宴会での話を聞いて1
ニワトリの 声に起こされ 眠いです
はー元気です事。卵よし。食べてよし。の鳥さんは流行るを越えた当然の常備家畜。
故郷でも三十年前くらいまでは結構飼ってたはず。五月蠅いから非常識なんて言われてしまうのはやはり異次元の話だぁな。
さーてタラタラと朝食を作りますか。んー? アイラが居ない。これは、酒飲み宴会から若い娘さんの朝帰りという大事件か。
もしそうなら相手は大した人だ。カマキリの雄並みに勇気がある。同意と思っても起きて酒抜けて冷静になった時不同意なら首が飛びそうなのに。
候補はガーレかレイブンになるかな? ガーレは妻も子も居ると聞くから、一夜の遊び程度だろうけどレイブンと結婚となったら……此処を出ないとまずかろうね。
アイラが旦那を見つけてきたらどうすんべ。は同居して即出来た悩みだが、今ならリディア家の敷地端に小屋建ててもらうのが良かろうか。
今はラスティルさんにぶっこんだ所為で金がない。オウラン貯金を幾らか使う羽目に、おや? 馬車の止まった音が。
「ぬ、ぬぐぅ……待て。待ってくれ。馬車の揺れで、頭痛と、うぶっ」
「い、痛っ! 頭……痛い。なにこれ。僕、病気なの? ……凄く、気持ち悪いし、もう少しリディアの家に居させてくれても……」
「黙って速く門の中にお入りをっ。お前何を見ている。直ぐに帰れと言ったはずだ。馬車が止まっていては目立つであろうが。さあ、まずはラスティル殿。肩を貸せるようお立ちください」
ほへ? 何か混沌とした、うめきと囁き声。
む、門の所には淀んだ雰囲気の美人が三人。……そうか。二日酔いか。リディアの家に泊めてもらってたのね。それだけにしては何か違和感あるが。と、見ててどーすんだ。もー。これだから無能は咄嗟に動けなくて……。お外だし声潜めて下僕感出していかないとな。
「バルカ様。ガン様をお送りくださり感謝致します。ささっ。ガン様。少し頑張ってくださいね」
「あ、うん……。ううっ。頭、痛い。何なのこれ。きつい。ダン病気とか分かる?」
「お酒の飲みすぎじゃないでしょうか。昨夜の酒宴でよほど飲まれたのでは?」
「ダン。……報告が、あるのです。兎に角二人を中に」
やだ真剣。二人が寝てるのを無理に起こされた感あるのに、お嬢さんは今日も腰に剣まである完全装備で素晴らしいね。
報告って何だろう。酒宴の席……はっ! レイブンとの婚約を勧められたとか!? くぁー。その手で引き抜きかー?
******
「私が。美味しい料理を作れると言った……?」
リディアが言ったとしたのはラスティル。様子からして。
――――――。本当に、言ってやがる。
「『ならば試してやろう』とならなかったか?」
「はっ。グレースがそのように。しかし
―――話が、本当に其処で終わりだと。何故分かるッッ!!!
私は、言ったよなラスティルゥッ!!! 他所で、私の話をするなと!!
お前、私がどれだけ悩んでお前を生かそうとッ!
――――――ッ! 違う。今、私がどうすべきかだ。今私は……顔を両手で覆っている。それは良い。……いや、良くないだろうがッ! 何故、即私の事を外で話すような奴らに様子を見せている。立って、背を向ければいい。……背を向けて良い相手か? いや、アホぅだ。今はそーいう心配する時じゃねぇ。 クソがっ! なんでこう、椅子の音は不快なんだッ。
「ダ、ダン? ツッ。あたま……痛。料理の、話しをしたのが不快だったか?」
「ラスティル殿、お考えなのです。待ちなさい」
そうだ。考えないと。……上手い料理が出来るという話になって、何か不味い? ……不味いに、決まってんだろう! 出したのは故郷の料理だ。この国の何処にも無い料理! 貴族に知られるのは面倒の元。何より真田。
真田に話が伝わっただけで、即バレかねんのだラスティルゥ!
彼は貴族になっている。私なら。万全を期そうとすれば。即使者を送り、確かめるついでにどれだけ無理やりであろうが理由を付けて殺す。
平民の一人や二人殺して産まれる悪評程度まったく躊躇う要素にならん。
いや、待て。美食、と言ったな?
「私が、どんな料理を作れると話したのですか? 言った事そのままを教えてください」
「ラスティル殿は技術として拙いのに、素晴らしい美味い料理とだけ。
「他に、見た目等については?」
あっ。これはこいつらに、何を知られたくないか話したも同然。
いや、仕方ない。必要な確認だ。……唾、吐きそうだ。
「いいえ。何も。確かで御座います」
なら……少しは、良い。特別なのが不味いんだ。違うのは駄目だ。例えば、何時か真田が使者として来るかもしれない。その時、彼が私と同じ特別を出したら。
これ見た事あると誰かが言えば最悪。口止めするにしても人が少なければ少ないほどいい。
妄想というくらい少ない可能性でも、考え得る限り面倒を少なくするに越した事は無い。しかしそもそも、
「ラスティル様。何故、私が料理を作れるなどと話したのですか?」
「それは……待ってくれ、頭が痛くて、記憶が。あー……褒めたいと、思ったのだ。トークの二人が、ダンの処遇で迷っているなら、価値のある男だと分かれば。とな。不快だったのなら、謝る。すまぬ」
すまぬ。じゃ、ねえッ! 価値とか! 意味が分からねぇ。価値なんてあったら危険なんだよ!!
