死を呼ぶ風船事件
アほリ
死を呼ぶ風船事件
ファン!!ファン!!ファン!!ファン!!ファン!!ファン!!ファン!!ファン!!
「順子!順子!順子!順子!嫌ぁぁぁぁーーーーー!!」
雑木林に、女の子の惨殺死体が発見されていた。
「親御さん、この度ご悲愁様です。」
女の子の亡骸に縋る母親に、捜査にあたる吉本警部が声をかけた。
「お願いします!!早く犯人を逮捕してください!!」
「はい!このところ、この辺でこのような惨殺事件がおきておりまして・・・私達警察はいち早い事件解決に全力をあげて捜査しますから!!」
「警部!!少女の襲われたと思われる雑木林の側に、風船の破片が見つかりました!!」
現場捜査に当たった警官が、割れた大きめな青いゴム風船の破片がを吉本警部のもとに持ってきた。
「また風船の破片か!!鑑識にまわせ!!」
「はいっ!!」
「また遺体の側に割れた風船の破片か・・・何でまた・・・?!」
・・・・・・
「鑑識の結果が出ました。あの雑木林での連続殺人事件に必ず落ちていた風船の破片から、人間ではない獣の唾液が付着していたというこのです。」
「なに?!」
部下の報告に、吉本警部はビックリした。
「それに、前に起きた事件との関連があるかと思うのですが・・・」
と、部長に吉本警部に見せた資料には、数ヶ月前にイノシシが人里に表れてバルーンショップに突入して荒らして風船を大量に奪い取ったという記録が当時の新聞の切り抜きと共に記されていた。
その隣に、ハンターがその雑木林に出没したクマに襲われそうになって爪を銃でへし折って難を逃れた事の記録もあった。
「まさか・・・やはり関連が?その隣の事件も・・・?!
捜査が必要だ。」
吉本警部が捜査に出かけようとすると、警察署の入り口に男が雑種の犬と共に屯していた。
「またお前か。今度は何の用か?」
「この難事件、僕ら義則&名犬ケンが解決しますよ。」
「また邪魔しに来たのか?」
「邪魔とか滅相もないっ!!僕らは泣く子も黙る、ゆーちゅーばー探偵だよ?!
この前の通学路の赤い風船事件、知ってる?
犯人は何と化け猫の霊で!!
それがね!!ゆーちゅーぶ1000万ビューもバズっちゃってね!!
・・・ってあれ?
警部が行っちゃったじゃん!!」
・・・・・・
「ケン!これがこの雑木林で拾ったブツだ。割れた風船の破片だ。
よく嗅げよ。」
義則は、配信録画の為にスマホを雑種のケンに掲げて実況した。
くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか。
「わんっ!!わんっ!!」
「よし。割れた風船にこびりついた匂いをよく覚えたか。
ゴー!ケン!」
雑種のケンは、栗色に光る自慢の鼻を地面や草木に付き出してクンカクンカと匂いを嗅いで、風船にこびりついた謎の連続殺害犯の在りかを探った。
「さて!!この雑木林で起きた連続殺人事件!!
遺留品はこの犠牲者の側に必ずあった、割れた風船の破片!!
風船の破片には必ず犯人の涎!体臭!が付いてるもの!!
その涎が犯人逮捕の決め手になるのは確実!!
今、我らが名犬ケンがその風船の破片の匂いを追跡して果たして、憎き凶悪犯へと探して当てるでしょうか!!?」
・・・うっせぇなご主人様・・・!!
・・・匂いを探ってるのに集中させろよ・・・!!
スマホで雑種のケンを撮しながら実況するゆーちゅーばー探偵義則を、鼻は地面に付き出して匂いを嗅ぎながら、怪訝な目で睨み付けてた。
くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、くんか、
ざっざざーーーっ!!
「ぐわぁぉおおおおおーーーーーーーー!!」
「・・・!!く、クマぁぁぁぁーーーーー!!!!」
突然草葉の影から、狂暴そうなツキノワグマが飛び出してた。
「ひぃぃぃぃぃぃーーーーーー!!」
義則は思わず腰を抜かした。
「ケン!!出せ!!繰り出すんだ!!」
・・・な、何を・・・!!
