まった。

 「新生活専用の雑誌に載っていたあの委員会に、連絡をとってみるかな…」

 新型のウイルスが全社会に広まっていて、その感染予防のためにも、オンラインの遠隔情報操作が、当たり前となっていた。

 TV会議システムで、夫婦補完委員会というところまで、連絡を入れてみた。

 遠隔のTV会議システムとは、便利なものだった。

 「現在、連絡が付いた委員は…3名、4名…」

 逆カウントダウンのような声が、響いた。

 すぐさま、各地に散らばっていたという各委員に情報がつながり、多くの他の夫婦にも問題意識をもってもらえるよう、呼びかけがはじめられたようだ。

 「あ、そうだわ!」

 彼女に、1つのアイデアが、閃いた。

 「この機会に、こんなR PGゲームが作れたら、良いのにな」

 脳内プログラマーにでもなった気分、だった。

 「ある朝、目覚めたら、すぐ近くに、闇の部族っぽいかもしれない夫が寝ていた。どうしよう?っていうか、やっちゃう?」

 そんなドラマを演じるゲームが作れないものかと、身もだえていた。

 そのアイデアを、オンラインで披露しちゃおうかなと、考えていた。すると、考えていただけなのに、反応があった。

 夫婦補完委員会なる団体から、連絡がきた。まるで、こうとでもいいたかったように。

 「それでは、あなたの考えたゲームを、具体化してみませんか?」

 特別な機器などは、必要なかったらしい。

 「あなたの思うように考えて、行動をすれば、良いのです」

 すぐさま、新しい画像が届けられた。

 「あなたが、目覚めたとき」

 極太の明朝体が、画面いっぱいに、踊っていた。

 そしてまた、極太明朝体が、細く、成長をして移り変わっていった。

 女性、特に、夫を抱えたようなプレイヤーが目覚めた(朝、起きたということか)状況をスタート地点として、たくさんの行動が、枝分かれをして示されていた。

 たとえば、こんな具合だ。

 「目覚める」→「おはよう、あなた!」or「何?あなた、そこにいたの?」→「洗顔」→「朝食を作りに、キッチンにいく」or「刃物を取りにキッチンにいってから、夫のもとへと向かう」→「ほほ笑みながら、楽しく食事」or「ほほ笑みながら、ロープや手袋の準備」→「仲間を、呼ぶ?(私1人じゃ、夫を運べないもの)」or「逃走」

 妻が、光の風を復活させ、闇の部族っぽい夫を滅亡に追い込むまでをゲームとした、フローチャートだ。

 枝分かれをしたたくさんの行動の中に、光の風を復活させるという件がなかったのは、その行動が、夫と戦うためのフラグとして、最低限の「マナー」(←「条件」の間違いじゃないの?)であったためなのだろうか。

 説明の省略が、生意気だった。

 「私のアイデアって、生かされちゃうんだ…」

 そんな彼女の不安をよそに、夫婦補完委員会は、新しい反応をよこした。今度はあちらもじっくりと考えたのか、間が開いていた。

 「なるほど、良いアイデアですね。会議の結果、これでいこうと、決定いたしました。夫婦ゲームといったところ、でしょうか?これは、今後も充分に会議に値する内容だと、捉えております」

 それから、またも間が開いて、問いかけがはじめられた。

 「それでは、それぞれの枝分かれポイントで、妻としてのプレイヤーは、どのような心理状態になるでしょうか?できる限り、リアリティある想像をもって考え、我々に、示してみてください」

 彼女の瞳が、震えた。

 「私ったら、今ここで、何をやっているんだろう?」

 が、その心配とは裏腹に、委員会は、しっかりと、応じてくれた。

 「かしこまりました。あなたの要望をまとめ、委員長に伝えます。まずは、こちらの専門委員より、あなたの夫婦感覚をもとに、意見交換を交わしてみましょう」

 思ってもみなかった展開に、なってきた。

 彼女の思いは、受け止められた。

 その2日後、委員会から、彼女の個人的なメルアドに連絡が入った。

 「あれ?私、このメルアドを、教えたっけ?」

 いぶかることは、やめにした。

 思いが受け止められたのだから、文句は言いたくなかったのだ。

 「それではこれから、第14次中間報告を、オンラインで披露します。素晴らしいゲームを開発することが、できそうです」

 報告会の模様が、映し出された。

 委員会は、彼女の思い、アイデアから、こんな話し合いをおこなっていた。

 「我々委員会が調査したところでは、社会の妻は、夫に、なかなか、ものを言えないということがわかってきております。発言後のメリット、デメリットを予測すれば、黙らされるしか、ないのでしょう。夫は、それを逆手にとって、自己満足にふける日々です。騙し、騙され…。人を騙すキツネというものがいるそうですが…。コホン、コン。コーン!キツネとは、良く言ったものですねえ」

 「…」

 委員会の言葉は、辛辣だった。

 「どうでしょう?この機会にあなたも、もう少し、この巣ごもり夫婦ゲームについて、考えてみませんか?このゲームを発展させることも、できそうですよね?」

 挑戦状のように、思えてきたものだ。

 「しかしながらあなたは、ご注意を。委員会の中には、女性はわきまえろという意見もあるくらいでしてね…」

 それを聞いて、なんだか、疲れてきた。

 「もう、良いわよ…」

 オンライン画面の接続を、さみしく、ぶち切っていた。

 「…あ、そう。じゃあ、私、何も、言わない。懸命な妻なんですもの、当たり前よね?何も言えなくなる妻を、演じてやるわ。そうすれば、たくさんの人に共感をもってもらえるんでしょうから。そうして、本当に、光の風を復活させてやるんだから!これは、素敵な素敵な、新R PGゲームになるはずよ」

 とりあえずは、沈黙を、誓っていた。



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