過去から今へ、そして未来へ リメイク版

ラピス

プロローグ

プロローグ

キャラ設定と矛盾する部分があったので改稿しました。

ストーリーとは関係ありません。

――――――――――――――――――――――――――


side 春宮紫苑はるみやしおん


揺■る大■。

■音を立て■■る■細■。

■し■■れていく■達。

逃■惑い、叫■人■。

踊り■■■。

■りつ■■れてい■■景。

赤■花を咲■た■■■。

真っ■に■■■、立■■くむ■■。


……これは夢だ。いつか見た光景の再現だろう。

もっとも、殆どを忘れてしまったせいで穴抜けが酷い。


まぁ、仕方のないことだ。

記憶は摩耗し、消えていく。大切かそうじゃないかなどがお構いなしに。

それが幼い子供の頃の物なら言うまでもないだろう。


……ひどく悲しい。絶対に忘れちゃいけないってことを忘れているのだから。


……それが何か、何故なのかも一緒になって忘れているんだけどな。


まぁ、所詮、僕はその程度の存在なのだろう。


……そろそろ目が覚める。


意識が覚醒を始めている。

惰眠を貪った脳に身体が十分な回復を告げ、意識のスイッチが変わる。


薄っすらと瞼が上がり始める。

この瞼の奥にある瞳が天井を仰げば、僕の意識は完全に覚醒するだろう。

そんな憂鬱を抱えながら、また、今日が始まる。


 △▼△


ジリリリリ!!と鳴る目覚ましを止めてベットから這い出る。

寝ぼけなまこを擦りながら目覚まし時計を掴み、瞳へ近づける。

時刻は午前7時。そろそろ起きた方が良いか……。


だって今日は高校の入学式だ。

初っ端から遅刻というやらかしはNGだろう。

部屋を出てキッチンに向かう。

両親は既に仕事へ行ったようだ。まだ7時だというのに熱心なことだ。

……まぁ、何時ものことだし、呆れるのも疲れるが。


さて、朝食は……適当にトーストとスープで良いか。

姉も義弟おとうとも家にはいない。

居るのは僕と義妹いもうとだけだ。

そこまで手の込んだ物を作らなくて良いな。


調理を済ませキッチンからリビングに移動する。

冷蔵庫の残り野菜とコンソメを鍋に入れ、電子レンジでパンを焼くだけだから十分もかからなかった。


いただきます、と言って食べ物を口に放り込む。

いつも通り味気なく感じたのはご愛嬌だろう。

一人の食事程虚しいものはない。


そんなこんなで時刻は7:40。

高校まで徒歩でおよそ30分。集合時間は8:30。

そろそろだろう。

そういえば、まだ義妹が起きていなかったな……起こすべき、か?


「まぁ、いっか。」


流石にキモいと言われるのは嫌だからな。

それにもういい年だ。

自分で色々できるだろうし、するべきだ。


そんなことを考えてドアを開ける。

ドアから出ると太陽の光が僕を照らす。

四月の春らしく温かで穏やかな光が僕を包んでいる。


さぁ、新生活の始まりだ。


 ▼△▼


「……やあ! 紫苑。おはよう!」


僕は何も見なかったことにして進む。

……そう言えばコイツとも同じ高校だったな。


「?! おい! 流石にそれはないだろう?!」


チッ、回り込まれたか。

普段なら良いが今回は面倒事の匂いがしたから逃げたかったが。


「……ああ、いたのか祐介。」


観念して目の前にいる腐れ縁のイケメン幼馴染―――夏目祐介なつめゆうすけを直視する。

服や髪が乱れているが、それでも彼の爽やかさは損なわれていない。

ちなみに彼女持ちだ。羨ましくはないけど。


「で? どうし「助けてくれッ!!」……。」


やはり、無視して進もうか。

多分僕の手には余るだろうし。

何と言うか……このやり取りは何回目だ?


「ああっ! 待ってくれッ!!」


ガシッと肩をつかまれる。

……結構力を入れてる。逃げられないな。


流石は体育会系。

体格、筋力共に帰宅部の僕とは比べ物にならない。


「分かった。分かった。取りあえず学校行こうぜ?」


何とか祐介を宥める。

逃げないことを察した祐介はやっと落ち着いたのか、僕の肩から手を放した。

面倒事は勘弁なんだけどな……いや、面倒事というか単純に面倒くさいのは嫌なのだ。


「で? どうしたんだ?」


「っ! そ、そうだ。実はな―――!」


正直、後悔した。

聞かずに学校へ行けば良かったと思う。

だってあいつずっと彼女に対する愚痴ばっかりだもん。


でもなんだかんだ言って好きなのだろう。

いや、むしろ大好きといったほうがいいのでは?

