転生者狩りのジャベリーナ
アズマライト
第1巻:この『精神操作』スキルで、田舎町発の異世界ハーレムを作る!
俺の名前は
少しだけ顔と頭の良いだけが取り柄の、どこにでもいる平凡な高校生だ。
ある日の学校からの帰り道、トラックに轢かれて死んだ。
だけど、なんと目が覚めるとそこは異世界だった!
俺は、中世ヨーロッパのような、異世界に転生したのだ!
しかも、『精神操作』というチートスキルまで神様から貰ったようだ。
これが意味することは何か、そう、快適なハーレム作りが可能だということである!
ありがとう神様、俺の日頃の行いを見ていてくださったんですね。
しかし、今俺がいる場所は田舎も田舎、遠くに、古民家がチラホラと見える程度だ。
果たして、こんな田舎町で人なんているのか?
いたとしても、年寄りだけとかは勘弁してほしい。
それはハーレムではなく、ただの老人クラブである。
いや、きっといるはずだ、手塩にかけて育てられた、美人な町娘とかが!
そういうお約束のはずだ!
俺は
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いた。
一人の女性が、畑作業に精を出していた。
若い。
年は二十台中頃……くらいか?
良いじゃないか! 結婚できるお年頃、そして理想の食べ頃である。
っと、落ち着け俺。最初は普通に接するんだ。
「ねえ! そこの君!」
「はい……どなたでしょうか?」
お! 良かった、日本語は通じるみたいだ。
俺は、相手に警戒心を与えないように、笑顔を作って近づいていく。
ふーん、近くで見ると、なかなか可愛いじゃん? 土で汚れた布みたいな、貧相な格好をしてるのが残念だけど……。
しかし、俺はそこで見逃さなかった。彼女の、服に隠れた本当の姿を。
前屈みになることで寄せられる胸、そして突き出される腰。布越しでも、いや、だからこそ、その形がはっきりと分かる。
これは……間違いなく上玉だ。
そして、記念すべき、ハーレム一号ゲットだ!
「あの……何の御用でしょうか?」
「ああ、ごめんね、忙しい中。実は俺……えーと、ここら一体を支配している領主の息子でさ! 美人な子がいるっていう噂を聞きつけて、はるばるここまでやってきたんだよ」
「! 領主様のご子息であられましたか! このような格好で申し訳ございません、お目汚しを……。それに、美人だなんて、とんでもございません」
俺は密かにほくそ笑む。
お? 思ったよりも上手くいったな。
この日本の、なんて事ない学校の制服が、この世界では高い服に見えたとか?
それとも俺そのものが、金持ちに見えたとか⁉︎
まあ何でも良いや。
この女、俺が高い身分だと思ってか、目の色を変えやがった。
少し褒められただけで、赤面までしてやがる。
なんだ? 能力がなくても、俺のトークスキルで余裕か?
チョロいなー異世界。
本当にラノベで読んだ通りじゃん。
どれ、もう一押ししてやろうかな。
「いやいや、本当に美人だって、普段から色んな女性を見てきてる俺の目に狂いはない! それでさ、ちょっと話したいことがあるんだけど、これから君の家、行ってもいいかな?」
「え……でもまだ仕事が残っていて……それに、両親も出稼ぎに行ってるので、私だけ休む訳には……」
「大丈夫だって、俺、領主の息子だよ? むしろご両親も喜ぶんじゃないかな? それに、ちゃんと埋め合わせの、お礼はするから」
「はい……では、ご案内します」
ええ⁉︎ こんなに上手くいくのかよ!
俺は隠すことなく、彼女の真後ろでガッツポーズをしていた。
終始、嫌な顔を一切されなかったぞ……?
実は俺、この世界ではイケメンなんじゃね?
あーあ、こんなことなら、早くこの世界に来れば良かったなー。
いや、ところで展開早すぎないか⁉︎ こんな可愛い子と? 相手の家で二人きり?
ああどうしよう! まだ心の準備が!
いや、そんな心配をする必要はないか。だって、俺には『精神支配』のスキルがあるんだから。
どんな女でも、思いのままだ。
********************
「ここが私の家です。狭くて汚くて……何のおもてなしもできなくて、申し訳ない限りですが……」
「いや! 良いって良いって! 俺の家も、意外と貧乏だから」
「あれ? ご領主様のご子息では?」
「あ、いや、えっと……生まれ変わる前っていうか、前世の話ね! 前前前世的な?」
「ふふ……変なことをおっしゃいますね」
あー何緊張してんだ俺! しっかりしろよ!
でも、そんな俺のギャグを、この子は笑ってくれた! 優しいなあ……。
それか、ひょっとして俺ってギャグセンスある?
それはさておき……本当に可愛いな、この子。
俺は机を挟んで目の前に座る女に目を向ける。
ぱっちりとした目元に、しゅんと伸びた鼻先。柔らそうに膨らむ、水気と色気たっぷりの唇。現代日本にいても、間違いなく美人の部類に入るだろう。
そして体の方は……やっぱり、俺の目に狂いはなかった……!
