第6話 手平町民大会編⑥~VS陣ライガ②~
「変形するなんて反則じゃないの!?」
「いや、アレがライジンタイガーの固有スキルだ。反則じゃないよ」
観客席から見ているチヨは変形したライジンタイガーは反則だと喚くが、それに対して共に観戦している雪野マフユが冷静に返す。
「ライジンタイガー、そしてフウジンタイガー、この二体は初となる変形するテノヒラロボだ。
変形、獣型になると力とスピードは通常の二倍になる」
「二倍!? やっぱり反則じゃない!!」
「だが、変形できる時間はたったの10分、解除されると大幅にパワーダウンし二度と変形できない」
「つまり、10分経てばホノオは勝てるって事!?」
「それはどうでしょうか・・・・・・」
マフユの説明にチヨはホノオの勝利を確信するが、それをハナは否定する。
「陣兄弟は変形、固有スキルは滅多に使わない。強敵と判断した場合だけ」
「それって・・・・・・、ホノオは強敵って判断されたって事?」
「はい。それに彼、陣ライガが変形を解除した後の事を考えてないと思いません」
「お姉ちゃん、負けちゃうかもしれないの?」
今まで黙っていたヒバナが不安げな声を出しハナを見つめる、その姿にハナはヒバナを不安にさせてしまったのだと解り、安心させるように頭を撫でた。
「ヒバナちゃん、苦しい戦いになるかもしれませんがホノオちゃんは勝ちますよ」
「ホント・・・・・・?」
「はい。ホノオちゃんはスキルを的確に使う戦いを心得ていますし、それに陣ライガがどのように戦うか把握しているように見えます」
「・・・・・・ああ、まるで最初から知っているかのように戦っているね」
「兄さん?」
自分の隣に座る兄・長太郎から、あの時、ホノオが去った後の中庭で会話した時と同じ不穏さを感じ兄を見る。照明のせいで反射し、眼鏡越しの目が見えないせいか、いつもとは違う兄のように見えて、チヨは兄に対して初めて怖いと思った。
「大きな大会の試合はネット動画に上がりますし、それに有名バトラーの戦い方はネットを通して広がりますから事前に調べたのかもしれませんね」
「あ、ああ、そうだね。あは、あはははは」
長太郎の言葉に続けるようにハナが話すと長太郎は取り繕うかのように笑みを浮かべた。
――――――
「オラァッ!!」
「ぐうっ・・・・・・」
陣ライガに火を付けてしまったばかりに強烈な攻撃を受ける羽目になったアタシとムギは固有スキル・小判の盾で攻撃を躱しつつ脚部スキル・スピードローラーを駆使して避ける。
雷を纏う爪に一回でも当たれば麻痺状態になり、一定時間、動けなくなる、それだけは避けないと!! 一回でも麻痺になったら場外に投げ飛ばされる未来しか見えない。
「中々しぶといな~」
【ライガ、あと五分やで】
「わかっとる。一気にいくで!!!!!!」
【了解!! ウリャリャリャリャ!!!!!!】
『ライガ選手!! ここでスピードを上げた~!! 一気に片を付けるつもりか~!?』
ライジンタイガーの猛攻が更に加速すると観客達は一層、盛り上がりを見せ、その歓声がアタシの耳に届く。
もし、ムギがライジンタイガーの猛攻で倒されたら観客達は今以上の歓声を上げるだろう。だけど、それはアタシが許さない!!
「スピードローラーフルパワー解放!! そして頭部スキル、武者兜マサムネ発動!! ムギ!! 小判の盾を締まって、避ける事に専念!!」
【みゃっ!!】
ムギの頭部に三日月がトレードマークの伊達政宗の兜を模した兜が装着されると頭部の三日月が光り輝きながらライジンタイガーの攻撃をガードし、加速力が上がったローラーを使って避ける。
頭部スキル、武者兜マサムネは防御特化型の頭部スキル。防御だけじゃなく、一度だけ蓄積されたダメージ分を三日月型の盾をブーメランとして相手に与える事が出来る、相手の攻撃力に依存するムギの固有スキルと同じようなものだけどアタシはこのスキルを前世から好きで使っていた。
それに伊達政宗の兜、格好良くて好きなのもある。
『おおっと! ホノオ選手も負けじと頭部スキルを発動し、更に脚部スキルをフルパワーにしてライガ選手の猛攻を避ける!!
見事なスキルの連携に観客達も大盛り上がりだ!!』
フッ、アタシのスキル使いに酔いな!!
アタシに向ける観客達の歓声に少し調子に乗りそう、目立ちたくないけどアタシの戦い方で観客達が歓声上げるのは嬉しい。
【10分経過しました。これよりビーストモードを解除します】
気を取り直して、ライジンタイガーのビーストモードが解除され、人型に戻る。
よし!! 攻撃開始だ!!
「ムギ、右腕スキル・ロケットパンチ発動!! 狙って・・・・・・、撃てー!!」
【みゃ~!!】
ビーストモードが解除されたら、一気に弱体化する、攻撃、スピードだけじゃなく防御力も。
卑怯? ううん、これは作戦。さ・く・せ・ん!! 前にも言ったことあるような気がするなこれ。
巨大パンチはライジンタイガー目掛けて飛ぶ。これで・・・・・・。
「ハッ、甘い!! 頭部スキル・カウンターバリア発動!! 倍返しや!!」
ライジンタイガーの頭部に星形の薄い膜が張られる。
これは拙い!!
「ムギ!! 小判の盾を構えて!!」
【みゃ、みゃ~!!】
ムギが小判の盾を構えると同時にライジンタイガーに向けられた巨大パンチがムギに襲いかかる。
ゴオンと鈍い音が響き渡った。
「うう、クラクラする」
【みゃ~・・・・・・】
「あはははは、あんさんみたいに弱体した所を一気に叩こうとする輩は多いんよ。
さて、両腕スキル・達人の拳発動!!」
ライジンタイガーの両腕が光り輝くと格闘家がするような構えをする。
こんな展開、ゲームじゃなかった。
「此処まで楽しませてくれたからには最後まで敬意を持って戦わせてもらうで。覚悟しいや」
陣ライガの笑い声が響く。
アタシはゲームでは有り得なかった展開にどうすればいいか、どう戦えばいいか混乱していた。
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