実用的直観 命令は「部屋を片付けろ!」

hitori

第1話 実用的直観 命令「部屋を片付けろ!」


 人並外れた鈍感さが、周りの人には穏やかな性格に見えるようです。私は遠山しずえ。

今日は友だちが遊びにくるというので、部屋の掃除をと意気込んでみた。床に散らかったものを片付けて、掃除機をかけてみたものの、なんかごちゃごちゃしている。

 物が多すぎなのかなぁ。手の届くところに、いつも使う物を並べてるから?めぐに絶対に言われそうなのは、「本が多すぎなんだよ。捨てな。どうせ読まない本ばかりだろ」。雑誌にしか興味のない彼女は、文字ばかり並んだ本は苦手なのだった。

 母の声がした。「めぐちゃん、来たわよ」

 何度も来ているめぐは、母に案内されることもなく、自分で私の部屋に入ってきた。

 「おはよう。やってる、やってる。私が月イチで来ないとこの部屋ゴミ屋敷になりそうだもんね」

 「缶コーヒーとポテチあるよ」

 二人で座り込んで、おしゃべりが始まった。めぐが部屋を見回して一言。

 「あんたさぁ、断捨離しな。余計なもの捨てちゃって、スッキリするんだよ」

 「それができたら苦労しないわよ」

 「本なんてさ、きれいに並べればいいと思ってるでしょ。まぁ、本の虫だから、それは許すとして、他のものため込みすぎじゃない。ほら、停電のためだとか言ってローソク並べたりしてさ、しかも仏壇用のじゃん」

 

 言われてみればそのとおりだった。ローソク、あれば便利だと思って買ってあるし、百均に行けば、アロマ効果のある洒落たローソクを買って一緒に並べている。


 「よし、今日はいらない物を捨てよう。ゴミ袋ある?」

 「あるけど、何を捨てるのよ」

 「断捨離よ。イチイチ考えて捨てるかどうかなんてしてたら、結局捨てないのよ。そんなのはね、直観、ひらめきが大事なの」


 めぐは、母のところに行って、ティッシュ10箱とA4サイズくらいのビニール袋をもらってきた。何するんだろう。ティッシュの5箱は上側の一面を切り取り、残りの5箱は横の狭い面を片側だけ切り取った。中身のティッシュはそれぞれビニール袋の入れた。上を切り取った箱には、狭い横の面にキリで穴を二つ開け、毛糸を通して輪にした。

 めぐは、収納棚に使っているカラーBOXに手を付け始めた。

 「これ、いつも使うやつ?」

 私が、どうかなって考えているとゲキが飛ぶ。

 「考えるな!迷うってことは、ただの飾りじゃん。このあたりの使わないものはテーブルにおいて」


 棚から本以外のものがテーブルに並べられた。空いた棚にめぐは、横を切り取ったティッシュの箱を並べた。上を切り取ったティッシュの箱をテーブルにおき、

 「この中に自分でわかるように分けていれて」

 そう言ってから、本にとりかかった。

 「高さだけ揃えておくから、あとで、順番は入れ替えてね」


 ボールペン、ヘアピン、痛み止め、メモ紙、マスク、セロテープ、小銭入れ、リボン、ボタン、充電コード。もちろんローソクとマッチ。

 それぞれ箱に分けて並べた。すると、めぐはごちゃごちゃとした物が入った箱を棚にある横を切り取ったティッシュ箱に差し込んでいった。

 「わぉ、簡易引き出しだ」

 「まぁ、大きさがキチキチだけど間に合わせにはなるよ」

 どうやったら、こんな片付け方を思いつくのだろう。次にめぐが手にしたのは、ぬいぐるみ。

 「この中で一番のお気に入り以外はこの中ね」

 めぐはゴミ袋を私に持たせた。

 「いやどれもかわいいから」

 「宝物は一つでいいと思うようにしよう。かわいいからって、次々を買ってこない」

 そうなんだよね。服だって、かわいいと思って買って、そのままだったりする。すると、めぐは「二年着ない服はタンスのゴミ!」と宣言する。

 いや、もしかしたら着るかもしれないと言い返しても、「もしかしてはない。それまで太ったりしない保証などないんだから」と私を説き伏せる。


 片付けが終わると、部屋の空気が違ってきた。

 「整理整頓は直観が大事。考えるのは物を買うときだけだよ」


 「まぁいいか」なんて思いながら、かわいい、便利だけで買う私に足りないのはそういうことなのかな。

 めぐにはいつも助けられてる。友だちでよかったと実感する毎日です。



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