普段から力仕事をしているからか? 露わになった手足からも、健康的に引き締まった肉付きが見て取れる。
そして何よりもその胸よ。思わず、拍手をしたくなる。
「あの……そんなに見られると、は、恥ずかしいです……こんな、汚い格好」
「あ、ああ、ごめんね……着替えて来たら?」
「はい、では少し失礼して、向こうの部屋で着替えてきます」
女が、奥の部屋へと消えていく。
見たか? あの顔、完全にメスの顔だぜ?
落ちたな。
この時点でもう勝ち確なのに……スキルまで使ったら、どうなっちゃうんだろう……。
どんな顔で、どんな声で、どんな姿を見せてくれるんだろう……?
ああもう、我慢できない!
「あ! ま、まだ着替える終わってませんので……!」
「いいよ、そのままで」
「……え?」
俺は、覗きなんて野暮な真似はしない。
彼女のいる部屋の扉を開け放し、堂々と入り込む。
そして俺は、下着姿の彼女を、正面から抱きしめた。
首元から、さっきまで畑作業をしていた農家の娘とは思えない、良い匂いが漂ってくる。
俺は体を密着させながら、両手で、女の背中から腰までを満遍なく撫で回す。
柔らかくて、滑らかで、それでいてしなやかな肉質を、感じることができる。
俺の理性は、もう限界だったが、最低限の礼儀として、名前だけは聞いておこう。
「君……名前は?」
「私はジャベリーナ、またの名を『転生者狩り』。以後、お見死に置きを」
「え……」
瞬間、俺の首元に激痛が走った。針が刺さったような、鋭い痛み。
俺はその場に倒れ込み、首元を触る。本当に、針が刺さっていた。それも、かなり深く。
太い血管はは避けられたのか、出血はそれほどない.しかし、針が血で滑って上手く抜けないこと、そして異物感が強く主張していることが……。
「混乱、動揺、焦燥、それらを通り過ぎて、今感じているのは、恐怖、でしょうか? 心の針が、振り切っていますね」
「お……お前ぇ……!」
俺は、目の前の女ーージャベリーナとか言ったか? を、睨みつける。
なんなんだこの女は……『転生者狩り』、とか言っていたな。
俺が転生者だって、最初から分かってたのか⁉︎ それでいて、わざと家に招き入れ、俺を油断させ、誘惑し、そして刺した。
……なんて女だ!
許せない。
「それは違いますよ。あなたが、もう少し理性的に振る舞っていたら、こちらももう少し丁寧に対応したしましたのに」
「黙れ!」
丁寧な対応だって? 見えすいた嘘を、どうせ殺すつもりだったろうに!
だが、お前は間違いを犯した、それは、俺をすぐに殺さなかったことだ。
もう容赦しない。俺のスキル『精神操作』で、今からお前を、俺に従順な性奴隷に変えてやる!
「俺のスキル……『
ビクッと、女の体が大きく跳ねる。
よし、成功だ。
「はは……ははは! どうだ? まずはお前の服を脱がして……」
「知ってます、精神系の能力ですよね、それ。あいにく、私、効かないんですよ」
「……え?」
「優越感に浸っているところ、水を刺すようで申し訳ありませんね、今、代わりの感情に差し替えますから……『
「う……? う、うわああああああああああ!!」
「怖いでしょう? あなたの抱く全ての感情を恐怖に振りました。考えたことも、感じたことも、全て、恐怖となって、あなたに降りかかります」
「う……ひぐっ……怖いよう…お母さん、お父さん、助けて……」
「可哀想に、いま、楽にして差し上げますね」
首に、再び痛みが来る。
それは、恐怖で染まった俺の脳みそに差した、一点の光だった。
遠のく意識の中で、いまさら走馬灯として、現世の記憶が蘇る。
学生時代、変に気取って、異性に避けられて、その態度を俺への好意と曲解して、ますます女子たちに嫌われて。
ある日俺は、クラスで孤立している女子に目をつけて、そして手を出した。
家に押しかけて、無理矢理に体を押さえつけて、そして自分の欲を解放した。
あの時の快感が、今でも忘れられない。
だからこんな能力を得て、だからこんな使い方をしようとして。
そして死ぬ?
なんだ、ただの自業自得じゃないか。
そうだよな、この世界に来たからといって、特別な力を得たからといって、何で、何でもして良いと思っちゃったんだろう?
