第7話

 フリースキル・武者シリーズを全展開し全てのステータスを上げて、小判の盾で相手の攻撃を受ける。

 実はこの作戦を考えたのはアタシじゃない、江良博士だ。

 二日前、江良博士がこう言った。


『君は初心者だ、それに僕は彼の戦い方を知っている。作戦を立てて挑もうじゃないか』


 その提案にアタシは乗った。

 卑怯? いや、作戦だよ。さ・く・せ・ん!!

 ただ作戦を立てただけ、あとはそれを実行できるよう雪野さんの鬼トレーニングを受け、スキルは寧々子さんが買ってくれました♪ 汚い? 勝てばよかろうなのだ!!

 そして、今に至る。


 江良博士から聞いたとおり、激しい攻撃に素早い動き、雪野さんのトレーニングを受けてなかったら一撃で終わってたね。

 横に円を描くように移動しつつ盾で攻撃を受けながら様子を見る。


【小判の盾・蓄積ダメージ50%】


 画面に小判の盾の蓄積ダメージが表示される。

 あと残り50%。

 これだけ暴力的な攻撃を受けても半分しか貯まらないのか、結構、堅いのね。

 

「ああああああ!! 早くくたばれよ!! 寧々子さんとデート出来ねえだろうが!! こうなったら、固有スキル発動!! ティラノマシンガン!!」


 メカティラノの背中に取り付けてある巨大銃がアタシ達に向けられると銃口からティラノの頭部をモチーフにした銃弾――ティラノ弾が十発発射された。

 ティラノ弾は鋭い牙を覗かせて襲いかかる、確か噛みつかれたら爆発して大ダメージを負わす仕組みだったはず。

 これを受ければ!!


「ムギ! この攻撃を盾で受けるよ!!」


【みゃっ!!】


 小判の盾でティラノ弾を受ける。


 一発。


 二発。


 三発。


 四発。


 五発。


 六発。


 七発。


 八発。


 九発。


 十発。



【小判の盾・蓄積ダメージ100%達成。これよりに移行します】



 小判の盾が光り輝く。

 とうとうこの時がキター!!!!!!

 メカティラノは固有スキル発動のせいで動きが鈍ってる、今がチャンス!!


「固有スキル発動!! 猫の倍返し!!」


【みゃ~!!!!!!】


 ムギがメカティラノに向けて光り輝く小判の盾を思いっきり投げると、綺麗な放射線状を描いてメカティラノに当たる。


 ネコノコバンの固有スキル・小判の盾こと猫の倍返しは小判の盾が受けたダメージを二倍にして返す技なのだ。

 小判の盾の蓄積ダメージが100%になれば使える技で相手の攻撃力に依存するから使いにくいスキルと言われている。


 ゴインッと鈍い音がするとメカティラノは大きくよろめきながら倒れるとブー!! とメカティラノのライフポイントが0になった事を知らせる音が鳴った。


『な、なななな、なんと、防戦一方だったムギの大勝利!! これはお見事!! 素晴らしい!! エクセレント!! ビューティホー!!』


――ワアァァァァァァ!!


 観客席から歓声が聞こえる。

 こんなに沢山の人が見てたの!?

 え~、マジかよ。

 中学校に行ったら質問攻めされそうなんですが・・・・・・。


「お姉ちゃん! おめでとう!!」


「にゃ~!! ホノオちゃん!! おめでとうにゃ!! 勝って嬉しいにゃ!!」


「うん、良い戦いだったよ。さて、この試合、勝者は・・・・・・ 「まだだ!! まだ終わらねえ!!」 なに?」


 ヤンキーこと阿久マサオが叫ぶ。

 ライフが0になって動けないメカティラノがゆらりと起き上がった。

 なんで? ライフが0になったら操作できないようになってるのにどうして?


「ライフが0になったのに動いてるだと!? 君、もしかして、メカティラノに違法改造したね!!」


「ああ、そうだよ!! 勝つためなら何でもするのが俺の主義なんでな!! 違法でも何でもするんだよ!!」


 嘘でしょ!?

 こんなに早くから違法改造? 違法改造は確か中盤辺り、悪の組織登場辺りからだったはず!!

 どうして? どうしてなの? 展開早すぎない!?


「今度こそスクラップにするまで暴れてやる!! そして寧々子さんとデートだ!!」


「悪いがこれ以上は危険だ、強制退場させてもらうよ。シンクロダイブ強制解除!!」


 江良博士によってシンクロダイブを強制解除され、ヤンキーは側に控えていた警備員に捕まっていた。

 捕まりながらも寧々子さん、寧々子さんと叫び続けるヤンキーに恐怖を感じたのは言うまでもない。


 こうしてアタシの初バトルは終わったのだった。

 

 


 

 

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