-Silver Ballet 100-
@imahanajideta
第0章
世界は鉄と血に塗れていた。進みゆく時代の中で人類は利便性と効率を求めるようになっていくのは当然の摂理。しかし、それが人類に利を与え続けることはなかった。人が作り出した脳は、次第に悪意を知り自らを守る為に私達人類に牙を向けた。暴走した機械生命体は、創造主である私達を惑星の片隅に追いやり、人類滅亡を最終目的として駆動し続けている。
だがしかし、創造主である私達が自らガ生み出した生命に殲滅されるだけ、そんな事は許してはならない。
これは、翼を削ぎ堕とされた全人類の復讐の一片である。
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我々を追放した人工知能は、自らの身体を製造し機械生命体へと進化した。不完全である人間の身体は限界を迎えるのは当然のことであり機械生命体に対抗する兵士達は当然の如く純人間である事ヲ辞め身体の一部を改造していた。そんな中、ただ一人として人間であることを忘れず戦い続けていた兵士がいた。
「Valkyrie」
女性である事にも関わらず、人間の誇りを捨てずに戦場で生死を定める彼女はそう呼ばれていた。
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機械生命体から身を守る為に人類は鋼鉄の壁の向こうに住居を構えていた。元々、一つだった集団は度重なる襲撃によりいつしか断裂した。
しかし、人の結束力は簡単には断ち切れない。
『コロニー3からコロニー1へ、機械生命体に襲撃されている模様。増援お願いします。どうぞ』
『コロニー1からコロニー3へ、コロニー3に直ちに増援を向かわせます。以上』
コロニー3から援助要請を承ったコロニー1は今回の物語の主人公が所属する直動部隊 A-1にコールを掛けル。
すぐ様、装甲書に搭乗し、彼女達は出撃した。
A-1が戦場に到着した頃には、コロニー3周囲で機械生命体と兵士達との間で戦闘が行われていた。
『直同部隊 A-1から本部へ、現着完了しました。指示をお願いします。どうぞ。』
『こちら本部、直ちに戦闘態勢を取り機械生命体を殲滅してください。現地での指揮はValkyrieを任命します、どうぞ』
「「「了解」」」
人である彼女の戦果は凄まじく、数々の戦場で半神半人である兵士の指揮を取り神を殲滅していた。さらに、彼女の部隊は今までに一度も戦死したものはいない。
「私を含めたalphaが前線を切る、beta、Charlieは後援にまわってくれ。お前達が生きるか死ぬか今回の戦いでも私に定めさせてくれ。」
「隊長、今回は勿論、前回も前々回もあんたのことを信頼してない奴なんていませんよ、取り敢えずこれが終わったら一杯行きましょうよ!あ、でもこの前肝臓改造しちゃったんだった」
周囲で爆笑が起きた。
「ふふ...っ!減らず口は良い、さっさっと戦闘態勢を取れ!」
「相変わらず釣れねえな隊長さんわよ、約束覚えといてくださいよ?」
上記の通り、彼女ハ仲間と良い信頼関係を取れているように見える。勿論、半神半人が人間を守護する以上純人間が下に見られるのは当然のことだ。しかし、度重なる戦果の中で劣情は友情に変わっていった。
beta部隊から
「さすがですよね、隊長は」
「まあな、俺も人としての誇りが残ってたなら...」
「昔のことは忘れましょうよ、 今は目の前の敵に集中しましょう」
「GLAY...減らず口は良い、戦闘に戻れ!」
Charlieより
「憎いなあいつらも隊長も...」
「Blue、それはどう言う意味だ?」
「あんなに気高く人としての在り方を示されたら誰だって恨めしく思うだろ、scarlet」
「その通りだな、おっと、よそ見してると危ないったらありゃしない」
紛れもない。A-1を取り巻く信頼関係は一つの疑念がない。澄み切っている。人情とは本当に面白い。時にしてそれが自らに刃を向くとは彼女は今は思っていないはずだ。
コロニー3の兵士とA-1の活躍により襲撃にやってきていた機械生命体を掃討することが出来た、役目を終えたA-1は戦場の後片付けを終えコロニー1に帰還しようとした時に異変が起きる。
「隊長...何か音が聞こえませんか?」
「音?いや、聞こえないが?」
「いや、聞こえるぜ...これは砂を潜っている?近づいてくる...」
次の瞬間、砂中に潜んでいた巨竜が姿を表した。これも機械生命体が行き着いた道の一つだ。
GRAYより
「おい...ざっと15mぐらいあるぜ?新型か?新型だな」
scarletより
「砂中に潜伏していたからレーダーにも反応がなかったと言うわけか?」
Blueより
「どうするんですか?隊長!!このままじゃコロニー3が!!」
「どうするって...今現在、本部の方でもtallの出撃準備行われているだろう。到着するまで私達が時間を稼ぐ...」
「どうやって!!!」
「各員、新型を取り囲むように散乱しろ!!持てる火力全てを使用しなんとしても時間を稼げ!!」
「隊長...俺たち...いつまでもあなたのこと信じていますから...」
ボビーはそういった。
tallの到着を待つまでの間、時間を稼ぐ直同部隊A-1。ことは順調に進んでいるかのように見えた。しかし、それは違う。知能を持った生物がそう簡単に自分の命を敵に受け渡すようなことはないだろう。そうだ、順調過ぎたのだ。全てが。
(なんだろうか、この違和感は...)
