第204話 第二次性徴


 マーモット達が雨に濡れながら内臓を食べ終わると、セシル達は残った内臓を大きな葉に包みセシルハウスに持ち込む。(森の中で時折生えている木の葉で、お肉を蒸す時に重宝しているので落ちていたら拾うようにしている)


 マーモット達も身体をプルプルと震わせ水気を飛ばしながら家の中に入り込む。

 タオルなどないのでそれなりに濡れたままだ。


「僕たちは今から食べるから先に寝てて良いよ」

「「「ナー」」」


 マーモを覗くマーモット達は思い思いの場所に陣取り丸まった。


「さて、僕らも肉焼きますか」

「お腹減ったー」


 セシルハウスには入口付近に食材を焼く為の1m四方くらいの空間が作ってある。

上部斜めに通気口も開けてあるので安全設計だ。

 ヨトがストックしてあった木の枝を組み、火の付きやすい実に着火していく。

 こういう雑用は戦闘であまり役に立たないヨトとユーナがメインでやるようになっている。


「雨の日は火が着きにくいな」

「仕方ないよ。それにしてもヨトも火魔法の調整上手になったね」

「そうだろう? 小さい火魔法で長時間出せる様になったんだ」


 ディビジ大森林に来た頃は拳大の火魔法を3発程度撃つことが出来たが(一般人の中では多い方)、単発でしか打てず持続性のあるものでは無かった。

 だが、セシルの指導でほとんど毎晩魔力循環の練習をし続けた事で持続的に魔法を使えるようになっていたのだ。

 まだ火の大きさはセシルの倍くらいまでしか小さく出来ないが持続的に使える事になったのが大きい。

 とは言え、魔力量が増えたわけでは無いので3発分の魔力を細かく使っているだけに過ぎない。


「長時間じゃなくて中時間でしょ。むしろセシルさんと比べたら短時間じゃない」


 ユーナが突っ込む。


「そりゃセシルと比べたらそうかもだけど一般人からしたら十分長時間だろう?」

「ん~たしかにそうかも?」

「少なくとも多少湿気た木に火を付けられるくらいには出せるようになったんだから長時間って言って良いんじゃない? 僕は時間なんて関係ないんだし除外して考えて良いと思うよ」

「だろう? 魔力コントロール地味にキツイけど毎日頑張ってたかいがあったな」

「まだまだセシルさんみたいに細く繊細には出来ないけどね」

「セシルも時間かかったんだろ?」

「……まあそうだね。体外に出した魔力をうねうねと自由自在に動かせるようになるには何年か掛かったよ。でもヨトとユーナは今くらい出来てれば十分なんじゃない?」

「まあ日常生活では十分だろうけど、ここはディビジ大森林だからな。何かあった時の為にセシルみたいに魔法を曲げられるようにしたいよな」

「ちなみにちょっと曲げるだけなら1ヵ月で出来るようになったよ」

「まじ!? じゃ俺もそろそろ出来るんじゃねぇか?」

「体外に放出した魔法を曲げられる人は大賢者伝説以来だって宮廷魔術師の人が言っていたけど」

「えっ!? 大賢者以来?」

「お兄ちゃんだめじゃん。可能性なしじゃん」

「可能性あるわ! 俺が3人目になるんだよ」

「ねぇセシルさん、なんで他の人は魔法曲げられないと思う?」

「普通の人はある程度魔力循環が出来る様になったら、出力を大きくする練習に移るからだと思うよ」

「出力?」

「うん。魔法をドーンって出す練習だと成長が分かりやすいし、見た目も楽しいし、やっている感あるでしょ?」

「あー私たちもそうだった」

「じゃ俺達もしっかり魔力循環の練習をすれば出来るって事じゃないか?」

「それは知らんけど。魔力が切れない僕でも慣れないうちは全身に魔力を回すのかなりグッタリしたからね。魔力が切れてしまうヨトなら練習時間が少ないしその分時間かかるんじゃない?」

「だけど、時間かかっても出来る可能性あるって事だよな?」


 ヨトは蒸している肉から目を離し、キラキラさせた目でセシルの方を見る。


「まあ……うん。そうなのかな? 僕の魔法の先生だった宮廷魔術師の人も僕と一緒に魔力循環やっていたけど、魔力を曲げる事は出来なかったみたいだけどね」

「えーまじかよ。……まあでもそっか。一般人は置いておいても宮廷魔術師の人は流石に体内の魔力循環の練習はしているよな。それでも曲げられないのか。じゃ可能性無しじゃん」

