とある私のホラー体験

ラズベリーパイ

第1話

 ホラー体験。

 平和な日常でちょっとスリルを味わいたい、と思うのは、まれによくある事である。

 暇を持て余した私がそういった考えに至るのは、ある意味当然であったかもしれない。


 その一方で、ホラーは私は苦手だった。

 でもちょっと怖い話はつい見てしまう。

 この相反する感情に押し流されながら、私は真剣にちょっとしたホラーについて、考えてみる。


 ネット等で検索してみても中々好みのホラーについてたどりつけない。

 あと少し、違う。

 物語等によって体験できる疑似的ホラー体験。


 それが私好みの形の物が見当たらない。

 これほど沢山の物語があるのだろうからどこかにそういった物はあるかもしれない。

 けれどそれに辿り着けるのは、どれほどの確率なんだろう?


 しばらく探していた私は、販売されている人気の作品を幾つか見て、何か違う、という結論に達した。

 自分が多数派に迎合できず、流行に波乗り出来ない悲しさに打ち振るえるしかない。

 商業作品という、安易で安価でネット検索できる代物の中には私が見たいものは無かったのである。


 楽して読みたかったし見たかった。

 通常の学校教育で、読書感想文などが書かされるが、特に興味のない本について読まされて、感想を書かされるあの苦痛によって私は知っていた。

 よく読んだことのある小説関連の所に見られる新人賞の応募…そこには数百枚という原稿用紙が必要という狂気が描かれていた。


 あの読書感想文×幾つだ…。

 気の遠くなるような気持になりながらも、自分好みの話を読めるかもしれないという期待はある。

 それこそツイッターに文章を流すように少し書いていてもいいかもしれないが…。


 ネットに流す、という行為に対して私は自分の文章が公表される、その行為自体がまだ勇気がない。

 だからこっそりノートにまずは書いてみてそれからにしようと思って書き始める。

 ……上手くいかない。


 これは私の見たいもの、読みたいものではない。

 かりかりかり。

 やはりこれも違う。


 かりかりかり。

 そういえば人気のテーマがあったな、あれをかいてみよう。

 でもそのままだと盗作になるので、そこを気を付けて……。


 かりかりかり。

 そう言えばこういうの好きだった。

 でもこういうのも好きなんだよね、入れてしまおう。

  

 かりかりかり。

 それでここはこういった話はどうだろう?

 こういった話好きなんだよね。


 かりかりかり。

 これ、読書感想文書くより面白い。

 人に見せたりはしたくないけれど、結構面白く書けた気がする。

 その内こっそり小説投稿サイトに投稿してみようか?


 そんな気持ちになることがあった。

 しかしこのこっそり書いたノートは、誰にも見せたくない気持ちもある。

 やっぱりなんだか恥ずかしいという気持ちがあるのだ。


 だからベッドの下にそのノートに隠していたりするのだが。

 そういえば最近部屋の掃除をしていなかったので掃除をしようと思った学校から帰ってきたある日。

 きれいに部屋が掃除がされていた。


 そして机の上には、私のこっそり書いていたノートが置かれていた。

 その瞬間、私はシュレディンガーの猫的な何かを感じた。

 おそらくは親に聞けばその情報は確定する。

 

 つまり、私の、こっそり書いていた、創作ノートが…。 

 ホラー体験はしてみたいが、こんなホラー体験はしたくなかった。まる。

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