夜トイレ行くのめっちゃ怖い

ケーエス

目が覚めたら最期

真夜中、目が覚めた。


外は真っ暗。当然家の中も真っ暗。

何の音も聞こえない。


そして――。


困ったことにボクは今猛烈な尿意に襲われている。

ああ、今すぐ眠ってしまいたいのに。

今すぐこの不気味な夜から逃れたいのに。

一刻も早く――。


だがボクの膀胱がそれを許してはくれなかった。

残念だが、行かなくてはならない。

恐怖の旅路に。


ボクはゆっくりと起き上がり、ベッドから降りた。

ボクは整理整頓が下手だから、部屋の中は散らかりっぱなしだ。

おそらくこれからもずっと変わらないんだろうな。


そうだ、物音を立てないようにしないと。

ボクもそうだけど両親はどちらもちょっと音に敏感な

ところがあるんだよな……。


もし、起こしなんかしたらただではおかないだろう。

二重の恐怖に脅かされるなんてイヤだ。


忍び足で転がる紙屑地帯を踏み分け、ドアノブに手を

かけ、ゆっくりと開いていく。


目の前に廊下が続いている。窓から月明かりが差し込んでいる

せいで余計に不気味に感じる。階段にたどり着くためには

この廊下をもうちょっと進まなければならない。


その間には両親が寝ている部屋のドアがある。

ゆっくりゆっくり進んで行く。


ドン!


物音がしてボクは固まった。

なんだ? なんだ?


ドン!


なんだ、親の部屋から聞こえるだけじゃないか。

親のどちらかが寝がえりしてどこかに足でもぶつけたのだろう。

は~まぎらわしい。


ボクは再び廊下を進み始めた。


さて、階段だ。廊下は窓があったから光が絶妙に入っていたが、

階段は漆黒の闇と化している。


階段こそ物音が出てしまいがちだ。これよりまでも細心の

注意を払って進もう。


ガタンガタン!


危うく転げ落ちそうになり、手すりをつかんだ。

危ない、本当に危ない。


耳をすますと風の音が聞こえる。なんだ風か。

やめてほしい。そんなことをするのは。

まあ自然現象だから仕方ないんだけど。


気を取り直して進もう。トイレまではあともう少しだ。


1階にたどり着けばすぐにトイレだ。ドアに駆け寄りするりと

トイレに入った。


至福のひととき。


しばらくしてドアを見つめる。任務は達成した。しかし、

元の場所に戻らなくてはならない。


ああ、行きたくない。またあの恐怖にさらされなければ

ならないのか――。


その時、強い閃光が世界を覆った。 直後、甚大な爆音と

共に家が激しく震えた。


とんでもない衝撃、最も今来てほしくないもの、雷が落ちたのだ。

今まで音を出さないようにしてきたのに――。


恐怖におののきながらも怒りが収まらない。それと同時に

気付いたこともある。


もしかして親が起きるんじゃない?


親が起きると困るんだ。やっかいなことになる――。


暗い廊下を進む恐怖よりも、雷が落ちる、親が出てくる

恐怖の方が今は勝っている。

イチかバチかでカイダンを駆け上がる。


階段を登り切り、右へ曲がると、

「キャアアアアアア!」

叫び声がした。間に合わなかった。

雷の音に気づき、起きてしまったらしい母親が

ボクを見て卒倒したのだ。


「どうした?」

父親がやってきてボクの顔を見て驚いた。

「……マサノリ?」

すかさずボクは階段を降りて行った。


「待ちなさい!」

父親が後ろを追ってくる。


もう元の場所には戻れないみたいだ。

そりゃそうだよね。



ボクはとっくの昔に死んでいるのだから。

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夜トイレ行くのめっちゃ怖い ケーエス @ks_bazz

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