第14話 久々の東京
「綾瀬さん。今日はお昼から東京に行くんですよね?」
「うん。0課の課長から聞いた案件で、郊外の商業施設にヤバい場所があるって話だから、そこの確認に行くよ」
「ちょっと不思議なのは、0課って何の為にあるんですか?」
「それはね…… 霊的な現象が起こると対処は出来ないから、そう言う案件に警官を近づけさせたりすると、被害を受けるだけになっちゃうでしょ」
「まぁそうですね」
「だから、原因が霊障だと確定させて警官が不用意に近づかない判断をする為にあるの……」
「なんだか虚しい部署ですね……」
「その通りだけど、対処できない以上はしょうがないと思うわよ。過去の0課の資料を見ると通り魔殺人的な犯罪の場合、全体の80%以上が悪霊に身体を支配された人が起こしていると言うデータも残ってるけど、悪霊の仕業だとか発表出来ないからね。事件発生の可能性がある場所が特定されていれば、事件の可能性を事前に察知して未然に防ぐ程度の事は出来るから…… 意味なく立ち入り禁止の場所があるのを時々見かけるでしょ? それは殆ど0課のメンバーが確認した霊障指定地だよ」
「今日はその商業施設の霊障指定地に行くと言う事ですか?」
「うん。当然公にはなって無いけど、霊障指定地にする為には地権者の理解も必要だから、それを解除できる可能性があるなら、協力的になって貰えると思うわよ」
「日本でも色々あるんですね」
◇◆◇◆
綾瀬さんと新幹線で東京に向かうと、原田先生と美鈴さんが迎えに来てくれていた。
「いよいよだね」
「美鈴さん楽しそうですね」
「あのね。今は女神様のお守り貰ってるじゃない」
「はい」
「あのお守りを身につけてると、今まで気づかなかったヤバいのが結構いるんだなって解って、びっくりしてたんだよ」
「この世界では本物の除霊師はまだ見た事ないですし、霊は溢れかえってますからね。幽霊も悪霊も美鈴さんや原田先生に直接恨みを持って無い限りは、美鈴さん達が意識して視ようと思わない限りは気にならない筈ですから」
「それって大丈夫なの?」
「私の居た世界の様な統率する者がいなければそうでもないかな?」
「魔王とか?」
「そうですね」
「この世界に魔王が現れる可能性ってあったりする?」
「私がこの世界に来てるくらいだから無いとは言えないです」
「怖いね」
「魔王が一人で来るだけなら、何とかなると思いますけど、数で攻められると危険ですね」
「大丈夫なのかな? この世界」
「私には何とも言えませんが、何が起きても大丈夫なように準備はしておきたいですね」
「そう言えばこれからの活動をするのに一応名刺とか作って置いたよ」
そう言って、原田先生が取り出した名刺には『アストラーゼグループ』と言う名前が会社名の様に書かれた名刺だった。
そのグループの傘下に原田先生の法律事務所が存在しているように書かれてある。
「これって、表示上の問題とか無いんですか?」
「うん。別に問題無いよ。弁護士事務所がグループ内にあると信用されやすいからこの方が便利いいでしょ? 宗教法人とも記入してないから普通に見ても会社名くらいに認識するはずだしね。宗教法人が認可されるには継続的に三年以上の、宗教活動の実績が必要だから時間がかかるんだよ」
「まぁ私は宗教活動をする事自体はどっちでもいいんですけどね。教祖様になりたい訳では無いから。でも…… この名刺…… 『各種霊障ご相談承ります』って怪しさ全開ですね!」
「あくまでも相談を受けるとしか書いてないし問題は無いよ。霊障関係の窓口はうちの法律事務所に、別回線の電話を敷いてあるから、金子君が担当してくれるよ」
「美鈴さんも大変ですね。夜まで少し時間がありますから、私、お世話になった学校の先生に挨拶に行きたいと思います」
「そうなの? 今日は土曜日だから学校はお休みでしょ?」
「学校に行くわけじゃないですから。担任の先生の連絡先は伺ってるので」
私が杉下先生のスマホに連絡を入れると、電話はすぐに繋がった。
「遠藤さん? 久しぶりですね。どう? 静岡での生活は慣れた?」
「はい。今はイチゴを育てながらのんびり過ごしてますよ」
「そっかそれなら良かったわ。どうしたの今日は?」
「少し用事があって、後見人の弁護士先生の所に来てるんですけど、時間が空いちゃったから、少し先生とお話がしたいと思いまして」
「大丈夫ですよ。事件があった時に伺った、神田川沿いのビルにある事務所ですよね?」
「はい」
「そこなら私のアパートからも近いので、一階にカフェが在ったよね。そこで待ってて。30分もかからないから」
「解りました。楽しみに待ってますね」
一階のカフェに行きスマホを眺めてると先生が到着した。
先生に手を振ると、すぐに気づいてくれて私の席にやって来た。
「お久しぶりです。学校の側であんな事件が起っちゃって、その後どうですか?」
「うん。それがね。あの事件の後、色々なマスコミの方が取材やなんかで賑わって結構大変だったのよね」
「そうなんですね。私はすぐ引っ越しちゃったし、原田先生の指示で住民票を移すのも騒動が収まってからにしたので、全然知りませんでした」
「それは正解だったと思うわよ、あの騒ぎ方だったらきっと静岡の住所を探し出して押しかけて来たと思うもの」
「学校は変わりないですか?」
「それがね、あの事故の起こった現場で、あの後も交通事故が何件か続いてるの。同じように電柱に車が突っ込む事件がね。生徒も通学途中に巻き込まれた子も居たりして、今はあの場所を通学路から外して、迂回してくるように学校でも指導しているの」
その話を聞いて、ちょっと背筋に冷たい物を感じる。
ソフィアが脳内で話しかけて来た。
『さやか。きっとあの伯父さんや叔母さんが、地縛霊になってるわ。対処した方が良いんじゃないの?』
『そうだね。ソフィア。頼んでも良い』
上の事務所に電話をして原田先生、美鈴さん、綾瀬さんの三人も下のカフェに降りて来た。
杉下先生に三人が挨拶をする。
「杉下先生。今、私達は霊障に対して対処を行う活動を始めたんです。現場を確認したいと思いますけど、一緒に来ていただけませんか?」
「遠藤さん。霊障って、そんな事って実際にある物なの?」
「先生。視えないのが普通ですから、信じて頂けないのも無理はありません。今回は、私の伯父と叔母が関係している可能性が非常に高いので、対処したいと思います」
私がかけていたクリスタルの
私がお守りを杉下先生に渡すと綾瀬さんが質問してきた。
「ちょっと、さやかちゃん? お守りは洗礼を受けていなくても有効なの?」
「そうですね、洗礼を受けた方のお守りを貸し出す事に関しては、信徒の方の守りを貸し与えるだけですので大丈夫です」
「じゃぁ今は、さやかちゃんに守りが無いの?」
「私は大丈夫です。流石にドラゴンは出てこないでしょうから」
そんな話を普通にしてると、杉下先生がキョトン? とした表情で「あの…… 洗礼とか、霊障に対処とか、そんな話何処から出て来たんですか」
そう言えば杉下先生は、ソフィアの存在とか知らなかったんだった。
普通に教えていたつもりでいちゃったよ。
「杉下先生。取り敢えずそのお守りを身につけてて下さい。問題が片付いてから質問を伺います」
予定がちょっと変わっちゃったけど、死んでからも迷惑をかける伯父と叔母をどうにかしなくちゃね!
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