真田総一郎。軍議に参上

 物見戸様が描いてくださった真田総一郎のイメージ画です。


https://www.pixiv.net/artworks/91812172


 やっとダンが目にする姿。ということで見ておいていただけると助かります。

 作者も一応この服装と考えて書いてみました。

 尚、作者は物見戸様がこの服装にしたのは、

 近頃のラノベ主人公の服装を統計した結果大体こんなもの。とお考えになったと推測しております。

 私へのハートをせずとも、物見戸様への「いいね!」を押して頂けると嬉しく思います。


****************


「あ~、サナダ男爵を支援したのがサポナ閣下でしたわね。……閣下」


「……うむ。サポナ殿の願いなら断れぬ。連れて来い。ただし二人だけだ。帯剣も許さん」


 ―――。デカイ声の女が一人……黙った。……入り口の布が。人影は、二人。ついに……先頭。黒髪。ド平均の私より背の高い若い男。こいつが真田。……真田? ……………………お前、何その襟を立てた赤と白のジャンパー。布パンツなのかジーンズなのか知らないが……は? そのファッションセンス何時だよ。昭和中期か。……あ、目立つのが仕事の人は覚えてる最後の頃も立てていたような。……民衆受けには有効、なのか?

 ってそんな襟一つどうでもいい。間違いない。こいつ真田だ。私の敵。!? 指だしのグローブ!? いや、懐かしき極一部の人が何処までも足掻こうと付けてしまった物とは違う。両腰に鞘が残っている。剣を握るなら確かに欲しい。……む、鞘の長さが一緒? 双剣だと? 宮本武蔵とかに憧れたアホ? だがラスティルさんはこいつを互角だと……。

 そしてラスティルさんの言っていた通り大した美形。私の最後の記憶にある見た目で売る方々みたいな女装の似合いそうな顔なのに、ホモ臭く無く凛々しい感じがするのは首が太かったり体が鍛えられてるからか。戦場で流れ矢にでも貫かれると良いのだが。


 一歩後ろの女は髪が帝王家の色と聞く紫。ならこいつがユリア・ケイか。……紫だけなら平民でも稀に居るが、此処までケバイ輝く紫色の髪は始めて見る。それが床に擦りそう。どんな長さだ。戦場で引っ張られて死ね。

 こいつも大した美形だ。真田と同じ容姿が売りで結婚すると人気が激減しそうな気配がある。だからって膝上まで来る靴下にミニスカートとは。真田が提案したのか? ケイで生まれ育った人間だろうに完全に真田の影響を受けてやがる。髪踏んづけてコケて下着を晒して恥をかけボケたれが。


 間違いなく別世界の住人だこいつ。そして私とは真反対の価値観。

 真田と名乗った時点で正気を疑うが、見た目までこうとは。自分が周りと違うと絶叫し続けるも同然。大した度胸とは思うがね。

 今も何の怯みも無く実務担当の方々の間を堂々と歩いて、諸侯の、え? お前、今自分が膝をつくとこ越え、は!? 諸侯の、前、マリオの正面まで。後ろのユリアも止めねぇの、!!?? お、お辞儀? は、え? あ、顔を、上げて、

「総一郎真田男爵がマリオ閣下へ挨拶致します。真田兵五千。サポナ殿の兵千と共に参陣したくまいりました。

 現在俺の兵は渡し場でローエン閣下の配下の方々に留められており、指揮官のみ早馬でお願いに参りました。通行の許可を頂けないでしょうか」


 か、顔を上げたまま、直立して、相手の顔を見て、堂々と……。イルヘルミさえ驚いている。マリオとシウンは……無表情だ。え、男爵って……マリオに比べれば……は? あ、何時の間にか膝をついていたド紫女からズボンを引っ張られて……。


「失礼しました。……すみません」


 ……そうだね。失礼だね。―――何かこう、教えられてた礼儀を緊張か何かで忘れちゃったな。くらいの感覚に見える。

 かんっぜんに理解できねぇ。これは多分、自分より上位者とは殆ど会ってないのだろうが……。あ、サポナは? 辺境だし無礼には寛容だったのか?