どんな世界でも、そこには人がいて、一人一人の価値観で、日々動いているのに。
それを俺は蔑ろにして、犯そうとした。
それは、世界を壊すのに等しい行為だ。
いまさら気づいても、遅いというのに。
ああ、もし、次の人生があるのなら、今度は、真っ当な生き方を……。
********************
「やっと死にましたね」
ジャベリーナは、男の首から針を抜いた。
そして、彼の血がついたその先端を、舐めた。
そこに残った男の命を吸い尽くすように、しゃぶるように、一心不乱に舐め始めた。
「んん……ん、はぁ……ああ、美味しい」
そして彼女は、すっかり血のなくなった針を、名残惜しげに眺め、呟く。
「さっさと殺さずに、涙くらい味わえば良かった。それにあれだけの恐怖を与えたのだから、失禁もしていたはず……ああ、勿体ない。もう全部、あの男と一緒に、跡形もなく消えてしまっていますね」
『趣味』に没頭していたジャベリーナは、そこで我に帰り、背後に感じた気配に振り向く。
「あ……」
そこにいたのは、この家の本当の娘だった。
目を見開き、口も半開きのまま声も出せずに突っ立っている。
ジャベリーナはそんな少女に優しく声をかける。
「あら、これは見苦しいところををお見せしてしましましたね。私の『仕事』は終わったので、失礼いたします」
「あの……!」
立ち上がり、さっさと立ち去ろうとするジャベリーナを、まだ十代前半の少女が、恐る恐る呼び止める。
「ジャベリーナさん……ですよね? ありがとうございます! 悪い転生者を……駆除してくれたんですよね⁉︎」
そして、感謝の気持ちを伝えて、頭を深々と下げた。
その大袈裟な態度に多少面食らいながらも、ジャベリーナは笑顔を浮かべ、それに応える。
「ええ、それが私の仕事ですから、当然のことをしたまでですよ。……それにしても、私のことを知っているなんて、物知りですね、お嬢さん」
「それこそ当然です! ジャベリーナさんは、この国の救世主です!」
「そっかぁ、私のことを知っているからには……」
ジャベリーナは針を握りしめ、ツカツカと少女に接近すると、彼女の耳元で囁いた。
「私の後援者、第三王子ドライベール様の応援も、よろしくお願いしますね?」
「は、はい! もちろんです! いつも応援してます!」
「それては、またお会いしましょう」
ジャベリーナはヒラヒラと少女に手を振って、家を後にした。
そしてすぐに全力で駆け出した。
「ああ……愛しのドライベール様ぁ、早く帰って、報告して、『良くやったな』って褒めてもらって、ギュッて抱きしめてもらって、頭ナデナデしてもらって、そして、お礼も貰わなくちゃ……!」
彼女は垂れてくる涎を拭いながら、王子の待つ宮廷へと急いだ。
********************
「良くやったな」
「〜♪」
そこは王城の中の、第三王子トライベールの私室。
床に跪くジャベリーナは、正面の椅子に座った第三王子トライベールの膝の上に頭を乗せ、その赤い髪を丁寧に撫で回されていた。
ジャベリーナは、恍惚とした表情を浮かべ、王子に身を預ける。
「しかし……いつも済まない。本当は私が対処するべきことなのに、君にばかり、危険な仕事を任せてしまって……」
「とんでもございません!」
王子の謝罪に、ジャベリーナは頭を起こし、王子の発言を否定する。
「『転生者狩り』は私に与えられた使命……そして王子の期待に応えることが、私の存在価値です!」
「そっか、頼もしいよ、それなら、存分に頼らせてもらう」
王子はジャベリーナの頭を撫で付け、また膝の上へと戻す。
「『転生者』は危険だ。目的も信念もなく、それでいて圧倒的な力を有する。言わば、天災のような存在だ。そんな存在を野放しにしては、この世界が崩壊しかねない。この国を守るために、君の力が必要だ」
「はい……」
「済まない……私が王位を継いだ暁には、必ず正規の部隊を編成して、組織的に『転生者』狩りを行う。だからそれまでは……」
「承知しております、トライベール様。私はあなたの道具です。私の体も、心も、好きなように、お使いください」
「ああ」
王子は短く返事をすると、ジャベリーナに顔を上げさせ、真剣な眼差しを向ける。
「それでは、次の『転生者』の情報の伝える。今度の相手も十代の男性で……」
「ああ、その前に、トライベール様、お礼を頂戴してもよろしいですか……?」
「……ああ、そうだったね、どうぞ」
「失礼します……」
ジャベリーナは、白い液体の入った小瓶を受け取ると、王子の目の前で飲み始めた。
「ん……ジュル、トライベール様ぁ、とても、とても、美味しいです……」
「そうか、それは良かった。出した甲斐があるよ」
瓶を逆さまにして最後の一滴まで飲み干したジャベリーナ。
そのタイミングで、王子は話の続きをする。
「今度の転生者、名前を
「ええ、造作もありません」
ジャベリーナは立ち上がって姿勢を正し、妖艶な笑みを浮かべて宣言する。
「私は転生者狩りのジャベリーナ。国に害なす悪しき転生者を、地獄の果てまで追い回し、一匹残らず駆逐する者。どうぞ、お任せください」
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