第45話


買取屋との取引は2時間以上もかかった。


俺は何かのためにと現実世界から持ってきた便利グッズなどを全て売り払った。


その結果、手に入れた金貨が全部で59枚。


今手元にある50枚の金貨と合わせれば、100枚の目標を余裕で超える。


「毎度あり〜」


買取屋を出ると、店主が店の外まで見送ってくれる。


日本では数百円くらいの値段で売られている商品に59枚の金貨を支払った店長はほくほく笑顔だ。


きっと後日、俺から買い取った何倍もの値段でどこかの貴族にでも売りつけるのだろう。


だが、それは俺の感知することじゃない。




買取屋で金を作った俺は、そのままソフィアを診察した医師ゲイルの病院へ向かった。


診察室に入り、本日2度目となるゲイルとの顔合わせ。


ゲイルはうんざりしたような表情になる。


「…またあんたらか。今度は何だ?エリクサーのポーションは安値では売らないぞ?」


「わかってる。金貨100枚だろ?」


「ああ。きっかり金貨100枚。持ってきたら売ってやるよ」


「ほら、これでいいだろ。数えてくれ」


俺は収納していた金貨を100枚、ゲイルの目の前に置いた。


「は…?」


ゲイルの口がぽかんと空いた。



「98…99…100…し、信じられねぇ、本当に100枚ありやがる…」


ゲイルが信じられないと言った口調で言った。


「一体どうやったんだ?一日で稼いだのか?」


「もともと50枚はあったんだが…後の50枚は買取屋で作った金だ」


「50枚を一日で…そりゃ、相当高価なものを手放したな?」


「まぁな」


ゲイルの言葉を肯定しておく。


実際に手放したのは、高級品でも何でもなく、日本の自宅で使っていた普通の日用品だがな。


「まぁ、しかし、約束は約束だ。ちゃんと金を持ってきたなら、ほら、売ってやるよ」


ゲイルが医療バックから虹色のポーションを取り出して、俺たちに渡してきた。


「これを飲めば…ソフィアは直るのか?」


「確実ではない。最初に行ったが確率は5部ってところだ」


「そうか…」


しかし、方法がこれしかないというのなら、ソフィアにこのポーションを飲ませるまでだ。


「ソフィア。ポーションを飲むんだ」


「いいの…ですか…?」


ソフィアがポーションを俺を交互に見る。


「金貨100枚…の、価値が…ソフィアにあるとは…思えません…」


「いいから。飲めって」


「…はい」


ソフィアがうなずき、覚悟を決めたようにポーションの瓶に口をつけた。


喉が上下し、虹色の液体がソフィアの体に流し込まれる。


俺もゲイルも、その様子を固唾を飲んで見守った。


「「…っ!」」


やがて、ソフィアの体に目に見える変化が現れた。


体のあちこちにあったポツポツとした紫色の斑点が一気に消えたのだ。


それと同時に、肌色もどんどん健康的なものに戻っていき、ソフィアの表情もグッと良くなった。


「う、嘘…なおった…?」


信じられないというようにソフィアは自分の体を確かめる。


「治ったのか?」


俺はゲイルに尋ねた。


「ちょ、ちょっと待ってろ」


ゲイルは急いで医療器具を取り出して、ソフィアの身体を確認する。


それから、俺を見て頷いた。


「おめでとう。完治してる」

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