第17話 領主報告2
マルエットが待ったをかけた。
「サラッと何を言っとる? 『2匹が言っている事を理解出来ている』と言うのも異常では無いのか!? 儂がおかしいのか!?」
「そうでした。当時私も驚いたのに他の事が衝撃的でそこを忘れていました。ダラス様の予想ではセシルと魔力的パスの繋がりから、セシルの知識レベルなら理解出来るのではないかとの話でした」
「なるほど。そう言われると納得がいくな。2匹が引力と斥力の魔法を使えるというのもそれしか考えられんしな」
「あっ! 申し訳ございません。まだ言い忘れがありました。この魔力的パスが繋がっている事によりスライムとマーモットが魔法を使える。との話でしたが、セシルの魔力が多すぎるのか長時間……いや、観測範囲でずーっと魔法を使う事が出来ています」
「「「は?」」」
「蝋燭の火ほどのかなり小さい魔法しか使えない事を差し引いても驚異的です。2匹に魔力を引っ張られ続けているセシルも魔法が使え、疲れる様子がありません。なおセシルは2日で生活魔法を使えるようになりました。実質数時間で、です」
「はっはっはっ流石だな……肝心のセシルの魔法はどうなのだ? やはり凄まじいのか?」
魔法の話になるとルーレイが生き生きしてくる。
「それがセシルも蝋燭の火レベルやそよ風程度の魔法しか使えないのです。そこは学院でキチンと学べば良いだろうと放置しているのですが」
「ふむそうか。まあ今は身体作りの方が大事だな」
ルーレイは自分から『魔法の訓練は学院からで良い』と進言したくせに、少し残念そうだ。
「はっはっは。期待してしまう気持ちも分かるが、話を戻そうじゃないか」
領主であるリンドルは驚きつつも落ち着いており、話の本筋を忘れない。
「えっと・・・裏庭に木の囲いを作っている所までお話し致しましたね。現在、騎士達に囲いを作らせているのですが、その騎士達にもこの2匹の能力については教えておりません。知っているのは私とダラス様、イルネ、セシルとその両親。そしてここにいらっしゃるお三方のみとなっております」
「なるほど。もし漏れた場合はこの9人の誰かから、と言う事になるわけだな」
「左様でございます。そして今回ここに来たのは現状の報告と別にお願いがございまして参りました」
「なんだ言ってみなさい」
「ハッ。まずスライムのライムとマーモットのマーモが強くなった要因が、単純にトレーニングに参加して強くなった可能性の他に、騎士達が村に駐在して魔物狩りをするようになってから、2匹に魔物の肉を食べさせるようになりまして、それも要因の可能性も出てきました。なので、スライムとマーモットに付いて研究している本などあれば取り寄せていただけないかと。さらに従魔になった事で起こる変化についても知りたいです。なお、ダラス様の意見でございますが、本を取り寄せる際は余計な勘繰りをされない為に『セシルを学院に入寮させる際、マーモットとスライムが問題を起さないよう、魔物の生態を調べる必要がある』との名目で本を取り寄せた方が良いだろうとの事でした。『兎に角、宮廷魔術師共にバレないように細心の注意を払うべきだ』と」
「あい分かった。あやつらには絶対バレないようにせねばな。ここにも魔物関連の本があるが、より詳しいのはやはり王都だろうな。持ち出しは厳しいだろうが、私の名で書き写しは出来るだろう。魔物2種類分のみなら大した量も無いだろうしな。従魔に関しては・・・どの程度の情報量になるか分からんな。下手したら半年近く掛かってしまうが良いか?」
「ハッ。感謝いたします」
「他にはもう無いだろうな?」
「懸念が1つ」
「なんだ?」
まだあるのかとため息をついて聞く
「後1ヵ月もすれば、セシルを探りに他領や他国から密偵なども来ることが予想されます。怪しい人物を我々が捕らえたとしても、何も罪を犯していなければ手放さざるを得ません。対処はいかがいたしましょう」
「村長に聞いて常連の行商人などに通行許可証を与えておけ。その他、村人の顔見知りで無ければセシルが学院に行くまで入村を認めるな。それでも無理やり入村をしようとすれば処罰すればよい。不正が無いように割符にする事と、ルールを徹底するよう看板を立て、村人にも見知らぬ人物がウロウロしていたら騎士に報告するようお願いしときなさい。報告してくれた村人には謝礼も忘れないようにな」
「ハッ。承知いたしました。本日の私からの話は以上でございます」
「分かった。下がりなさい」
コルトは頭を下げた後、下がって行った。
「疲れたな」
「はい。疲れました」
「マルエット、スライムとマーモットの生態と従魔についての情報収集の手配をやっておいてくれ。明日で構わん」
「ハッ。朝一に手配しておきます」
「よし、今日は解散」
こうしてようやく2匹に関しての領主報告が終わった。
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