「私はやってみる」


 話を聞いていたユーナは何故かやる気が出て来たみたいだ。


「話聞いていたか?」

「うん。でも私まだ若いし」

「ユーナにはまだ分からんと思うけどな。人間には才能の限界ってのがあるんだ」

「私と2歳しか違わないくせに何を偉そうに」


 ヨトはため息を吐きながら、やれやれという仕草をする。


 その様子にイラッとしたユーナは思わずヨトの頬を叩く。

 ベシッ


「イタっ、なんだよ!」

「なんだよはこっちのセリフよ!」

「……えっ、えぇ~? なんで? なんだよは俺のセリフで合っている……よな?」


 ヨトは叩かれた上に怒鳴られている状態に頭が混乱し、セシルに尋ねる。


「合っている……と思う」


 セシルも自信が無さそうだ。

 ユーナも勢いで叩いた上に言い返しもしたが、自分に非がある事が分かっているので話を逸らす。


「とにかくっ! 私はやってみる! 諦めるのはセシルさんくらい細く魔法循環出来るようになってからでも遅くないよ。お兄ちゃんは一生そのまま這いつくばって生きると良いよ」


 ヨトはまだ若干の痛みが残る頬をさすりながら、急にめちゃくちゃディスられている事に心が追い付かない。


「俺、今這いつくばって生きているの?」

「下も下よ。底辺よ。目標も成長も何も考えないクズよ」

「魔法曲げたいって目標、俺が言い出したんだけど……」

「うるさいっ!」

「えぇ……」


 ヨトはユーナに結構甘いので怒るタイミングを逃し続ける。


「まあユーナがやるなら俺も当然やるよ」


 火が通った内臓をユーナに渡しながらヨトも決意する。


「好きにしたら? 熱っ、ハフハフ、あっなにこれ美味しぃ~」


 ユーナはハフハフしながら頬に手を当てて幸せそうな顔をする。


「おっマジ?」


 セシルとヨトも食べていく


「うっま。あっつ。溶ける」

「美味しい~。これ内臓のどこなんだろう」

「さっぱり分からんね。あっこっちはコリコリしてそう」

「とりあえず全部焼けるだけ焼こう。焼けば内臓でも明日も食べられるでしょ」


 食べながら明日用の肉もせっせと作っていく。


「あー美味しかった。お腹も膨れたし。そろそろ服も乾かそうか」

「そうだね」


 3人とも真っ裸になり服を絞ると木の枝に引っかけ火の近くに並べる。

 元々8歳と10歳だったため裸になる事にあまり抵抗が無い。


 無かった。

 無かったのだが9歳と11歳の現在、何かが変わったようだ。


「あれ? お兄ちゃんどうしたの?」


 ヨトが不自然な動きをしている。


「ん? いや別に?」


「いや、明らかにおかしいでしょ。なんでそんな後ろ向きなの」

「普通だろ」

「じゃあ正面向いてよ」

「いいけど」


 ヨトが不自然に手でちんちんを隠して前を向く。


 セシルがヨトの斜め後ろからそーっと近付き、隠している手を取りズラす。

 もう片方の手で光魔法を使い照らす事も忘れない。


「あっおい! やめろっ」

「あっ!! お兄ちゃん!! なんかぼやぼやしてる!! ちんちんの上ぼやぼやしてる!」

「うっうるさい!」

「ちん毛だ!!」


 ヨトは顔を真っ赤にして再びチンチンを隠し後ろを向く。

 熱帯地域の帝国人の方が毛の成長が早い事が多い。


「いいなー」

「良くないだろ!」

「いつから?」

「うるさいっ!」

「僕もあるかな?」


 セシルは自分のちんちんを持ち上げたりしながらチン毛を探す。


「あっ僕も産毛みたいなの生えてる!」

「ほっほんとか!? 見せて見ろ」

「見せて見せてー」


 ユーナとヨトがセシルのちんちんに集まって来る。


「ライライ、こっちだ! しっかり照らせ」


 ヨトはライライを呼び寄せ、セシルのちんちんをしっかりと見ようと必死だ。


「あーほんとだー! セシルさんもうっすいの生えてる!」



 ヨトはチン毛が生えているのが自分だけじゃないのを確認出来てホッとする。

 周りに相談できる大人もおらず、複数の子供もいない事で意外と不安に思っていたのだ。


「じゃヨトのもしっかり見せて」

「だっダメだ! 毛が生えたらもう大人だぞ! 大人は見せないもんなんだ! お前もちんちん隠せよ!」

「僕のちんちんをライライに照らさせてまでめちゃくちゃ凝視したくせによく言うよ」

「そっそれはまだ子供ちんちんだったかもしれないからだ。ユーナももうあまり見るなよ」

「えーっ!?」

「えーじゃないっ!」





※※※


ストーリーを進めたいのにくだらない話だけ筆が進む。

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