第10話
――ブー!!
【タイムアップ。これにて競技・的当ては終了です】
終了を知らせるタイムが鳴り、
アタシはやった、精一杯やった、これで負けたら悔しいけど仕方ない、悔しいけど!!
ダイブエリアから出ると、これより集計結果を発表しますとアナウスンが入り、雪野マフユの得点にアタシとムギの得点が表示される。
怖い、何点なのか、見るのが怖い。
一度、思いっきり目を瞑ってから恐る恐る開けた。
「え・・・・・・?」
雪野マフユが出した得点とアタシ達の得点が一緒だという信じられない光景が広がっていた。
夢かと思って頬を抓ったが普通に痛かった、夢じゃない、これは夢じゃない!!!!!!
奇跡だ! これは奇跡だ!! いや、マジで奇跡? 奇跡起きたのかこれ?
まだ信じられなくてギギギと首を雪野マフユの方へ向けると雪野マフユは満面の笑みを浮かべていた、何故、笑っているの?
「アハハハハ! キミは面白いよ! 非常に面白い事をする! 引き分けだけど、キミの勝ちでいいよ」
「はい!?」
勝ちで良いって・・・・・・、なにそれ? 馬鹿にしてるの!?
引き分けは引き分けだ、それに戦いの内容は全くと言っていいほど差がある。正真正銘、雪野マフユは原作同様に優れたバトラーであることは認めるけど、これは認められない、認めたくない。
「ふざけないで! 勝ちで良いって馬鹿にしてるの!?
見たでしょ、アタシの後半の動き! ヤケクソだって解ってるでしょ? 動きなんて全然だし、貴方の方が優れているのは一目瞭然! それなのに勝ちで良いだって? ふざけるな!!」
言いたい事を全部言うと雪野マフユは呆然としていた、いや、雪野マフユだけじゃない、この場に居るアタシ以外は呆然としていた。
これはヤバいかも? 熱くなりすぎた!!
「・・・・・・兄様、溫井さんの言うとおりです。引き分けたのに勝ちで良いって溫井さんを下に見てると同じです。
叔父様によく言われているじゃありませんか、必死な人を絶対に馬鹿にしてはいけないと」
こんな状況の中、雪野さんが口を開く。
しかも内容はアタシの援護、ありがたい。妙な緊張が解けたような気がする。
「ハナ、お前の言うとおりだな。ボクは愚かな事をしたよ。
ホノオさん、キミを不快にさせてすまなかった」
雪野マフユがアタシに頭を下げて謝罪をする。
コイツ、素直に謝るタイプじゃなかったはず!? 妹の雪野さんに諭されて渋々って感じだったような・・・・・・。
今はそんな事を考えて仕方ないか、とりあえず、雪野マフユの頭を上げさせないと、あと、いつのまにか、名前呼びになっているような気がするんだが、気のせいか?
「コッチも急に怒鳴ってごめんなさい、熱くなりすぎたよね。だから、頭を上げてくれるかな?」
「ホノオさん・・・・・・。ボクは決めました、これからは貴女に誇れるようなバトラーになります、ボクの性格上、時間は掛かるかもしれませんが見守って下さい」
「は、はあ・・・・・・」
コイツ、本当にこういう奴だったけ? まあ、原作の高慢な性格よりマシだと思っておこう。
あと、なんか後ろから凄く睨まれているような気がするじゃないな、桝ココミが睨んでる。そういえば、桝ココミはイケメン大好きキャラだったよね、もしかして、嫉妬されている? 嫉妬されてるような事をしてないと思うんだけど。
「此処は引き分けとしましょう。
ホノオさん、もし、今度はバトルする時があったら全力で貴女を迎えます」
全力でって、それは遠慮したい。貴方、アーケードでも強いものと言いたいけれど此処はアタシも全力で戦いますと応えておいた。
「ええ、ではまた・・・・・・」
――チュッ。
「え?」
雪野マフユはアタシの手を取り、甲にキスを落とすと満足気にこの場を去って行った。
お前、そんなキャラじゃないだろう!!!!!!
本当になに? なんなの!?
「溫井さん、兄様がごめんなさい。びっくりしたよね」
固まるアタシに優しく話しかける雪野さん、貴女は癒やしだよ。
「う、うん、少し驚いたかな。雪野さんのお兄さん、いつも、ああいう事するの?」
「ううん、兄様は普段はそんな事はしないの。むしろ、ああいう事するのもされるのも嫌いな方。周りに囲まれて褒められるのは好きなんだけどね」
「そ、そうなんだ」
やっぱり原作通り、チヤホヤされるのは好きだけどベタベタされるのは嫌いなんだな、それなのにアタシにはしたっていう事はどういう事? さっぱり解らん!! 謎なんですが!?
「あ、あの、溫井さん、突然だけどお願いがあるの・・・・・・。
私の事、名字じゃなくて、下の名前で呼んで欲しいの」
雪野マフユのアタシに対する行動の理由について足りない脳みそで考えていたら雪野さんからお願い、下の名前で呼んで欲しいとお願いされた。
突然のお願いに本当に呼んで良いの!? と固まってしまった。
「兄妹だから同じ名字だし、呼びづらいかなと思って、嫌だったら無理しなくても・・・・・・」
「嫌じゃない!! むしろ、光栄です!!」
「え?」
やべえ、本音が出た。いかん、雪野さん、いや此処はハナちゃんと呼ぶべきだねが不思議そうな顔してアタシを見てくる。
軌道修正、軌道修正。
「全然、嫌じゃない。本当に呼んで良いの?」
「う、うん」
「じゃあ、改めて、宜しくね、ハナちゃん!」
「! よ、宜しくね、溫井さん、ううん、ホノオちゃん!」
ハナちゃんの飛びっきりの笑顔を貰いました~!!
色々あったけど、ハナちゃんの笑顔を見れて良かったな、今日は。
「ぐぬぬぬぬぬ~、羨ましい、くっそ羨ましい!! なんで、アタクシじゃなくて溫井ホノオが雪野マフユに手の甲ですがキスを贈られるんですか!!!!!!」
(嫉妬は醜いよって言えたら、どれだけ楽か・・・・・・)
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