第8話 手平町民大会編⑧~VS陣ライガ④~
「おいおいおいおい、やる気はどないしたんや!!」
「うぅ・・・・・・」
【みゃ~・・・・・・】
脚部スキル・スピードラッシュの効果で攻撃力を上げながら拳を叩き込まれる。
ゲームやアニメとは違う戦いをする陣ライガにどう戦えばいいか解らず、攻撃を小判の盾で受ける事しか出来ない。
どう戦えばいいのかどう動けばいいのか全く思い浮かべられなくて、勝つヴィジョンが見えなくて。
もうこのまま負けるしかないのかな・・・・・・。
「お姉ちゃん!!!!!!」
「え・・・・・・?」
諦めかけていたアタシの耳に、皆と一緒に居るはずのヒバナの声が。
声がした方を見るとコロシアムの近くにヒバナが、その隣に大麓マオが寄り添うように立っていた。
どうして?
「お姉ちゃん!! 負けないで!! 約束したの忘れないで!!」
「ねえ、貴方の可愛い妹さん、必死になって応援してるわ。それを裏切るの? 泣かせてしまうの? 貴方は此処で終わるつもりなの?」
泣くのを堪えながらアタシに声援を送るヒバナ。
穏やかな声だけど厳しい表情でアタシに訴える大麓マオ。
そうだ、アタシがこの大会に出たのは。
『ヒバナの為に頑張るよ』
ヒバナの為だ!!!!!!
「これで仕舞いや!!!!!!」
これで最後とライジンタイガーが激しい雷を纏う拳が向かってくる。
避け、コロシアムの端っこ!? 攻撃を受けながら後ずさってたのか気がつかなかった!!
そうだ!!
「右腕スキル・ロケットパンチ発動!! ムギ!! ロケットパンチを下に、地面に向けて撃って!!」
【みゃ!?】
「いいから撃って!!」
【みゃ、みゃ~!!】
困惑するムギを何とか説得? してロケットパンチを地面に向けて撃たせる。
すると、その反動で体が宙に浮き、ライジンタイガーの攻撃を躱す。
「なっ!?」
「ムギ! 今度は前転して!」
【みゃみゃ~!! みゃっ!!】
飛んでそのままコロシアムに出ないよう、クルリと空中で一回転してコロシアム内へ華麗に・・・・・・、顔を思いっきりぶつけて着地。
まあ、攻撃避けられたからいいか。
『ホノオ選手! ライジンタイガーの攻撃を右腕に装備したスキル・ロケットパンチを使って避けた~!! なんというスキルの使い方!! こんな使い方、見たことねえぜ!!』
「は、はあ!? そんなんあるぅ?」
【こりゃたまげた、ワイもびっくりや!】
「虎徹! ビックリしてる暇ないで!」
【はいはい、攻撃やろ!!】
今度は突進するかのようにライジンタイガーが向かってくる。
それなら!!
「左腕スキル・巨大ロケットパンチ発動!!」
【みゃああああああ!!!!!!】
ムギの左腕からロケットパンチより四倍ぐらいあるパンチグローブが発射される。
このスキルは一度限りだけど、相手に特大ダメージを与えられるスキルだ。これなら、きっと。
「ハッ! 頭部スキル・カウンターバリア発動! 悪いが、そのパンチは届かへんで!!」
ライジンタイガーに星形のバリアがムギの巨大パンチを返す。
これでいい。
「頭部スキル・武者兜マサムネ発動!! 帰ってきた巨大パンチとライジンタイガーの拳を受け止めて!!」
【みゃっ!!】
兜に付いている三日月が光り輝き返ってきた巨大パンチと巨大パンチに隠れるように放ってきたライジンタイガーの拳を受け止める。
よし、今ならイケる!!
「武者兜マサムネの特技発動!! クレッセントカウンターブーメラン!!」
【みゃ~!!】
ライジンタイガーが装備している頭部スキル・カウンターバリアはどんな攻撃でも相手に返す強力なスキル、だけど、一度使ったら五分間は使用できない。
使った後の今なら、しかもこの至近距離なら絶対に当たる!!!!!!
「しまっ、うわああああああ!!!!!!」
【ウッギャアアアアアア!!!!!!】
三日月型のブーメランがライジンタイガーに当たるとビーとHPが0になった音が鳴った。
『なななななんと!? 一時期はどうなる事かと思ったが、勝ったのは溫井ホノオ&ムギ選手!! スキルを見事に使い勝利を掴んだ~!!!!!!』
ジンキョーがアタシの勝利を告げると観客達は歓声を上げる。
――凄い! あの陣ライガを倒した!
――おめでとう!
――凄かったぞ!
――ぬおおおおおお! 勝ちやがった! 許さんぞ! 溫井ホノオ~!!
最後、桝ココミの声が聞こえたような気がするけど気のせいだろう。
フラフラしながらダイブエリアを出るとヒバナがアタシに抱きついてきた。
「うう、お姉ちゃん・・・・・・」
「ごめんね、ヒバナの約束破りそうになったね。あと、応援ありがとう」
ヒバナの頭を撫でるとヒバナは等々泣き出した。
ああ、こんなに不安にさせてしまったのか。姉失格だな。
そういえば・・・・・・。
「ねえ、ヒバナ。隣に居た大麓マオさんは?」
「あれ? 居ない。御礼まだ言ってないのに」
辺りを見渡しても大麓マオと思わしき人物は居なかった。
何処に行ったんだろう、アタシも御礼を言いたかったのにな。
――――――
※大麓マオ視点
「勝てて良かったわ」
ユウマと共に準決勝を控え室のテレビから見ていたけど、あの子、溫井ホノオさんが負けそうになるのを見て居ても立っても居られず、ユウマにトイレに行くと嘘をついて出て行った。
その途中、溫井さんの妹さんに出くわして、これはコロシアムの近くに行ける口実が出来たと妹さんを利用する形になってしまったけれど、彼女に声援を送れて良かった。
「さて、ユウマが心配してるだろうし。戻りますか」
「何が戻りますかだ。態々、嘘をついてまで出て行くとはね」
「ゲッ! ユウマ、いつの間に!?」
振り向いた瞬間、怒り気味のユウマと鉢合わせる。
余りにも遅いから探しに来たのね・・・・・・。
「彼女、溫井ホノオの応援だと正直に言えば良いのに、どうして嘘をついた!」
「ごめんなさい。正直に言えば、貴方も着いていくと言いそうだったから・・・・・・」
「はあ・・・・・・。まあいい、兎に角、俺から嘘をついてまで離れないでくれ、いいね」
「ごめんなさい」
流石に嘘をついて出て行ったのはダメだったみたいね。
今度はちゃんと正直に言わないと。
「本当に離れないでくれ。君は忘れているけど、俺はあの時、生きた心地がしなかった」
「ユウマ?」
「なんでもない、行くよ」
ユウマが何か言っていたけど聞き取れなかったから聞き返しても何でもないというばかりで話してくれない。
機嫌悪くしちゃったみたい、反省しなきゃね。
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