ホラー

影神

泣いても救われない。



『私は日々、ストーカーに悩まされている。』






事の発端は、"YouTube"だった。






会社にリストラされ、手に職を持たないまま、




幾等か過ぎ、ふざけ半分で日頃のたわいもない生活を




動画にしたところ、コアなファンがいくらか付いた。






スパチャと呼ばれる投げ銭に喜びを感じながら、




僅かながらに利益も出始めた所、




コメント欄に不可解な文章が載り始めた。






(この間□□□駅前でタピってた。)






気のせいだと思った。




自分の事を言っている等と考えもしなかった。






オススメのスキンケアと称し、




動画を上げて間も無く、




次は、






(□□の□□□ストアで買った奴だね。)






と、コメントが来ていた。






少しずつ疑っていたものが、その日から確信に変わった。






友達とは疎遠になって居た為、相談出来る相手等は居なく、




親には恥ずかしくて言えるはずも無かった。






私はしばらく動画の投稿を辞めた。






コメント主をブロックして、コメントを削除した。




その時には既に外に出るのが嫌になり、なるべく外出を避けた。






それから2、3ヵ月経った頃、自分の気持ちに落ち着きが戻り、




精神的にも余裕が出来、仕方ない事だと割り切った。






心配してくれたコアなファンにも申し訳なく思い、




YouTubeを再開する事にした。






最近、近所に有名なサンドイッチ屋さんの




チェーン店がオープンした為、それを食べる事にした。






沢山入っている生クリームは鬱陶しくなく、




甘酸っぱい果物は生クリームを中和させ、




軽く食べられる程、見事なフルーツサンドだった。






一応、外出する際に自らの後方にカメラを設置し、




外出をすることにした。






出先では特に変わった事は無かった。






変な人も居なかったが、誰がその人かわからない為、




人混みが怖くなって居た事に初めて気が付いた。






「まだ、駄目だったんだな。」




そう、感じた。






でも、知らない人にビビってても仕方ない。




心を強く持ち、気持ちを切り替えた。






帰って、一通り食べながら、不安と共に流し込み、




撮影した動画を編集し、アップロードした。






コメント欄には心配をしてくれるファンが多く、




休日とあってか、再生数もそこそこあった。






コメント欄を見回すも、特には変な人は居なかった。






自分の居場所にまた戻れた事に肩の力が抜け、




ふと安心し、涙した。






「良かった、、」






一安心した所で、恐れながら後方を録画した動画を見回した。




人が沢山居た。




カメラを見る人が何人か居て、自分が見られてるかのようで、




フルーツサンドが胃から逆流しそうになった。






「この人達は私を見てる訳ではなく、




目線の先を見ているだけだ、、大丈夫。」






自分に言い聞かせ、動画を回す。






クレープ屋さんには列が出来ていて、




後少しで自分の番が来る所だった。






「フゥー、フゥ、」






一瞬、変な音がは入った。




「ん?」






タイミング良く冷蔵庫に飲み物を取りに行っていた為、




私は定位置に戻り、動画を見返した。






それはちょうど私が注文している際だった。






「△△△△サンドイッチと、、」






男性が私の直ぐ後ろに居た。






一瞬ビックリした。




「カメラの位置からして、近過ぎて見えるだけだ、、」






動画は回る。






「フゥー、フゥ、フゥ、」






「花粉症だろうか、、」




確かに、今日も花粉が凄かった。






だが、次の瞬間、私は発狂した。






「□□□□□ちゃん、、」






「キャーーーーー!!!」






持っていたコップをカメラに向けて投げていた。






コップは壁にぶつかり割れ、液体は飛び散った。






私は縮こまる様に小さくなった。




怖くてその場から動けなくなった。






ピンポーン、、






「すいません、、隣の者ですが、、




何かありましたか、、?」






私は起き上がらない脚を引きずる様に、




玄関へと這って行った。






"きっと誰かに助けを求めて居たのかもしれない。"






ガチャン、






鍵を開けると、女性が立っていた。






近所付き合いがあった訳でも無かったが、




思わず足にすがり付いてしまった。






「、、た、た、す、けて、、」






震えて、声すら出ない。






隣人「大丈夫!!?」






驚いた表情で、




抱き締めてくれた彼女の肩で、




どうしようもなく、






泣き崩れた。






私がようやく落ち着いた頃には日が暮れていた。






彼女は家へと招いてくれた。




私は彼女に経緯と、状況を話した。






彼女は落ち着いた様子で聞いてくれた。






彼女「怖かったね、、






ごめんね?気付いてあげられなくて、、」






その言葉に涙がまたこぼれ出した。






彼女「とりあえずこのまま居ても仕方ないし、




警察に行きましょう?」






私にはそんな考えは無かった。




"そうゆう思考には至らなかったのだ。"






