Chapter2.奇妙な依頼
「だーかーら!俺は依頼者なの!だから早く冒険者を紹介しろって!」
GM:さて、レプラカーンの少年はマゴラに促されて事務手続きをしています。しかしまだ若いというか見たまま子供なので、文字の読み書きはできても契約する際の手順などがよくわからず騒いでます。大人の対応が求められます…!
レド:では受付のテーブルの上にピョンと乗って「まあまあ落ち着けよ少年」と諌めますかね。
少年(GM):「ああ!?なんだよお前…ちっちぇな…」
レド:「おっ、タビットを見るのは初めてか?そうだ、ちっちゃいんだ」
ルカカフィーネ:レプラカーンよりちっちゃいからね。
GM:少年は、あーん?となりますが…。レドがちっちゃいながらも…筋力ボーナス3あるし…。年季の入った大きな剣を提げていたりするのを見て(こいつ、つええ!)ってなります。
ナージェンカ:かわいいね。
レド:よし、グレートソード級のオーラをまざまざと見せつけつつ。「どんな場所にもルールがある。郷に入っては郷に従えというだろ」
ヴォックス:「そーゆーこと」
レド:「お前も男としてそういうルールは守れるはずだよな?」
少年(GM):「あっ、あったりめーだろ!俺を誰だと思ってんだよ!」
レド:誰なんだろう…。
GM:はい、ここで誰だかわかんない彼の素性が明らかになります。
GM:彼の名前はバイナル・イラド。えー、公式サプリ「鉄道の都キングスフォール」p.31に記載されている公式NPCバーモット・イラドさん、の息子です。
レド:バーモットさん美人だ…。
GM:(共有メモに記入しながら読み上げる)バイナル・イラド。キングスフォールの雨具店『白雨の秘密』の女主人であるバーモット・イラドの末っ子。レプラカーン11歳。まだ髭も生えていない…っと。
GM:さて、そんなバイナル君の自己紹介を聞いたマゴラが彼に質問します。
マゴラ(GM):「なるほど。キングスフォールにも冒険者ギルドはいくつもありますよね?どうしてわざわざこちらに来たんですか?」と言って落ち着かせようとお茶を差し出すと…。
バイナル(GM):「お茶なんか飲んでるばあいじゃねんだ!」
ヴォックス:「おおいテメー!マゴラになんて口きいてんだこのガキ!」
バイナル(GM):「うるせーなマゴラって誰だよお前だってガキじゃねーか!」
ヴォックス:「はあ!?俺は15だ!もう大人だぜ大人!」
バイナル(GM)::「俺と大して変わんねーじゃねーか!」
ナージェンカ:じゃあのそっと…自分のガタイが良いことはわかっているので「どうしたのお?」とわざと上から声をかけます。
GM:ではナージェンカの大きさにギョッとしたバイナルは、うおおっと声をあげて思わずヴォックスにしがみつきます。
バイナル(GM):「あ、あ、あんたリルドラケンか…!ま、まあ?あんたみたいな冒険者がいるなら安心だ…」そして、くっつくんじゃねえ!とヴォックスを突き飛ばします。
ヴォックス:いやくっついてきたのお前だからー!と突き飛ばされます。
ナージェンカ:少ししゃがんでマゴラとバイナルを交互に見たあと「お客さんがちゃんと説明してくれないと、請ける方も対応できないんだよねえ」と言います。
ルカカフィーネ:ではルカカフィーネはナージェンカがしゃがんだ隙に敏捷を活かしてサッと肩に乗っかって肩車の体勢になります。
ナージェンカ:おおっと!?…じゃあ足を掴みます。
ルカカフィーネ:キャッキャします。
GM:はい、ではそのままバイナル君の説明を聞いてあげてください。
バイナル・イラドの依頼というのはこんなものだった。
彼の家族が営むキングスフォールの雨具店『白雨の秘密』で使われている謎の顔料を採取し、顔料の製法も明らかにして欲しい。
その特別な顔料の名はユゥリーラガナル。普段は無色なのだそうだが、水、特に雨に濡れると鮮やかに発色し輝くのだという。
そのため、一見地味に見える無地の雨傘やレインコートが雨の粒を弾いた途端に様々な色彩を放つ、さながら魔法のような光景が雨の日のトライネヤ駅区周辺では見られる。
また、水と戯れる姿で描かれることが多い妖精神アステリアを祀る神殿の装飾にも用いられており、その奔放で心変わりの激しい——もとい自然や本能に抗わず調和して生きることをよしとする華やかな女神の様にふさわしいと、信奉者達からも人気が高いのだそうだ。
そしてユゥリーラガナルの製法はキングスフォールの有力な商人や事情通の間でさえ謎とされている。
さて、そんな輝かしい実績がある店ならば尚のこと。先ほどのマゴラの疑問が気にかかってくる。
一体なぜ、彼はこんな辺鄙な村の冒険者ギルドにわざわざやってきたのだろうか。
ルカカフィーネ:…ねえこのバイナル君、本物かなあ?
