第9話
重なる的を狙って、黒い的を避けつつ矢を放つ。
雪野マフユと違って一気にポイントは稼ぐのは難しい。
だけど、この方法でやるしかない。
「ムギ、次は右斜め!!」
『みゃっ!!』
よし今度は高得点の赤い的を二枚だ!!
次は・・・・・・。
【10分経過、スピードを上げます】
ゲッ!!
此処に来て更にスピードアップ!? 漸く慣れ始めたのにこれはキツい!!
重なる的を狙うのが難しくなった、これはどうする!?
【強化技・連続矢を解放。この技は複数の矢を連続して放つ事が出来る技です。複数の的を狙うのに役立つでしょう】
此処で強化技というものが解放された、これはロボ競技限定のものかな?
複数の矢を放てる技か、雪野マフユが後半に矢を複数出してたのは、この技を使っていたからか。
だったら、アタシも使わない手はないよね。
「強化技・連続矢を発動!! ムギ、これで複数の矢を連続で放てるようになった」
『みゃっ!』
「だから・・・・・・・・・・・・、思いっきり全方向に放っちゃえ!!!!!!」
『みゃ~!!!!!!』
新たな作戦、その名もヤケクソ。
減点的に当たらないように祈りつつ、矢を放つ、どうか当たりませんように☆
――――――
「な、なんですか!? ヤケクソになってませんか!?」
桝ココミが今のホノオを見て叫ぶ。
複数の矢を全方向に放つ姿は正にヤケクソと言ってもいい姿だ。
(これは非常に残念な事になりそうですね・・・・・・。流石の雪野マフユも少し引いているのでは?)
ココミは呆気にとられているマフユを想像しながら、チラリとマフユを見る。
だが、マフユの姿はココミの想像と違っていた。
「アハハハハ!! 非常に面白い事をするね!
ボクのプライズとホノオさんの操るロボのスピードは差がありすぎる、その差をどう埋めるかと思ったが、力業で補うとは!」
「兄様! 溫井さんは本気でやっているのですよ!」
「解っているよ、解っているからこそ。彼女の行動が素晴らしいと思ったんだ。
普通はこんな事を思いつかない、いや思いついたとしてもやらないよ、笑われてしまうからね。
だけど、彼女はそれをお構いなしに実行した。ボクの周りにこんなタイプは居なかったよ、非常に興味深い、是非、仲を深めたいよ」
マフユがホノオを見つめる目にはハッキリと好意、恋愛的な意味での感情を感じたココミはホノオに嫉妬した。
ココミがジャーナリストのような真似事をしている理由はテノヒラロボが好きというのもあるが、一番の理由はイケメンテノヒラロボバトラーとお近づきになりたいからだ。
勇気ユウマを始め、上位バトラーはイケメンが多い。イケメン好きのココミはジャーナリスト、取材と称して近づけば仲良くなれると考え、今に至る。
だから、実力も有りイケメンの雪野マフユが自分以外の異性に興味を、しかも恋愛感情を抱いているという事実に嫉妬したのだ。
(くう~、これはイケない流れです! アタクシは今、猛烈に溫井ホノオさんに嫉妬しています!!)
ゴーと嫉妬の炎を燃やすココミを見てカイはまた嫉妬してると心の中でぼやいた。
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