ドクハク

各務ありす

3/15 優しさとは

昔からよく使われる言葉のひとつに「優しい」がある。

長所を述べるときによく耳にするが、私はこの言葉が好きではない。

言われることが何度かあったが、言われても、全く嬉しくないのである。

「他に褒めるところがないから、とりあえず優しいって言っとけばいいか」とクラスメイトが話しているのを聞いたことがあるからだろうが、

確かにこの言葉を使う人間はほとんどがこんなことを考えていそうだ。


……偏見が入ってしまった、申し訳ない。

だが考えてみてほしい、

「優しい」とはどういうことだろうか?


例えば、思いやりがある。

例えば、滅多に怒らない。

例えば、物腰が柔らかい。


なぜ、「優しい」という至極曖昧な形容詞で、誤魔化すのか。

思いやりがある、いつも冷静である、品がある……と褒めればいいではないか。


曖昧な言葉で誤魔化された賞賛など、微塵も響かない。

私があなたにとって「優しい」と感じるのは、私が「従順である」ということではないか。

うまく生きるためにそうしているのであって、私はあなたに従ったつもりはないが。


「優しいね」と言われるたびに、「見下されている」と感じる私は間違っているのか?


「優しい」は褒め言葉なんかではない。だから私は他人にこの言葉を使わないようにしている。


優しくなんかない、

あなたが見ている私は、あなたのために繕った、オーダーメイドの私なのだから。

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