GM:あー、そうですね。彼の身元はマゴラがちゃんと確認したことにします。ゲームのフェアネスのためにGMとして明言しますと、バイナル・イラドが偽物、という線は考えなくて大丈夫です!
レド:じゃあ本当に家族も製法を知らないんだな。
ナージェンカ:まだ若いし末っ子だからお店のことを話してもらってないのかも?
バイナル(GM):「…ってわけで!顔料を大量に採取して製法を調べるために冒険者が必要なんだよ。俺ももちろんついていくぜ」
ヴォックス:「おいおいおい、子守なんてしてられるかよ。っつか待てよ。元々その顔料ってお前の家のとこのやつだろ。なんでお前がわざわざ採取して製法を明かす必要があんだよ」
ナージェンカ:黙ってうなずきます。
GM:するとバイナルは「そ、それは…」と言って涙目になり、目を伏せます。
マゴラ(GM):「こらヴォックス!ちっちゃい子を困らせちゃだめでしょ」と言ってバイナルを抱きしめます。
ヴォックス:え?俺が泣かしたの??
マゴラ(GM):「ほら、泣かないで。訳を教えて、きっと手助けできるわ」
ルカカフィーネ:「そうよ!このルカカフィーネ・ネルラス・バジルキラにかかればチョチョイのチョイなんだから!」と、ナージェンカの上で薄い胸をはります。
GM:では少し長くなりますが、キングスフォールでその顔料をめぐって何が起きていたかを説明するね。
グフルミア村にも噂として届いていたことだが、近々キングスフォールのアステリア神殿が大改修される。
その際に、いままで神殿の装飾の一部に使われていた顔料ユゥリーラガナルが、巨大なアステリア神像にも使われることが決定したのだという。
というのも、信者や観光客の寄付が重要な神殿にとって安定した集客というのは重要な課題なのだが、雨の日にはどうしても人の足が向きづらくなるのが常だ。
そこへこのユゥリーラガナルは顕著な効果を発揮している。
雨の日も、いや雨の日にこそ、神々しく輝くアステリア神殿を見ないのはもったいない!ということで、他の神殿と比べると長雨の間でも客足が途絶えないのだという。
街としても更に大々的に観光名所にするべく、雨の日にだけ輝くアステリア大神像を是非作ろうということになったのだ。
そして、大量のユゥリーラガナルを確保する必要が出た神殿側はバーモットに発注することにした。
しかしちょうど折悪く、バーモットはその身に新たな子供を授かり、絶対安静にしなければならず顔料の調達ができないという。
神殿側とバーモットとの関係は良好だったので、それならば延期せざるを得ないという判断になったのだが。
そこに茶々を入れてきたのが一部の「鉄の代議」の議員達だった。
「それは商店であるバーモット家と神殿による癒着ではないのか」
偉大なるアステリア神殿の計画がその癒着によって遅らされるなどということがあってはならない。
もし本人が調達製造を行えないのであれば代理人を立てて行かせるべきだ。家族経営の『白雨の秘密』には大変だろうからこちらが責任を持って調達しよう、と。
バーモット側に弱みがある今を好機とみて、金の匂いがするこの謎多き顔料の秘密を暴こうと画策したのだ。
ところが、店主バーモットはこれを頑なに拒否した。
製法を開示するくらいならば、納期に間に合わず店が潰れることになっても構わないと突っぱねたのだ。
ならばと代議員たちはバーモットから直接聞き出すことを諦め、過去にバーモットから依頼を受けて顔料を調達した冒険者を探し出し、彼らに顔料を調達してくるよう依頼を出した。
ところが冒険者たちは、たしかにバーモットから依頼を受けたことはあるが、自分たちのしたことは彼女の護衛だけだという。
冒険者たちによると、バーモットは冒険者を伴いキングスフォールから鉄道でフレジア森林国へと向かい、顔料の採取現場近くまで到着すると、レプラカーン種族が持つ能力によって透明になりどこかへと消えてしまうのだという。
そして数日ほど宿で待っていると、大量のユゥリーラガナルを携えたバーモットがまたどこからともなく現れるのだ。
実際の現場を見ていないというのはなんとも頼りないが、ほかに手立てがない議員は街中の冒険者ギルドをおさえて、過去バーモットと関連のあった冒険者に「アステリア神殿用のユゥリーラガナルの調達」の依頼を出したのだ。
冒険者ギルドと関わるものならば子供でも知っていることだが、原則として同じギルドに同じ依頼を重複して出すことはできない。
冒険者パーティ同士で無用な争いを生みかねないからだ。
キングスフォール中のギルドをおさえられてしまったバイナルはやむを得ずグフルミア村まで足を運ぶことになったというわけだ。
ヴォックス:これってキングスフォールの偉い人達を敵に回しかねないですよね?
