第4話 高校入学④
「なぁ幸太……もうよくないか?」
校内にある文科系の部活はほぼ全て見終わっただろう。
結果的には、これといって得られたものはなかった……。
アニメ研究部、ラジオ部、落語部などとにかく変わった部活動がこの学校には多く存在する。
ざっと一時間半くらい回ったけどよく幸太はこんなに部活を俺に勧めててきたな……。
一体、どういうつもりなんだか。
「まだ最後に一つ残ってるよ」
そういって幸太は階段を上がった。
3階から4階へ。
「もしかしてだけど」
「そう。そのもしかして。佐伯先生が言ってたミステリー研究部にね」
「お前、最後に爆弾を持ってきたな」
そうだった。忘れてた……まぁもう次で最後だし割り切るか。
「爆弾なんて言うなってー」
笑いながら幸太は答える。
廊下を突き当りまで歩くと、ミステリー研究部の部室があるみたいだけれど、一体どんな部員がいるのだろうか……。
そもそも活動しているのだろうか。
色々な不安の要素が多い中、幸太は何も気にしていないようで、ずがずがと教室まで踏み込んでいく。
教室からは明かりが漏れているのでどうやら活動はしているようだ。
「失礼しまーす。 部活動見学に来たのですが……」
教室の中を覗くと、中心を囲うように机が四角く並んでいる。
そしてそこに座っていた男子生徒がこちらに気づくと立ち上がった。恐らくというかほぼ確定で先輩だろう。
だって……デカすぎるだろ……。
「お。 君たちはもしかして新入生かな?」
そう言いながら近づいてくる巨体。しかし、表情は笑顔でいかにも優しい。
身長が高く、いかにも筋肉がついているようなゴツイ体格だ……部活間違えてるだろこれ。
隣の幸太は怖気る様子もなくいつも通りの万人受け(女子)スマイルで対応している。
「そうです! 佐伯先生に紹介されて見学しに来たのですが……」
幸太がそう答えると、一瞬俺の方にも視線を向けたがすぐに幸太に話し返した。
「隣の子も見学かな? とりあえず自己紹介からすると、俺は三年の永井篤人。一応、ミステリー研究部の部長ってわけだ。よろしくな!」
このゴツイ先輩、部長だったのかよ……。
「僕は佐上幸太って言います。それでこっちが浅影透夜です。よろしくお願いします。永井先輩」
「始めまして。浅影です」
一応、軽い会釈を入れて挨拶を済ませると、なぜか永井先輩がじっと俺の方を見ている。
もしかしたら、俺の人殺しの噂が耳に入ってるからかもしれない。
「あのー……」
なんて声を掛ければいいか戸惑っている俺に先輩は笑顔で答えた。
「すまないすまない。浅影君のことは知っていたからな。とりあえず部活動紹介を始めるとするか。そこの席に座ってくれ」
そうだよな……予想通りだった。
「……分かりました」
席に座ると何やら先輩は、冊子のようなものを机の中から取り出した。
「よし! 早速だけど、部活の紹介を始めるぞ。これを見てくれ」
そう言って永井先輩はさっき取り出した冊子をこちらに渡してくれた。
「華桐高校ミステリー研究部……」
意外とシンプルな表紙のタイトルを幸太が読み上げると、永井先輩は話を続けた。
「それは、去年の文化祭で出したミステリー研究部の作品だ。まぁ実際は活動しているかどうかを証明する成果物でもあるんだけどな」
「――なるほどですね」
パラりと読み進めていく幸太と一緒に記事に目を通していく。
「まぁ正直そこに書いてあるのは表向きの内容で一般受けしやすい記事を狙って書いているつもりだ」
華桐高校七不思議、存在しないはずの教室、夕方に現れるな謎の人影、など確かにこの学校に在籍していたら興味を惹かれる内容が書かれている。
「ていうかそれ、俺たちに言っていいんですか?」
俺は純粋な疑問をぶつけると永井先輩は豪快に笑った。
「ダハハハッ! 部活紹介なんだから正直に説明しているだけだぞ?」
……さすがミステリー研究部だ。
正直、俺の偏見で癖がありそうだと思っていたけれど、まさにその通りだった。
幸太は面白そうに笑っているが。
「じゃあ普段は一般受けする内容じゃないことを調査しているってことですか?」
幸太が普段の活動について聞いた。
「そういうことになるな。話が変わるが俺は隠し事が嫌いだ」
永井先輩の唐突な暴露が始まった。
急展開すぎる会話の流れにさすがの幸太も笑顔が引きつっている。
「まっすぐな男って感じですもんね!」
幸太のよく分からない返事にも永井先輩は相変わらず笑っている。
「だからこそ男として話さなければならないな。君たちに。とういか君たちだからこそだな」
「どういうことですか?」
と、幸太が疑問をぶつける。
「先に謝っておくと、君たちには申し訳ないことをした。すまない」
そう言って先輩は頭を下げた。
さっきから続く急な話の展開にもう俺はついていけない。
なんというか、凄いなこの先輩……。
「頭上げてくださいよ!どうしたんですか急に。僕は何かの被害にあった覚えとかないですよ?」
さすがの幸太も先程から動揺を隠しきれていない。
これにはさすがに俺も口を開いた。
「なにかしたんですか?最初に俺たちのこと知ってるって言ってましたけど」
先輩は力強い目線でしっかりと俺の目を捉えた。
「実は、浅影君が高校入学前に起こした事件。その事件について勝手に調査してしまったんだ」
なるほどな……。
これには引きつった笑顔していた幸太もいつになく真剣な顔つきになっている。
「確かに一般受けする記事ではないですね」
「そうだな……何度も言うが申し訳ない。すまない」
「僕はまぁあれとして……。調査したなら分かってると思うんですけど透夜について興味半分で触れたらなちょっと話が変わってくるかなと」
こういう時の幸太は怖い。
俺にもどうにもできないからな。まぁありがたくはあるんだけれど。
「どこまで知ってるんですか。この事件のこと」
幸太が声色をワントーン落として問い詰める。
――そうして永井先輩は若干、ばつが悪そうに口を開いた。
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