最後の方なんか惚気だ。

勘弁してほしいものである。


……まぁ、コイツら二人に発破かけたのは僕だからな。仕方がないか。


最後まで、とは言わずとも少しくらいは面倒を見てやろうと、また思ったのだった。


 △▼△


学校に入り、教室を確認し、移動する。

どうやら祐介とは同じクラスみたいだ。

この高校は公立ながらも人気があり、そのせいか他にも中学の同級生だった奴もいる。

結構な人数がいる。 高校生活一年目は楽しく過ごせそうなくらいには。


……まぁ、ヤンキーやギャルみたいな時代遅れな不良連中がいなければ、だけど。


「……紫苑殿、大丈夫ですかな。このクラス。」


僕の前の席にいる奴―――羽根山龍樹はねやまたつきがスマホ片手に不安そうに聞いてくる。

羽根山とは中学生時代からの友人だ。


しゃべり方が結構アレだが悪い奴じゃない。

オマケに見事なまでに太っており、外見と喋り方だけ見れば相当なアレな奴である。


……まぁ、コイツもいろいろあったからな。仕方が無いというやつだろう。

それに僕にとってどうでも良い事ではあるしな。


「……そうだな。先生もあんなんだし。」


ちらりと先生と不良達を見る。

人を見た目で判断するな、とよく言われるがしょうがないと思う。

よれよれのスーツを着たおじさん先生に髪を染めて、ピアスをつけた典型的な格好をした不良連中。


この光景を見て不安になるなと言う方が無理があるだろう。


 ▼△▼


入学式は問題なく終わった。

特に何か変わったことは無く、問題も起こることは無く、つつがなく進行して終わった。

だから今は教室で羽根山と駄弁っている。

新しい出会いや一部他クラスの生徒がいるせいで教室の中はかなり賑やかだ。


……ちなみに祐介は彼女に詰問されている。南無。


「……紫苑殿、助けなくてよろしいのですか?」


え? やだよ。面倒ごとに巻き込まれたくないし。

羽根山だってそうだろう?

だから無視だよ。無視。


「まあ、そうですなぁ。ぶっちゃけ、祐介殿と秋崎殿が二人いるところには近づきたくないでござる。」


ちなみに秋崎とは祐介の彼女のことでフルネームは秋崎あきざきこころという。

かなりの美少女で性格がよく男女問わず人気がある。


……もちろんながら本性はそんなんじゃあない。

よくある美少女らしく、面倒くさい女だ。


羽根山も騙されていた時期があったからな。

因みにだが祐介とは幼馴染の関係でずっと前から好きだったとのことだ。

余談ではあるが祐介も整った容姿だが秋崎は『絶世の』がつく容姿をしている。

そのため、意外と祐介がイケメンだと思われることは少ない。


「あー、見ろよ。秋崎だ。」


「! 本当だ。マジでこの学校だったのかよ!」


「……クソっ。―――」


教室にいた奴らも秋崎がいることに気づいたらしく、さらに教室が騒がしくなる。

地元連中が多いだけあって、秋崎は直ぐに注目を集める。

まあ、あれだけの美少女は周りが放っておかないだろう。


……さて、そろそろ帰ろう。

もうやることは終わったし、早く帰って眠りたい。

早起きをしたから眠いのだ。


「紫苑殿、面倒事が嫌なのは分かりますが、少し待って下さい。」


「どうしてだ? この後に何かあったっけ?」


「さっき、から連絡があったのです。今、来ているそうですぞ。」


彼? 

誰の事かピンとこず、思わず首を傾げる。


「………久しぶり…。」


瞬間、肩に手が載せられ、今にも消えてしまいそうな声がした。

後ろを振り返ると身長は170㎝くらいのやつが僕の背中に隠れるようにいた。

黒髪は長く顔が隠れており、声も中性的なので男の制服を着ていなければ男とはわからいだろう。


……まあ、顔が見えていても変わらないか。

コイツの素顔は酷く整っており、そのまま見ても女と見紛う程だ。


こいつの名前は佐伯忍さえきしのぶ

金持ちの家の一人息子で俗にいう男の娘だ。

重度のコミュ障でめったに人の前に現れず、中学でも数えるくらいしか学校にいなかった。

名簿に名前があったので同じクラスだとはわかっていたが、いなかったので今日は休んでいると思っていた。


「……驚いた……?」


「いや、本当に驚いたよ。」


「はははは! 連絡を受けた拙者が一番驚きましたぞ!! てっきりこういうのはいの一番に紫苑殿に伝えるものと考えておりましたが……。」


「……だって紫苑がメール返してくれないから…。」


ああ、しまった。

そういえば電源を切りっぱなしだった。

高校では電源を切れと校則にあったから切りっぱなしにしてたんだ。


「ごめん、ごめん。次から気を付けるよ。」


「……次から気を付けてくれるなら別に……。」


佐伯から話を聞くと最初はどうやら教室までは来るつもりはなかったらしい。

僕に連絡をして、どこか人目につかない場所で会おうとしていたが、僕からの反応はなし。

仕方がなく羽根山に連絡を取り、今に至るらしい。


どうやら祐介と秋崎が注目されている今なら大して目立たずにいられるからと踏んだためわざわざ教室まで来たとのことだ。

成程なと思い、祐介の方を見ると秋崎以外にも何人かの少女に囲まれている。

僕の視線に気が付いたのか、目線でヘルプコールを送ってきている。


さっさと教室を出よう。

あからさまな地雷原に突っ込む勇者ではないのだ、僕は。

それに何人かは見知った奴だった。

なら大丈夫だろう。少なくと祐介は。秋崎は知らん。


「皆さん。そろそろ下校してください。」


担任の先生が教室に入り、僕たちに下校するように促す。

外を見れば日は沈んでいき、流石に下校するべき時間になっていた。

グッドタイミングだと思い、立ち上がった。


―――その瞬間のことだった。


僕たちの足元にゲームやラノベに出てくるような巨大な魔法陣が現れた。

その瞬間教室にいた全員が硬直した。

中には奇声を上げて狂喜乱舞している奴もいるが無視だ無視。

誰かが離れろと叫ぶが時はすでに遅く、魔法陣は強い光を放ち、僕らは一人残らずその光にのみこまれていった。




















side ???


さあ紫苑、始めよう。

ボクも君も願ったんだ。


それで頑張って機会を設けたんだよ?


本当に頑張ったんだよ?


君が呑気にしている間も、ボクは一生懸命頑張ったんだよ?


だから、さ……せいぜいボクを楽しませて、喜ばしてね―――紫苑?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る