 にしたって。文化どころか世界さえ違う上に貴族と出会うとなれば何よりも最初に考えるのは礼儀作法、じゃないのか? それをお辞儀? 違う文化の作法をしちゃう? しかも違う文化は全て蛮族が常識なこの国で? は、え? えーと、こういうの学生根性、だっけ。けど学生の私でも流石に違う世界でお辞儀は……。やはり私とは違う所から来たのだろうか。

 待って、何か、色々と考えないといけない事が、あったはず。しかし無礼という言葉でさえ足りない行動の衝撃で……。

 マリオの意志次第では敵対心ありで即斬首なのに。思い至らないのか? ……あ、私にレイブンくらい戦う力があったら。今この瞬間『マリオ閣下の権威を傷つけ軍としての統率を乱します』とでも理由付けして首を落とせてた……。残念……。


「サナダ殿。わたくしがそのローエンになる。通行を差し止めたのは配下が念のため安全を取ったのだろう。盟主閣下の許可があれば直ぐに通すのでご安心あれ。

 実はわたくしは貴君の作る服を好んでいてな。その関係でサナダ領が男爵としては破格の成功をしているのも聞き知っている。だが兵五千は驚きだ。そんなに多くの兵を取って民に恨まれなかったかね?」


 それだ。男爵で五千は多い。しかもビビアナ相手に守る兵だって置いてるはず。農具の発明と食料増産で余った人手を全て兵にしたとしても目一杯の数だろう。

 ならば、えっと、つまり……。


「治安などの統治は大丈夫です。確かに少し不安はありましたが、領地に住む皆にも良い事をしてきたのが理解されていたようで。だよな、ユリア」


「諸侯の皆様にユリア・ケイがご挨拶致します。我が主君の治世により民の生活は良くなり余裕が産まれてますので、戦で名を上げるのを望む者を笑顔で送り出してくれました。

 サポナ閣下ご領地残りの方々と連携も約束しており、我ら不在の間もビビアナから領地を守れると考えております。

 お陰で士気は旺盛。統制も悪くありません。しかし情けなくも兵六千の兵糧として用意出来たのは此処に来るまでの分がやっと。後はマリオ閣下に頼るしかなく。領地から兵を取らずに済んだとお考え頂けないでしょうか。

 我らはサポナ閣下指揮のもと、必ずや男爵以上の働きをお見せいたします」


 良かった。……来て、良かった。己の功績を言う真田の声がよく聞こえる。表情も。ユリアの言葉を当然の物として聞いているのも。

 こいつは……この男は! 自分のした事に恥は勿論、一片の迷いさえ無い!?

 同じような真似をした私は毎日、自分の目的が正しいのか。そもそも行っている事が目的にさえ悪いのでは。と、悩んでいるのに。


 分かる。理解出来る……はずだ。食料を増産し、商品を作り商業的にも成功。当然民は絶大な支持をするだろう。ケイのどんな賢い諸侯にも出来ない事をしたと、真田自身もよく分かっている。だから自分の行動は正しいと確信して何の不思議も……無い奴が居やがる訳だ。

 真田が敵なのは確定している。しかし何処までやるのだろう……なんてっっ。

 甘かった。自分の常識で見ていた。何処までなんてアホだ。真田は何だってやる。

 可能ならば車を、飛行機を作りミサイルも産み出すだろう。全て人の為、強い武力で早く乱世を静めれば結局は死人も少なくなる。とか何とか考えてだろうな。そして正しいと確信して! 後の影響は大して考えずに!


 見れば、見るほど。考えれば考えるほど一瞬でも早く殺したくなる奴がぁ……ッ。

 こいつは駄目だ。何一つ思い通りにさせてはいけない。全てを邪魔しなければ。まずはこの反ビビアナ連合軍への参戦を。

 男爵領の広さで五千人なんて無茶をした以上、何か思惑があるはず。しかし声さえ出せない。何を言おうが身の程知らずの一言で終わってしまう。

 こうなったのは全部自分の望み通りなのに、なんてもどかしい! くっそ、イルヘルミ! 興味深そうに真田を見てんじゃねぇ。追い出せその公害野郎を! 

 てめぇも金魚の糞ユリアが自分の垂れるクソの原料六千人分をマリオに要求した時、一瞬顔引き攣っただろうが!

 その恥知らずは当然の如く要求しやがったろ。どれだけ働きに自信あるとしても他人の物を無限に要求できる奴だそいつは。中国人の祖先かもしれん全てを奪われるぞ!

 ……め、滅茶苦茶不吉な連想を……ッ! こいつは生き延びさせんというのに!