レド:そうね…。お母さんはもうシャッターおろしててバイナル君の独断っぽいし。
ヴォックス:っていうかバイナルも採取方法とかについてなんもわかってないのでは?
ナージェンカ:いや、うーん、どうだろう…。
バイナル(GM):「だからよ…クソッタレの議員どもに顔料を持ってかれるのも嫌だし。そいつらが失敗したとしても!変な茶々入れで顔料を納品できなくてウチの評判が悪くなるのも嫌なんだよ!」
ナージェンカ:「お母さんに聞いたの?」
バイナル(GM):「母ちゃんは俺にも教えてくれなかったよ…。だから冒険者に頼むしかないんだよ頼むよ!」
ナージェンカ:「いやあだねえ…商売人同士のいざこざっていうのは…あっ」思わず言葉が出ちゃった口を閉じます。
ヴォックス:「てーかさあ、お前のお袋がそこまで教えないって言うなら、それで良いんじゃねーの?」
バイナル(GM):「そんなわけないだろ!ウチの雨具はなぁ…!ラクシアいちなんだよ!それを変な茶々入れで店が潰れるかもしれないなんて、そんなことあっていいわけねえだろ!馬鹿なのかお前!」
レド:(笑)
ヴォックス:「ば、ばかぁ…?じゃあ言わせてもらうがなあ、この超一流冒険者である…この俺様がだぞ。そんな顔料の1つや2つのためにいちいち冒険に出るなんざ身の丈に合わねーんだよ!しかも依頼主がこんなクソガキじゃな!」
バイナル(GM):「はーんわかった。お前腕に自信がないから今のうちに逃げる言い訳を探してんだろ。どーせお前にゃできねえよ!」
ヴォックス:ぷっちーん。「んだとこの野郎できるに決まってんだろ!舐めてんのかお前」
ルカカフィーネ:「私もできるわ!」どやーん。
レド:「よしよし、なら無事達成させようじゃないか」
ナージェンカ:おお、ゲームマスターがプレイヤーを信じている…!
一同:(笑)
レド:「さて…本来はバーモット・イラドが1人で採取するということだから、その場所自体に危険はないだろう…。ナージェンカ、お前も行こう」
ナージェンカ:「おおっ…じゃあこれがボクの、最初の依頼ってことで…いいかなマゴラさん?」とギルド長を見ます。
マゴラ(GM):「ええ、それはもちろん良いんだけど…。あの、それで報酬の方は…」とバイナルを見ると。
バイナル(GM):「馬鹿にすんなよ!金ぐらい持ってらー!」バァン!と勢いよく貨幣の入った袋をカウンターに叩きつけます。
GM:そこにはバイナル君がコツコツ貯めたお小遣い、150ガメル!!
ナージェンカ:おー、偉い…!
