β版

にわか

第1話 神の部屋


見渡す限りの白。


前を見ても、上を向いても、何処に目を向けても白・白・白。


まるでゲーム制作ツールの初期画面のような世界の中央には、白い髭をヘソの辺りまで伸ばした翁が座っていた。


「神様!今お時間よろしいですか?」


一体何処から現れたのか。

人間によく似ているが、デフォルメされたキャラクターのように2頭身の生物が、慌てた様子で翁の元へやってきた。


比較対象がなくてよく判らなかったが、2頭身の生物と比べると、翁は10倍以上の大きさであった。

並べてみると、犬と象くらいのサイズ感だ。


「どうしたそんなに慌てて。トイレにでも無かったのか?」

「神様!それどころではありません!」


アメリカンジョークならぬ神ジョークをかます翁だったが、期待していたような反応はなく、やや不満そうに耳を傾ける。


「『地球』のリリース日が迫っています!あとたったの108年しかありません。そろそろご決断を!!」

「もうそんな時期か。資料はあるか?」

「はい」


2頭身の生物が返事をするのと同時に、翁の前に二つの球体が出現した。


「どっちがどっちじゃったっけ?」

「神様から見て左が『ちきゅう』。右が『チキュウ』です」

「そうか。では、『チキュウ』の方から報告を頼む」

「かしこまりました」


仕組みは判らないが、2頭身の生物がまんまるの手で指を鳴らすと、限りなく人間に近い生物が現れた。

格好はサラリーマンのようなスーツ姿だ。


「主が派遣された者か?」

「はい。左様でございます」

「では頼む」

「かしこまりました」


人間にしか見えないその生物は、スーツの内ポケットから封筒を抜き取り、中に入っていた紙を朗読し始めた。

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