彼女は私と一緒に近くの警察署まで行ってくれた。




私のパソコンと、カメラを持って。






彼女「すいません、」




警察官「はい。どうなされましたか。」






警察官は淡々と、いかにも業務的に対応した。






私は奥の部屋へと、通され、




彼女はロビーで待っていてくれた。






彼女「私に言った様に、ゆっくりと話せば大丈夫よ?」






彼女は何で私にこんなに優しくしてくれるのだろうか、、




本当に感謝しかなかった。






警察官「えーと。私が担当課の□□です。




先程軽く、一緒に居られた方に、




ある程度の話は伺ったのですが、




もう一度詳しく説明して頂けますか?」






私は震えながらも事の経緯と問題の動画を提示した。




警察官「パソコンと動画をお借りしても宜しいですか?」




私「はい、、」






他の警察官が動画を確認し、パソコンを開く。






しばらくの間、自分の恐怖が再生される。






いくらか経った後、警察官が口を開く。




警察官「まず、お気持ちを御察し致します。




辛く、怖かったでしょうね?






失礼ですが、近くにお友達や御家族と言った、




頼れる方はいらっしゃいますか?」




私「友達とは疎遠で、家族は県外です、、」




警察官「そうですか、、」




警察官はアイコンタクトを交わし、作業を終える。






暫し、沈黙が続いた。






すると、警察官からは重い言葉が発せられた。






警察官「コメントの文章を消してしまわれた様ですが、




次回からは消されない様に、写真等で撮って下さい。






それと、外出先での動画ですが、、




こちらは証拠としては不充分です。






これは、盗撮に該当する恐れがあります。






動画を上げる以上はどうしても、




プライベートを自ら公表する事になってしまわれる為、




特定されると言う問題は避けられないかと思います。






これらの情報だけでは我々警察が動く事は出来ません。






民事不介入なので事が起こった後の対応となります。






もし、知り合いの方に"探偵の方"が居られましたら、




探偵を雇って頂いた方が言いかと思われます。






家は特定されて居ない様ですが、念の為、




付近の巡回をこちらの方で警戒して行いますが、




動画を上げない方が言いかと思われます。






それと、ブロックしたり、被害を公表したり等は、




ストーカーの気持ちをさかなでたり、




更にケースを悪化させる場合もありますので、




危険ですので、あまりオススメはしません。




怖いと思いますが、証拠として、残して下さい。






何か近況がありましたらまたこちらにお越し下さい。」






そう言われた。




正直、絶望した。




警察官は民事不介入の為、守ってはくれなかった。






空っぽになりながら、私は警察署を後にした。






車の中で彼女は親身に訴えかけてくれた。




「気軽に、私の所に来てね?






あまり考え過ぎないように。






外出する時は私を誘って?




なるべく1人で居ない様に、






動画は少し辞めた方がいいかもね。




考えちゃうだろうからさ。」






私はそこに居る様で居なかった。




彼女の声が私に発せられるも、届く事はなかった。






それから私は何も出来なくなった。




貯金は底を付き、ただ引きこもる生活が続いた。






彼女は私と生活する事を提案してくれた。






私は情けなく、どうしようもなく、






心底、自分が嫌になった。






ピンポーン、、






彼女だろうか、、




私は玄関を開ける。




「はーい、、」






すると、そこには見慣れない人が居た。






「□□□□□ちゃん。




どうしたの?






また動画上げてよ




ほらー、、」




































































※上記の団体や、公共機関等は実在するものとは異なります。




この物語は完全なるフェイクです。






ですが、日々ストーカーに合われ、




心から苦しんで居る方々は実際に居られます。






『リアルです。




亡くなってしまわれた方も居られます。』






私は1日でも早く問題が解決するように、




心から願っています。






そして、






"最悪の場合"









起こらない事を希望します。






やっていい事と悪い事の区別をきちんと理解し、




情報を発信すると言う事のデメリットを充分理解し、




楽しく、安全に、迷惑をかけない様に、時代のツールを




上手に使って日々を過ごして下さいませ。


















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