ジョルグの若造も似たような真似してやがったが、あの百倍は悪質。それとも私が間違ってんのか? ズレてんのかっ!? だが価値なんてあれば殺されやすいのは間違いねーよ!
「……我が君。もう一つ、御座います。……お伝えしても宜しいでしょうか」
は? まだあんのか!?
「……はい。教えてください」
「アイラが、我が君を全員の主君にした方が良いと。我が君はそう言っており、最後の決定をするのが我が君なのは良い事で、忠告を聞かないと嫌な事が起こる怖い人物であり、凄く頭が良い。ただ、一度剣を向けた以上、人を信頼しない我が君の信頼を得るには、トーク姉妹が子でも産むのはどうか、と」
――――――こ。
……私を、殺すに十二分じゃ、ねぇかぁっ!!
真田の所へ話が行く前に、あの姉妹に殺されるッ! 主君と、最後の決定をさせろは……似てるようで、更に線を飛び越えてる。裏で、決定を任せるのは非常に有能な臣下に頼るような物と、言えなくもない。実質そうなっている所もあるだろう。
だが臣下になれ。しかも子供は乗っ取りだ。い、いや、待て。さっき……。
「私が、トークが私の臣下になるようにと言っている。と、アイラ様が、言ったのですか?」
「え? ぼ、僕……言ったっけ? い、痛ッ……」
言って、ないのか? ならリディアが私を騙し「……あ。ごめん。言った……」
お……お、おちょくってる? ―――全部、私を馬鹿にして遊んでるだけならっ! だが、違う。これは、言ってる。
ぐ、……クッソガァアアッ!
「ほ、他に。リディア様。貴方が何か言っていたり、他に何か。ありますか」
「いいえ。アイラはその後酒を出来るだけ早く飲ませたので寝ております。ラスティルも長く飲んではいましたが、特にどうという事の無い戦場の話に終始しており、我が君の話題は出ておりません」
本当にか? いや、疑う意味はない。聞いた分でしか判断出来ないのだ。リディアが、何か私にとって都合の悪い事を考えていようと、分かる訳もない。
しかし、こいつらぁっ! 軽く、あっさりと。私の命以上が飛びうる真似しやがるッ!
どう対処する。……いや、対処して、その後だ。今後もこいつらに私を見せるのか?
考えていた以上に危険ではないか? それくらいなら全員を処理して、私も此処から消えた方が……。
処理の方法は。―――オウランさんに頼むしかない。可能か? ……可能では、あるだろう。しかし……旅に出たラスティルを殺そうとしたのとは違う。トークに所属している貴族三人を、トークの領地で。……被害を覚悟しないと駄目だな。それに……バレる危険性が高い。
そう、バレる。オウランさんに貴族を殺せるくらい。トークに影響を与えられるほど力がある事が。
ば……馬鹿だ。手段と、目的が逆転しているじゃねーか。狂ってる。
なんでそうなった? 怒りに決まってる。今も、体のあちこちに変調を感じるほどの。不意を打たれ、動揺し、怒り、衝動に流され。知性の欠片も無くなっていやがる。
なんっって情けな……クッソ! 不快に、なるな。怒って、それを見せて事が解決するのは周りが甘やかしてくれる子供だけ。大人なら怒りを見せれば漬け込まれるだけ。漬け込まない奴は余程のお人よしか馬鹿だ。
何か達成させようとするなら、理屈に沿って理性で体を動かし、考えなければ。
良くはない。彼女たちが、私について話したのは完全に都合が悪い。が、どれほど不味いのかはまだ分からない。
まず、どうにかすべきは……当然近い方。トーク。――――――。聞いてみるか。
「リディア様。アイラ様が言った事が、私の意志だと相手が感じている可能性はあるでしょうか。或いは、今すぐに二人の所へ行き誤解を伏して詫びるべきかと思うのですが」
「当然のご心配では御座いますが、それ程真剣には受け取っておりますまい。所詮は酒の席での戯言。言った本人がトークに良い事を。と考えていたのはあからさまでしたし、何よりアイラがどのような人物か向こうは良く知っております。謝罪も向こうの様子がおかしくなれば、で良いと
返答が早すぎる気がする。……いや、疑うな。意味のない疑いだ。
だが酒が入った時の失言で、理解不能なまでに重く罰せられた奴なんて幾らでも……。いや、これは。十年前の話か。時代と文化が違う。あの時点でも平衡の取れてない話だったが。
こっちで領主がどう考えるかは未だ分からない。アイラの様子は……戸惑っている、か。重要な問題だとは欠片も考えなかったのか?
そうだ、そういう奴だ。相手もそれは分かっている。付き合いは私よりも長く臣下だったのだから。
しかし酒の席でも……いや、そう。酒の席。このラスティルでさえ、此処まで酒を飲んだ様子なのは見たことが無い。アイラも。皆がそれだけ飲んだ。そして私にとってトークは利用したいだけで後ろ暗い所があり警戒しなければならんが、二人にとっては親しい戦友。
……何でも話すに決まってるじゃんか。
は? そんな宴に『楽しんできてください』と送り出しておいて、あの程度の口止めで、私にとって都合の悪い事を話さないでくれると。話したからって怒り狂ってたの?
す……筋が。髪の毛一本ほども、通ってない。私の脳みそには。空気が入ってる……。
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