義妹に『醜悪な野獣』と言われる『辺境伯様』への嫁入りを押し付けられました。真実の姿を知ってから代わってくれと言われても、もう遅いです！

【義妹ＳＩＤＥ】義妹と義母、呪いをかけられ豚人になる

「なんだ？　何の用だ、人間が私の家に」

　ガーベラとローズの目の前に現れたのは帽子と杖を持った美しい顔立ちの少女であった。いかにも魔女といった風貌の少女ではあったが、ガーベラとローズを見る目が冷たかった。

　確かに彼女達は不審者なのではあるが、それ以前の問題である。まるで石の裏のゾウリムシを見るかのような。その程度の目なのである。

「あ、あなたが魔女様ですのね！」

　ガーベラは自らの危険を理解できずに目を輝かせていた。

「いかにも……私が魔女だが」

「私はガーベラと申しますの。カーディガン家の令嬢ですのよ」

「……ふん。それで。私に何か用か？」

　当然のように興味がない魔女であった。表情は全く変わらない。ただただ面倒臭そうである。

「あなたにお願いがあるんですの！」

「お願い？」

「ええ！　辺境伯様！　ウィリアム様を私の虜にしたいんですの！　褒美なら差し上げますわ！　どうか、ウィリアム様を私の虜にしてくださいまし！　あなた様は色々な呪いの魔法をかけられるんでしょう！」

「母からもお願い申し上げますわ！　魔女様！　何卒！」

　母子が魔女に身勝手な願いを頼み込んできている。

「訊くが、ウィリアムは醜い野獣のような恰好をしていなかったのか？　お前達がそう聞いてくるという事はまともな人間のような姿に戻ったのだろう？　それともあれか？　ウィリアムは醜い野獣のような恰好でお前は熱愛を望んだが、袖にされた口か？」

　魔女が聞いてくる。

「い、いえ！　違いますわ！　ウィリアム様はとても素敵な殿方でした！　それがなぜかシャーロットとかいう使用人以下の女と相思相愛な様子で、私！　とても憎らしかったんですの！」

「……ふむ。そうか。そういう事か。やはり私のかけた呪いの魔法は解けた様子だな。そのシャーロットという女が呪いを解いたというわけか」

　魔女は一人納得していた。

「そういうわけで魔女様！　そのシャーロットとウィリアム様の仲を引き裂いて、その上で私に心が行くように！　上手い事呪いをかけて欲しいんですの！」

「前者に関しては言われずともするつもりだ。後者に関しては聞く耳持たない」

「な、なんですって！？　どうしてですの！　お礼ならしますわよ！」

「貴様達、人間のする礼など欲しくもない。それに貴様は気に入らぬ事を言った。ウィリアムを虜にしろだと？　ふざけるな！　ウィリアムは私のものだ！」

　魔女は憤っていた。

「な、なんですって！　そんな！」

「人の家の敷地に勝手に忍び込みおって！　人間が！」

　魔女は呪いの魔法を二人にかける。

「貴様達のような浅ましい人間、相応の姿になるがよい！」

「え！？　い、一体なにを！」

「な、何をするつもりですの！　魔女様！」

「くらうがいい！」

　魔女は二人に呪いの魔法をかけた。

「い、いやぁ！」

「や、やめて！　殺さないで！」

　二人は痛みや死を恐れた。しかし、何もやってこないではないか。

「ふう……なんですの。お、お母様！　なんですの！　その醜い豚のような顔は！」

「ガーベラ！　あなた！　ガーベラなの！　なんなの！　その豚のような顔は！」

「ふっ。貴様達の醜い心を映し出したかのような見た目だ」

「や、やめてくださいませ！　の、呪いをかけたのですわね！　と、解いてくださいませ！」

「解いて欲しくば奴隷のように私に仕えろ。豚女」

「くっ、ううっ！　な、なぜですの！　なぜこんな事に。ううっ！」

　豚人になったガーベラは涙を流す。

「ふっふっふっふっふ！　あっはっはっはっはっはっはっはっはっは！　待っていろ！　ウィリアムとそのシャーロットという女、必ずやお前達の仲を引き裂き、ウィリアムに再び呪いをかけてやる。その末に今度こそあいつの心を屈服させてやろう！

！」

魔女は笑う。こうして醜い豚人となったガーベラとローズは魔女の使い魔となったのであった。