レド:おお…。
冒険者ギルドに関わるものならば子供でも知っていることだが、冒険者を雇うのに必要な金額は、最低級の依頼でも1人頭500ガメルが相場である。
GM:いたたまれない空気が流れます。
ルカカフィーネ:そよ〜。
ナージェンカ:両腕を組んでうーんとうなり「偉いねえ〜…」と言います。
ヴォックス:「…お前冒険者を馬鹿にしてんのか…」
ルカカフィーネ:「その心意気やよしよ!このルカカフィーネ・ネルラス・バジルキラが見事採取してみせるわ!」とうすい胸を張ります。
ヴォックス:「いや、お前が1番金に困ってんじゃねーのか…」
ルカカフィーネ:ウッ!てなって顔が青くなります。
ヴォックス:「はー。どーすんだよマゴラこの依頼ほんとに受けるのか?」
レド:「ふむ、ナージェンカ、どうだ。商人の君から見て、価値がある150ガメルだと思わないか」
ナージェンカ:「うん?うーん」レドをチラッと見て首を垂れます。「うーん…そうだね、間違いない」
マゴラ(GM):「そうですね…。バイナルさん、正直申し上げて150ガメルだけでは依頼をお受けすることはできません。ただ、成功報酬として採取できたユゥリーラガナルを別料金で買い取ってもらう。そしてもし今後バイナルさん達がまた採取に行く際は必ずウチに依頼して頂く。この2つの条件を承諾していただければこちらとしてもお引き受けできます。」
ルカカフィーネ:おお、賢い。バイナル君側としても毎回私たちに頼んだ方が秘密を守りやすいだろうし。
ヴォックス:「えっ、マゴラこのお使いみたいな依頼定期的にやんのかよ!」
マゴラ(GM):「ヴォックスは黙ってて!」と足を踏みます。
ナージェンカ:ひどい。ただまあナージェンカはうんうんと頷いています。
バイナル(GM):「あ〜、んーよくワカンねぇけど、まあじゃあそれで頼むわ」と周囲の顔を見回しています。
ナージェンカ:良いのかな〜。
レド:そしたらギルドが見込みで報酬を提示してくれるってことだと思うんですが実際のところいくらの設定なんでしょう。
GM:はい、後払いですが1人頭3000ガメルをマゴラは約束してくれます。
ルカカフィーネ:おー、神殿の大改修に使うならそれぐらい私らに払っても儲けが出ると判断したのか。
マゴラ(GM):「そうしたら…ヴォックス、ルカカフィーネさん、レドさん、ナージェンカさん…もう1人くらい…あっ、門番さんちょうどいいや、今回の受注パーティーはこの5人にしましょう」
門番:飲んでた水を吹き出します。「えっ?なんだい?」
マゴラ(GM):「門番さん、この村は明日からも平和ですよね?」
門番:「この村はいつも平和だよ」
マゴラ(GM):「ああよかった、じゃあ門番さんも一緒に向かってください」
門番:「どこに?」
マゴラ(GM):「フレジア森林国に」と言ってニコッと笑います。
GM:はい、じゃあ5人目、最後のプレイヤーキャラクター真面目な村の門番さん紹介をお願いします。
レド:やっとか(笑)
ヴォックス:なんで1人だけ自己紹介促されないのかと思ってたけど。
ナージェンカ:君を待っていた。
門番:はい、真面目な村の門番です。見ての通りの(見えない)グフルミアの一般的な門番です。この村の自警団にずっと所属してるのですが何故か最近冒険に駆り出されるようになってしまいました。性格は真面目で融通がききません。元々冒険者ではないので、他の人の冒険者的な考え方に驚かされることもしばしば…。技能としてはファイター5、レンジャー3、エンハンサー3。まあ純ファイターです。という感じ。歳は22です。
GM:はい、ということで皆さん5人にバイナル・イラドを加えた6人で今回旅をしてもらうのですが…。依頼者であるバイナルが死亡した場合即座にこの依頼は失敗。セッションも終了です!
ナージェンカ:はい。
門番:やー!
ルカカフィーネ:「それにしても、フレジア森林国ね!エルフの国だって聞いたわ!行ったことはないけどきっと素敵な国ね!だってエルフの国だもの!」ふふーん、と素敵に変身リボンで青色のウィッグと踊り子の衣装に変身して、下手くそな踊りを踊っています。
門番:「へーそうなんだ、エルフの国」
ヴォックス:「その格好になった意味なんかあんのかよ…」
ナージェンカ:「ヴォックス、女の子のお色直しにツッコミを入れちゃあダメだよ」
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