とろっとろチョコレートうぉーず
kirinboshi
第1話 さえない彼女と私の話
夏木タカ子は「意識タカ子」としてクラス中から揶揄されている。
故に、友人は少ない。
少ない、というか一人しかいない。
それは、クラスで「ぼた餅」とあだ名されている最底辺女子「栗栖ぼたん」だ。
栗栖ぼたんはとにかくダサく、どんくさい。
太っているし、極厚レンズのメガネをかけているさえない女子だ。
自分に自信が無さすぎるところは友人である、タカ子でさえイラつかせる。
そんな二人も高校生活三年目を終えようとしている。
季節は冬。二月を迎えようとしている。
共学の高校としては華やぐイベントであるバレンタインデーが近い。
夏木タカ子、そして栗栖ぼたん、共にそのイベントはスルーしてきた。
しかし、いよいよ二月に差し掛かるところ、栗栖ぼたんは友人に衝撃の一言を告げた。
「あの、ね。タカ子。私、一段屋くんにチョコ渡そうと思ってるの」
タカ子はそれを聞くと「ハア?」と自分の耳を疑った。
「一段屋タカシ」。
それは、顔が少しイイだけの中身のないスッカスカ男である。
少なくとも夏木タカ子はそう認識していた。
タカ子は柔道黒帯の有段者である。
一段屋タカシは同じく柔道場に通う幼なじみでもあるが、タカ子は彼の人間性はクズだと認定していた。
「やめときなよ、どういうこと?」
クールビューティーなつり目のタカ子がそう凄むと結構な迫力がある。
栗栖ぼたんは友人の威圧的な視線に負けず、拳を握り締めた。
「なんか、わかんないけど、衝動なんだもん!タカ子ちゃんに分かってもらえなくても、
私は渡す!」
そう宣言するぼたんにタカ子はため息をつく。
恋は理屈じゃない。
そんな陳腐な言葉が脳裏をかすめるのを嫌がるように、タカ子は長い髪をかき上げた。
「好きにすればいいじゃない」
タカ子がそう言うとぼたんはふくふくとした顔を膨らませて笑った。
「じゃあ、今から私の家で作るから来てよね!」
なんでそうなる?とタカ子はぼたんをにらみ返した。ぼたんはそんなにらみにも負けず相変わらずニコニコしている。
ぼたんが「ぼた餅」といじめられているのはこいつの性格にもあるんじゃないか……?とタカ子は思ってしまった。
ただ、タカ子がついてくることを信じている背中だけは裏切れなかった。
私も、ぼたんしか友達いないし……。
友達なんていらない、と学生生活で言い切れるほど、タカ子も強くなかった。
なんだか勇ましくみえるぼたんの背中を追いかけるタカ子だった。
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