謎の埋蔵金

青海月

 俺は兄貴と共に、徳川埋蔵金が眠っていると言い伝えられている山にやって来た。目的は勿論、埋蔵金をゲットすることだ。


 埋蔵金の在り処とされるポイントまで来ると、近くに古い山小屋が建っていた。


「そういや、この辺りは特殊詐欺グループのアジトもあるらしいぜ。まさかあの山小屋……」


「ははっ、まさか。特殊詐欺グループなら、こんな電波の届かない所に拠点は置かないよ」


「だよな、あはは……」


 俺は一抹の不安を覚えたが、兄貴は冷静さを保っている。そのメンタルの強さ、羨ましいぜ。


「折角だし立ち寄ってみるか? 何か手掛かりが有るかもしれないぞ」


「お、おう。兄貴がそう言うなら……」


 俺は少しビビりながらも、兄貴の後に続いた。



 山小屋の中は薄暗く、ひんやりしている。兄貴が照明を点けると、人の気配や生活感の無い大部屋が見えた。


「特に何も無さそ――ん? 何だこれ?」


 中央のテーブルにメモが置いてあった。


『二人組の嫌な奴が企てている悪い事』


「どうやら何かの暗号みたいだね」


 兄貴にメモを奪い取られてしまった。


「おっ、裏にも何か書いてあるぞ」


『扉は〈ふ〉にある』


 一体何だこれは。俺にはさっぱり意味が分からない。


「もしかしたらこれは、秘密の部屋の入口とその鍵を指しているのかも……」


「まさか、解くのか?」


「折角だしやってみようぜ」


「お、おう……」


 兄貴がなんだか楽しそうなので、俺は断ることが出来なかった。こうなってしまった兄貴は、誰にも止められないんだ……。



 他にも何か手掛かりっぽいものは無いか、俺は山小屋の中を片っ端から見て回った。だが残念なことに、何も見付けられなかった。


 外に出て山小屋の周りを捜索していた兄貴も、手ぶらで戻ってきた。


「何も無かったよ」


「こっちもだ……」


 少し身体が冷えてきた俺は暖を取ろうと思い、備え付けの薪ストーブに触れた。すると――。


「なぁ兄貴、中に何かあるぞ」


「何だって?!」


 すぐに兄貴も寄って来て、一緒に確認する。


「これは、ダイヤル……?」


「どうやら隠し金庫の扉みたいだね」


 そのダイヤルの下には『5桁の暗証番号』と書かれた付箋が貼ってある。


「そうか、分かったぞ!」


 急に兄貴が大声を上げた。


「何だよ?」


「これだよ!」


 そう言って見せてきたのは、さっきのメモの裏側。


「〈ふ〉は五十音順で〈ひ〉の次。縦書きの五十音表だと『〈ひ〉の下』になる。だからつまり、これは『扉は〈火の下〉にある』って意味だったんだよ」


 兄貴は得意気な顔で薪ストーブの中――今発見した金庫の扉を指差している。


「な、なるほど……!」


「そして表側のこれは、おそらくその『5桁の暗証番号』のことだ」


「ほーん……」


 やっぱり兄貴の閃きはすげぇや。


「5桁の数字……嫌な奴……嫌な奴……あっ」


 また何か閃いたようだ。俺はさっぱり分からなくて考えるのをやめちまったというのに。


「もしかしたら、こうかもしれない」


 そう呟きながら、兄貴は3→7→5→6→4の順番でダイヤルを回した。すると……カチッという音がした。どうやら扉が開いたようだ。


「すげー! でも何で分かったんだよ?」


「『18782(いやなやつ)+18782(いやなやつ)=37564(みなごろし)』という語呂合わせの計算式があるんだよ。これは『嫌な奴が二人で悪い事』、つまり『嫌な奴と嫌な奴で皆殺し』という意味だったんだ。それにしても懐かしいなぁ〜。俺が小学生の頃に流行ったヤツだぜ?」


 そういえば俺も聞いたこと有るような無いような……。とにかく、謎が解けてスッキリしたぜ。解いたのは俺じゃないけどな。



 金庫の中には、地下に続く梯子があった。それを降りていくと、広い倉庫のような場所に辿り着いた。そしてそこにあったのは――。


「これは……?!」


 なんと、丁重に保管されていた現金だった。ざっと数えてみたが、少なくとも一億円はあるみたいだ。


 ……そっか、こんな所にあったんだな!


「よっしゃー!! 埋蔵金、ゲットだぜ!」

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