面倒見のいい幼馴染

ネオン

今日も今日とて


まだ、予鈴がなるまでには時間がある。

俺がいつも話すクラスメイトは、毎朝遅刻ギリギリに来るから、今は何をするでも無く、1人ぼーっとしている。

これは毎朝変わらないこと。 



だが、今日は、きっとアイツが来るだろうからずっとぼーっとしているわけにはいかないだろう。


「かずくーん!ちょっと来て!」


…やっぱり来た。


かずきは運動着を手に持って席を立ち、声のする方に歩いて行く。


「はいはい、来ましたよ。これでしょ」


そう言って、かずきは運動着を声の主に手渡した。


「そう!これ!ありがとう。今日体育の授業あるの忘れてて。かずくんはやっぱり凄いね!いつも私が用件言う前に全部わかっちゃうんだもん」


「まあ、幼馴染だからな。つうか、ふたばちゃんは、いつも忘れ物しすぎなんだよ。…ほら、そろそろ時間だから教室戻れよ」


「あっ、本当だ、じゃあ後でね〜」


そう言うと、ふたばは自分の教室に戻っていった。

それを見たかずきも自分の席に戻った。


ふたばちゃんは毎回俺がなんかする度に凄いっていうけど、別にそんなことはない。ただ、幼馴染だから出来るだけだ。俺は昔からふたばちゃんのことを見てるから何がしたい、何が欲しい、何をして欲しい、とかわかるだけだ。

しかも、今日のやつは、朝2人で登校している時にふたばちゃんのクラスの人が運動着を持っていたのを見た。それにもかかわらず、ふたばちゃんは持っていなかった。

これを見れば誰にでも、ふたばちゃんは運動着を忘れたってことがわかるだろう。

だから、別に俺が凄いわけではない。


そんなことより、ふたばちゃんの忘れっぽいのどうにかならないかな…。


考えていると、隣の席に人が座る音がした。

もうすぐ先生が来るのか…。

はあ、また退屈な授業が始まる。






4時間目の終了を告げるチャイムがなり、起立、礼をし、先生が教室を出ていった。


疲れた、眠い。…机に突っ伏して寝てしまいたい。…無理だけど。


お昼になり各々好きな場所に散っていった。

確か、隣の席のやつも昼休みは教室にいないはずだ。


周りがざわついている中、俺は机の上にお弁当を取り出して、そのまま机に突っ伏した。



ちょうど意識が完全に沈みかけた頃に、起きて、とふたばちゃんの声が聞こえてきた。


「…ん。おはよぉ…」


眠い。もう少しで寝れそうだったのに。


「起きた?」


「ん。……隣…」


「りょーかい。かずくんは昔からいつも眠そうだよね」


ふたばはかずきの隣の席に座り、お弁当を広げ始めた。


「あっ、そうだ、かずくん。運動着明日返すね」


「わかった」


「何で体育の授業が無いのに運動着持ってるの?」


「学校に置きっぱなしなだけ。特に理由はないよ。」


本当はいつも忘れ物する奴が居るから、だけどな。


「そうなんだ〜。置きっぱなしなおかげで、いつも助かってるよ」



その後はいつも通り他愛のない話をした。

ふたばちゃんはお昼になるとたまに俺のところに来る。理由は聞かない。だって聞かなくてもわかってるから。



ふたばちゃんは昔から人見知りで、おっちょこちょい。俺はいつもそばにいて、見守って、彼女の変化にはいち早く気付くようにして来た。そうしたらいつの間にかふたばちゃんのことは何でもわかるようになった。


今でも、人と話せるようになれるように頑張っている。部活に入って、部活仲間とお昼を食べて、会話をして。


俺のところに来るのは息抜きなんだろうな、きっと。俺といると落ち着くらしい。




俺はふたばちゃんのためになることは何でもする。これは昔から決めていることだ。昔からふたばちゃんのことは放っておけないんだよな。これはきっと幼馴染だからだろう。

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