第3話

 妹の悲鳴を聞いて慌てて外に出る。


 アタシの目に飛び込んできたのはヤンキーな男に連れて行かれそうになっている寧々子さんとそれを阻止しようとする妹・ヒバナだった。


「お客様!? アタイは仕事中なのですにゃ!? 手を離してくれませんかにゃ!? それにアタイは何度も言ってますがしつこい人は嫌いですのにゃ!!」


「うるせぇ!! 俺とデートしろって言ってるんだ!! 黙ってついてこい!!」


「寧々子さん、嫌がってるから放して!!」


「あ゛っ!! 黙ってろクソガキ!!」


「きゃあっ!!」


「ヒバナ!!!!!!」


 ヤンキーがヒバナを容赦なく蹴るのを見てずっと黙って様子を見ている訳には行かない。

 アタシは蹴られて転んだヒバナに駆け寄った。


「お姉ちゃん・・・・・・」


「ヒバナ、怖かったね。大丈夫? 怪我は?」


「だ、大丈夫」


 そう言って涙を堪えるヒバナを抱きしめる。

 本当は凄く怖かったんだね、宥めるようにヒバナの背中を優しく撫でると嗚咽が聞こえた。


「あにゃた!! 小さい子を蹴るにゃんて!! 泣かせるなんて最低ですにゃ!! ますます嫌いになりましたにゃ!! どうかお引き取りしてくださいにゃ!!」


「邪魔した方が悪いんだよ!! 寧々子さん!! 俺はアンタに本気で惚れてるんだ!! だからデートしてくれよ!! 一回だけで良いんだ!!」


「やれやれ、騒がしいと思ったら、また君か・・・・・・」


 寧々子さんとヤンキーの話し合い? ヒートアップする中、奥の方から眼鏡をかけ白衣を着た初老の男性がやってきた。

 この人は確か・・・・・・。


「所長!!」


 そうだ!! ロボセンターの所長、江良イゾウ博士!!

 この人もテノヒラロボのレギュラーで何かと突っ走る主人公にアドバイスを送る人物というポジションだ、なお、アーケードゲームには練習相手として出てきます。

 さすがのヤンキーも江良イゾウ博士の登場にたじろんでる。


「言ったはずだよね、寧々子くんに何度もしつこく言い寄り他の利用者に対して攻撃的な行動を取る君は入店拒否だと。どうして此処に居るんだね?」


「簡単な事だよ、裏口から来たんだ」


 自慢げにニヤリと笑うヤンキー。

 いや、それ自慢するところじゃない。不法侵入では?

 博士もヤンキーの発言に呆れて溜息を吐いてる、そりゅあ、吐きたくなるよ。


「やれやれ、裏口のセキュリティーに関しては此方のミスだが君がやった事は不法侵入だよ。君には出て行ってもらう、それと親御さんにこの件は話させてもらうよ」


「まっ、待ってくれよ!! 俺はただ寧々子さんとデートしたいだけなんだ!! なあ、頼むよ。一回だけで良いからデートしてくれ。一回、一回だけで良いんだ!!」


 必死に懇願するヤンキーに寧々子さんの顔は引きつっていく、ドン引きしているのがよく解る。

 そりゃあ、惚れた人と一回はデートしたいよ。だけど、チャンスがあれば出来るかもしれないけど相手にその気がなければ無理って話だし、それ以前にコイツは寧々子さんにしつこく言い寄ってるようだし不可能でしょ。

 それに一回だけって言ってるけど後からまたしつこくもう一回とか言ってくるタイプだと思う。


「そんにゃにアタイとデートしたいならテノヒラロボで良いところ見せたら考えてもいいにゃ」


 顔を引きつらせながら寧々子さんの言葉にヤンキーは目を輝かせる。

 なんだろう、とても嫌な予感がする。


「それはつまり俺がバトルで寧々子さんに良いところを見せればって事ですか?」


「まあ、そういう意味ににゃるかな・・・・・・?」


「よし!! そこのお前!! 俺とバトルしろ!!」


「はい?」


 嫌な予感が当たった‼️ 大当たりだよ‼️


「はあ!? この子は駄目ですにゃ!! この子は、「さっきロボと登録したばかりの初心者なんだろ?」


 ヤンキーが寧々子さんを遮って言い放った言葉に呆然とする。

 コイツ、アタシが初心者だと解ってバトルを挑みやがったな。


「そ、それだったら、アタイが用意した、「まあ、でも初心者だから二日ぐらいは時間をやるかな、寧々子さん、俺がコイツをギッタンギッタンのボロボロにした所を見せてやるよ。それじゃあな!!」


 ヤンキーはまた寧々子さんの話を遮って高笑いしながら去って行った。

 寧々子さんとデート出来るなら何でもしますよってか?

 というか、初心者であるアタシをボロボロにした所なんて格好良いか? かっこよくないだろ!! バカじゃねえのアイツ? いやバカだからそんな事を考えられるんだな。

 

「ホノオちゃん、ごめんなさいですにゃ」


 心の中でヤンキーを罵ってると寧々子さんが謝ってくる。

 寧々子さんが謝ることはないのに。


「別に寧々子さんのせいじゃありません。悪いのはあのヤンキーですよ」


「お姉ちゃんの言うとおりだよ! 寧々子さんは悪くない!」


「でも、あのバカの事にゃ、あにゃたじゃないと絶対に戦わないし・・・・・・、博士、どうしましょう」


「う~む、初心者である君を巻き込んだのは此方の責任でもある。よし、どうだね、君に二日間みっちりと特別トレーニングをしないかい? 勿論、コーチ付きでね」


「え? 特別トレーニング? コーチ?」


「博士、どうしましたか? 遅いので心配で・・・・・・」


「ああ、君、良いところに!!」


 博士と同じ場所からやってきた人物にアタシは目を丸くする。


「良いところ?」


「君にこの子のコーチをしてもらいたい!!」


 美しい銀色の髪にふんわりツインテール、どこか神秘的な紅い目。


 テノヒラロボのヒロイン兼ライバルキャラの雪野ハナが其処に居た。

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