リディアの将来予測1
販売先が決まり、担当者の面通しといった雑事で忙しい。
お金を総酒好き民族な感ある遊牧民に渡したら酔った勢いで乱費されちゃう。
お陰で食料を買うまで私がお金を持たなければならず、仕事から逃げられない。
返ったらお金を持たせて大丈夫な人を選ぶようオウランさんに忠告しないと。
ちなみに私はこっちにきてから酔う程飲んだ事は無い。
酔って口を滑らせたら大変だからね。
やっと仕事を終えた日の夜、招きを受けてリディアの部屋を訪れている。
お願いしていたカルマの将来についての話かな。良いヒントを期待しちゃう。相手十二歳だけど。小学生だけど。
「ダン殿、以前お尋ねになったカルマ殿が中央にて出世する為の条件と手段。そしてその後についての考えは纏まりました」
おお。やはりそうだったか。
「有難うございますリディア様。早速ご教授ください」
はよはよはよ。プリーズギブミーヒント。
「いえ、先にダン殿の意見をお聞きしたい。その後、私の考えを話しましょう」
えっ。
や、やだよ。
この子、将来誰かの元に仕官するんでしょう?
その時乱世ならば他の所に仕官している人は基本的に敵だ。私の思考を披露したくはない。
「私の意見など、リディア様にお披露目出来るような物では……」
あ、あかん。
咄嗟過ぎて言い訳にもなってない。
「ダン殿。私は不思議なのです。貴方が草原族の所に行って茶を売る準備をし、此処に来たとなれば月日的に殆どカルマ殿と交流は無いはず。トーク領にも長く滞在する時間は無い。なのに、貴方はカルマ殿についてこのような心配を抱いた。
私の探求心はとても刺激されている。されど。貴方の考えを教えて頂けるのなら……それも忘れるでしょう」
真っ青。
確かに季節モノであるお茶に予定を押され、調べるのに日数を使えていない。全ての行動が次々次だった。
それが、こんな所で失敗になるなんて!
何か、何か言い訳は……。
「ち、地方の権力者は、中央での出世を願うものだと思っていまして。しかも本人が若いとなれば尚更に」
「おや、よくご存じで。ダン殿は若いのに周りが見える方だ。仰る通りカルマ殿が中央での出世を願うのは珍しくも無い話。地方の者は中央の勝手な言い草に不満を持つものですから」
あってたか……まぁ、普通そうなるよね。
命令を出すのが遠い中央じゃ現場の事を欠片も考えてない内容になるだろうし。
事件はランドで起こってるんじゃない!
国境線で起きているんだ!!
って話だな。
ドラマ自体はイケメンアピール激しくて嫌いだったけど、あの台詞は良かった。
……これで納得してくれませんかリディア先生。
「それはそれとしてダン殿。私はこれでも貴族。貴方の要望に応えて調べもした。その労力に対する報いとして、貴方の意見を聞きたいというのは奇妙でしょうか? 私の好奇心を満たして下さっても良いとは思いませんか?」
―――ごもっとも至極。何の反論も無い。
弁護士なんて目じゃない立場の御方に、知人だからってだけで骨折りをお願いしておいて私は対価を用意出来ない……。
全く奇妙じゃ無いです。無いのは私が頭を上げる為の筋肉です。
……。
駄目だ、諦めよう。
「愚考であり、恥ずかしいのですが―――其処まで言われるのでしたら。
カルマ様が出世する為には中央から引っ張って貰う必要があると思います。しかし中央の貴族で懇意な相手をカルマ様はお持ちでないように感じました。
一方で時の人であるザンザは皇帝の親族となり、庶人から大出世をして正しく中央の貴族です。しかし雲の上に突然上がったのでは知人が居る訳もなく、彼にも頼れる貴族が居ないかもしれません。ですので、ザンザが紐の付いていない番犬を欲しがれば……お互いの必要が重なり、カルマ様が彼に引き立てられる事もあり得るのでは、と」
カンペ……違う、参考元は、大出世を通した後に迂闊行動咎められての暗殺コンボを食らった
それと豊臣秀吉も。彼の出世も急に配下が必要となった織田信長あってこそだった。
これを考えた時には、アレな事を思い出してしまった。
つまり、銀河の英雄な伝説の話だ。
金髪のイケメンが、番犬として国の偉い人から求められたのも紐が付いてないからでは無かったっけ?
銀河の話は何進を参考にしたのだろうか……。
一応述べておくと、情報のソースは無い。
このまま明々後日の事へ逃避出来るなら、二次小説に纏めたいとまで思うがそうも行かない。
深く頷くリディアを見て更に不安がつのろうとも現実と戦わなければ。
「うむ。素晴らしい。大筋に異論はありません。先生、私が同じ考えに辿り着いたのは二日前。私の方が教えを請うべきのように思えてきました」
「ご冗談を……。第一私が考え付いたのは今朝ですから」
「ダン殿。その言い訳は少々酷い。誠意に欠けております」
で、ですよね。
脊髄反射でした。
「ごめんなさい……」
「ええ、以後気をつけた方がよろしい。さて、そのザンザは近衛隊長となっております。このまま行けばケイ帝国全軍の頂点に立つ大将軍となる。しかも彼は意外に軍人として人の上に立つ才能があったようで、現在少しずつその力を広げている。
大将軍ともなればビビアナ・ウェリアさえ逆らえなくなるかもしれません」
凄いなそれは。
肉屋の兄ちゃんだったのに、いきなり一軍のトップになって上手くやれるとか信じられん。
帝王の妻の兄という立場がそれだけ強いのか?
「それはそれは……順風満帆な。しかしそうなると今王宮を牛耳っている十官にとって煙たくなるのでは」
「可能性はあります。現在はザンザも十官の引き立てがあってこそと理解しているため謙虚ですが、己の力の増大を自覚すれば。そしてより上を求めるならばやがて衝突するようになるでしょう」
じゃあ確定じゃん。
アーカーベー商法使う人間なんて上昇志向の塊でしょ。
あの光景は忘れようがない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます