ぼっちのまま卒業したら告白されたんだが?

黒猫(ながしょー)

第1話

 校内に咲き誇った春花たちが卒業生の門出を祝福する。

 思い返せば、高校三年間はあっという間の時間だった。入学式がつい昨日のことのように思えるとよく言うが、まったくもってその通り。長い間、高校生として本当に過ごしてきたのだろうか? 


「……いや、過ごせてきたんだから卒業できたんだよな」


 肌を優しく撫でるようなそよ風が心地よい校舎の屋上にて、ぽつりと自答する。

 鉄柵に身を預けながら、グラウンドの方に視線を向けると、多くの卒業生が記念撮影や雑談などに花を咲かせていた。


「……楽しそうだなぁ」


 俺にも友人がいたら、あんな風にはしゃいでたりしたんだろうか? おあいにく俺はぼっちだ。友人なんて単語は滅多に使わないほど誰もいない。


「そうかしら?」


 ふと、後ろの方から声がして、俺は咄嗟的

に振り返る。


「あんなの今だけよ。それより、ここで会うなんて奇遇ね。宮代健くん。あ、それとも私のストーカーなのかしら?」


 振り返った先には黒髪でさらさらとしたロングに目付きが少し悪い美少女……有川未来がいた。

 未来は自分の体を抱きしめるような仕草を見せる。


「ちげーよ。てか、なんで俺がお前にストーカーしなくちゃならねぇんだよ」

「てっきり私の事を好きなんじゃないかと思って……」

「んなわけねーだろ!」


 どこからそんな自信が出てくんだよ……。逆に羨ましいわ。

 俺は小さなため息をつくと、元の体制へと戻る。それと同時に未来が俺の横に並び立つ。


「風が心地いいわ」


 未来とは同じクラスではあるが、ほとんど関わりがなかった。こうして喋るのももしかすると、初めてなのかもしれない。

 ――最初にして最後、か……。

 なんだか寂しさを感じなくもないが、俺には一生縁のない美少女だ。むしろ卒業の後に少しでも話せただけでラッキーと思わないといけないな。


「宮代くん」

「ん?」

「いきなりで悪いのだけど、私と付き合ってくれない?」


 ……………………………………………はい?

 え、俺は今何を言われたの? さらっと普通のことのように告げられたような気がするのだが、気のせいだろうか?


「え、えーっと……今、なんと?」

「聞こえなかったのかしら? 私と付き合ってほしいと言ったのよ。ダメかしら?」


 気のせいじゃなかったあああああああああああああああああ!

 混乱しそうな頭を必死に保ちながら、なおかつ冷静に振る舞う。


「いや、ダメという前になんで俺なんかを……」


 自分で言うのもなんだが、いい所なんてほとんどないし、見た目もパッとしない。こんな奴のどこを好きになったというのだろうか?


「直観……かしら? あなたと一緒なら、幸せになれるような気がしたから」


 まさかの好きとかではなかったことに少々驚いてしまう。


「そんなもので俺を彼氏にしてもいいのかよ……?」


 というか、どういう告白の仕方だよ。

 でも……付き合うというのもいいのかもしれない。お試し感覚というか……なんか、俺最低だな。

 俺はどのくらいか黙考した後、その場で返事をすることにした。


「じゃ、じゃあ友だちから……」


 その方が無難……だよね?

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ぼっちのまま卒業したら告白されたんだが? 黒猫(ながしょー) @nagashou717

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