「だ、だから!!犬なんだから!!あれ!!ぜ・・・ぜつ・・・絶●狼●抜●牙!!」
「出来るかボケェ!!俺はフツーの犬だ!!」
雑種のケンも脚がガクガクと震えて怯えていた。
「ぐわぉーーーーーーー!!」
うわぁ!!ケン!!
突然、ツキノワグマの爪がケンの喉笛目掛けて飛んできた。
「きゃぃーーーーーん!!」
しゅっ!!
「えっ?!空振り?」
そのツキノワグマの爪が無かったのだ。
「何だこのクマ!爪が外れてたのかよ?!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
「イノシシぃぃぃぃぃーーーーー!!」
今度は、向こうの方から巨大なイノシシが猛進してきた。
「ひぃぃぃーーーー!!」
間一髪、義則は巨大イノシシの鋭い牙に掛かって撥ね飛ばされる寸前に翻った。
ひゅん!!
「しまった!!」
片手に持っていた命より大事なスマホが宙に舞った。
「うわわーーーー!!あれがブッ壊れたら!!ゆーちゅーばー稼業もおしまいだーーー!!」
必死に弧を描いて墜ちていくスマホを受け止めようとする、義則。
Uターンしてまた義則に向かって猛スピードで突進する巨大イノシシ。
そして、牙を剥いて食いつこうとするツキノワグマ。
そして、身を奮い立てて危機一髪のご主人様を助けようと走ってきた、雑種のケン。
4体が今ぶつかろうとしたその時・・・
ダーーーーーーーーン!!
ダーーーーーーーーン!!
ダーーーーーーーーン!!ダーーーーーーーーン!!
あっという間の出来事だった。
スマホを握りしめていた義則の目の前には、心配そうにペロペロペロペロと義則を顔を舐めている雑種のケンの姿があった。
ファンファンファンファンファンファンファンファンファンファンファンファン!!
パトカーのサイレンの音。
側に並べられた、ツキノワグマとイノシシの亡骸に鑑識が取り調べているのが見えた。
・・・僕、助かったんだ・・・。
「君、お手柄だよ。この雑木林での連続殺人犯の犯人・・・いや犯獣は、このクマとイノシシだったんだ。」
吉本警部が、義則の頭を撫でてこう告げた。
「そして、この人達も要請してね。」
雑種のケンは、猟犬とおぼしきポインター犬と挨拶してじゃれあってるのを見詰めていた。
「よしよし、ポチ。有名犬のケンと仲良しになったか。」
そこには、猟銃を掲げた猟友会の人々の姿があった。
「君が有名なゆーちゅーばー探偵義則さんですね。」
「そ、そうですが。」
「君の動画。ゆーちゅーぶで見せて貰ってるから。」
まだ、義則の脚はガクガクと震えていた。
・・・・・・
「この連続風船殺人事件の犯人のクマの爪無し(仮名以下略)容疑者とイノシシの空気デブ(仮名以下略)容疑者一件、
ハンターに射殺されたクマの爪無し容疑者の牙には、割れた風船の吹き口が挟まっており、以前に爪がハンターの格闘で欠けてしまい人を攻撃出来ないのをカバーする為に、大きめなゴム風船を膨らませて破裂させて気絶させた好きに人間を襲ったとみられ、
このイノシシの空気デブ容疑者は、このクマの爪無し容疑者のパシリとして風船の調達に人里に降りてバルーンショップを襲撃したと思われ、
その証拠に、このイノシシの空気デブ容疑者よく使うヌタ場の側に大量の膨らませてない風船が隠してあり、
この雑木林に隣接する山林は、以前からメガソーラー発電の為に乱開発が問題となっており、クマの爪無し容疑者とイノシシの空気デブ容疑者はそんな理不尽は人間達への復讐の為に、この凶悪犯罪に及んだと。
それが、僕の推理です。」
と、動画の最後に義則が述べて締めくくった、連続風船殺人事件の生々しいクマとイノシシとの格闘場面と相まって、ゆーちゅーぶで今までの何倍の10億ビューの観覧記録を更新したとか。
~死を呼ぶ風船事件~
~fin ~
死を呼ぶ風船事件 アほリ @ahori1970
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます