謎の埋蔵金
青海月
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俺は兄貴と共に、徳川埋蔵金が眠っていると言い伝えられている山にやって来た。目的は勿論、埋蔵金をゲットすることだ。
埋蔵金の在り処とされるポイントまで来ると、近くに古い山小屋が建っていた。
「そういや、この辺りは特殊詐欺グループのアジトもあるらしいぜ。まさかあの山小屋……」
「ははっ、まさか。特殊詐欺グループなら、こんな電波の届かない所に拠点は置かないよ」
「だよな、あはは……」
俺は一抹の不安を覚えたが、兄貴は冷静さを保っている。そのメンタルの強さ、羨ましいぜ。
「折角だし立ち寄ってみるか? 何か手掛かりが有るかもしれないぞ」
「お、おう。兄貴がそう言うなら……」
俺は少しビビりながらも、兄貴の後に続いた。
◇
山小屋の中は薄暗く、ひんやりしている。兄貴が照明を点けると、人の気配や生活感の無い大部屋が見えた。
「特に何も無さそ――ん? 何だこれ?」
中央のテーブルにメモが置いてあった。
『二人組の嫌な奴が企てている悪い事』
「どうやら何かの暗号みたいだね」
兄貴にメモを奪い取られてしまった。
「おっ、裏にも何か書いてあるぞ」
『扉は〈ふ〉にある』
一体何だこれは。俺にはさっぱり意味が分からない。
「もしかしたらこれは、秘密の部屋の入口とその鍵を指しているのかも……」
「まさか、解くのか?」
「折角だしやってみようぜ」
「お、おう……」
兄貴がなんだか楽しそうなので、俺は断ることが出来なかった。こうなってしまった兄貴は、誰にも止められないんだ……。
◇
他にも何か手掛かりっぽいものは無いか、俺は山小屋の中を片っ端から見て回った。だが残念なことに、何も見付けられなかった。
外に出て山小屋の周りを捜索していた兄貴も、手ぶらで戻ってきた。
「何も無かったよ」
「こっちもだ……」
少し身体が冷えてきた俺は暖を取ろうと思い、備え付けの薪ストーブに触れた。すると――。
「なぁ兄貴、中に何かあるぞ」
「何だって?!」
すぐに兄貴も寄って来て、一緒に確認する。
「これは、ダイヤル……?」
「どうやら隠し金庫の扉みたいだね」
そのダイヤルの下には『5桁の暗証番号』と書かれた付箋が貼ってある。
「そうか、分かったぞ!」
急に兄貴が大声を上げた。
「何だよ?」
「これだよ!」
そう言って見せてきたのは、さっきのメモの裏側。
「〈ふ〉は五十音順で〈ひ〉の次。縦書きの五十音表だと『〈ひ〉の下』になる。だからつまり、これは『扉は〈火の下〉にある』って意味だったんだよ」
兄貴は得意気な顔で薪ストーブの中――今発見した金庫の扉を指差している。
「な、なるほど……!」
「そして表側のこれは、おそらくその『5桁の暗証番号』のことだ」
「ほーん……」
やっぱり兄貴の閃きはすげぇや。
「5桁の数字……嫌な奴……嫌な奴……あっ」
また何か閃いたようだ。俺はさっぱり分からなくて考えるのをやめちまったというのに。
「もしかしたら、こうかもしれない」
そう呟きながら、兄貴は3→7→5→6→4の順番でダイヤルを回した。すると……カチッという音がした。どうやら扉が開いたようだ。
「すげー! でも何で分かったんだよ?」
「『18782(いやなやつ)+18782(いやなやつ)=37564(みなごろし)』という語呂合わせの計算式があるんだよ。これは『嫌な奴が二人で悪い事』、つまり『嫌な奴と嫌な奴で皆殺し』という意味だったんだ。それにしても懐かしいなぁ〜。俺が小学生の頃に流行ったヤツだぜ?」
そういえば俺も聞いたこと有るような無いような……。とにかく、謎が解けてスッキリしたぜ。解いたのは俺じゃないけどな。
◇
金庫の中には、地下に続く梯子があった。それを降りていくと、広い倉庫のような場所に辿り着いた。そしてそこにあったのは――。
「これは……?!」
なんと、丁重に保管されていた現金だった。ざっと数えてみたが、少なくとも一億円はあるみたいだ。
……そっか、こんな所にあったんだな!
「よっしゃー!! 埋蔵金、ゲットだぜ!」
謎の埋蔵金 青海月 @noon_moon
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