 

 マリオ・ウェリア閣下。同盟軍盟主閣下。お願いだからそいつを追い出してください。六千人分の人手を浮かせられるなんて考えないで。

 確かにでかいけど! 食料だけで良いなら安いとまで言えるけど! でもそいつ敵なの。貴方にとっても本質的には敵と思うんです!

 くぅうう。どうせその眉寄せてるのもポーズなんでしょ。サポナに与える兵が浮いたラッキーと考えてるんでしょ。てめぇ、真田に有利な真似する奴一切合切私の敵だから覚悟、

「……何よりもまず尋ねよう。ユリア・『ケイ』と申したな。それは帝王室に連なるという意味か。貴族、帝王家。共に名乗れるのは勅許状を持つ者のみ。汝は持っているのか。

 或いは王都の系譜に名が記されているだけでも良い。今は汝の言だけでそう信じよう」


 おほぅ。家の確認は考え付かなかった。ユリアの表情は、苦い。ざまぁ。しかし……ケッ。追い出しはしないさ。


「……いいえ。ウィン・ケイの末裔と聞いておりますがお言葉のような物は持ちません」


「ならば余の最後の懸念も晴れた。かくかくたる貴族の集まるこの場でケイを名乗る増上慢も今は咎めまい。不快ではあるが成り上がり者らしき仕儀よ。

 去れ。ローエン殿。早馬を出しこやつらの兵を監視されるがよい。この者たちが迷えば飢えた兵は野盗となろう」


 ……おう? 今、どっか行けと言った? 真田に? え、本当?


「そっ、マリオ閣下! 閣下はサポナ閣下へ兵を与えるお考えではありませんか。

 俺たちはサポナ閣下の兵との調練をしつつ此処へ来たのです。どうかお使いください。閣下の民を苦しめず、サポナ閣下は使い易い兵を持てます。

 妻のユリアがケイを皆様の前で名乗ったのも、ケイへの忠節を示すため。陛下の解放を目的とするこの軍で力を尽くす証明とお考え頂きたいのです。

 どうか参陣を拒否なさる理由をお教えください。俺たちは必ず同盟軍に有益となります。これでは納得いたしかねます!」


 は、い? 今、納得といった? これは、国は違うとしてもこいつ私と完全に同郷なのかも。あんな上の人間相手に二言目には『納得できない』なんて言っていた世界、他にないでしょう。

 当然マリオとシウンは……よし。よおぉおしぃ! 苛立っておられる! 


「納得、だと? 余に納得させよと命じるか! そもうぬの納得とは『己の望む通りに奉仕せよ』との意であろう無礼者めが!」


 うひょおぉ! その通り! その通りで御座います! どうよ真田ぁ。これが道理だ! っとぉ危ない。拳を握るかと。手は横に。直立不動で傾聴するのだ。両手を上げて喝采しないように。

 さぁ言ってやってくださいそいつに! 何かこう、とにかく追い出す事を!


「だが良かろう。納得とやらはとこしえに出来まいが、貴顕の義務として愚昧なる者に話して進ぜる。

 そのユリア・ケイと申した下郎だけであれば受け入れても良かった。だが主のうぬはならん。共に戦うなど身の毛がよだつわ!

 仮にも男爵領の主が良い事をした。だと? このマリオは傲慢と言われ続けてきたが民に良いことをした等、諧謔でしか言えぬ。如何なる貴族であろうとそのはず。

 うぬの傲慢、厚顔無恥さは成り上がり者という言葉さえ足らん。兵を飢えさせる前に疾く去れ下郎! 忘れるな。今夜うぬに属する者が我が目に入るならば討ち滅ぼす!」


 ―――。ふ、ふぉお。シウンも同意している。真田の影響を受けやがったイルヘルミは、……悩んでやがる。いや、良い。マリオ閣下だけで良い。爽快。快感。想像以上のお言葉!

 盟主閣下。マリオ・ウェリア閣下。靴に接吻出来ないのが、苦痛で仕方ありません。

 大好きです。このケイに生きる全ての人の中で、一番貴方が好きです。

 この功績、この恩義。決して忘れません。機会がくれば必ずお返しします!


 しゃっおら真田あああぁぁああ! 出てけおらぁ! いや、夜まで居ろ。そして死ねぇ!

 閣下! こいつを殺してくれたら貴方がケイを統治出来るよう私頑張る。全て他人頼りな身の上ですが頑張ります。だからお願い! お話し出来ないけど届いてこの殺意! 

 あ、あっサポナが、立ちやがった。こいつ、居候が図々しくも更に要求しやがるか。

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