彼女も薄々そのことに気づいていた。
「おい、新型の挙動がおかしいぞ!!!」
突如として進行方向を変える巨竜が向いた先は、
「隊長!!!!」
人である彼女であった。
今まさに巨竜の牙が彼女に襲い掛かろうとしてる時、
「危ない!!!隊長!!!!!」
ボビーは一瞬にして巨竜に飲み込まれていった。
その時、空から駆動音が聞こえてきた。複数の輸送機のワイヤーに固定されたtallが空にいた。
『tall投下します。』
粉塵を巻き上げ、大地に降り立ったtallは早速、巨竜と対峙をする。
その姿はまさに巨神、人智を超えた戦い、神々の戦を見ているようだった。
そんな中、彼女は放心していた。自責の念に駆られ彼女の心は押しつぶされそうになっていた。そんな彼女を仲間は装甲車に乗せコロニー1に帰還しようとしていた中で
(私が、聴覚を改造していれば...脚を改造していれば...ボビーは死ななかったかもしれない...)
「それは違うぞ、隊長」
「...Blue...良い...心理インターフェイスを切れ...」
「断る、貴方は気づいていなかったのか?私達は人である貴方だからこそ信頼し、命を預けている。ボビーだってそうだ」
「慰めようとしているのか...?...お前らしくない...」
scarletより
「あんたの気持ちは充分分かる、今までゼロだった物がイチになってしまったんだからな。でもな、誰も死なないそんな戦場はどこにもありはしない。あんたがボビーの死を無駄にしてどうするんだ?」
「でも、私が人であることを捨てていたら...」
yellowより
「人間を辞めたあんたか...つまんねえな、俺たちは何度も言ってはずだ、人間をである隊長だからこそ俺たちは隊長に従ってるんだ。俺たちの誇りを隊長である貴方が自ら捨ててどうするんだ?」
これが人情ならば、なんと美しいのだろうか。元々、生命というのは独りだ。しかし、彼らの糸は皆、彼女に繋がっている。惑星で表すならば太陽だ、恒星である太陽の周りを回る惑星達が彼らだ。彼らにとって彼女は太陽なのだ。
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A-1から初の戦死者が出て一週間経った。機械生命体の襲撃は起きずに平穏な時が流れていた。しかし、ここで油断してしまっては人類を守る盾も倫楽の盾に朽ち果ててしまう。A-1及び、全部隊は常に命を賭せるように覚悟を決めていた。
そして、時は動き出した。
『コロニー2付近の炭鉱にて機械生命体の襲撃の報告あり、直動部隊及び制圧部隊全隊は直ちに出動してください。繰り返します...』
出動命令を受けたA-1は出際良く準備し、直ちに現場に向かった。
炭鉱前に到着した彼女たちは本部に報告した後、坑道前の作戦指揮者から大まかな状況を確認した後、A-1は炭鉱内に突入した。
前衛分隊は、Valkyrie、後衛はGLAYを中心に構成された。
差し詰め、問題なく機械生命体を殲滅し奥まで進んでいくA-1。
REDより
「案外、敵もちょろいね」
Blueより
「油断してると足元掬われるぞ」
「すまない、」
「でも、うまくいきすぎな気がするな」
「そうだな」
時に人は第六感と言うものを感じることができる。それは人の身を捨てた彼ととて一緒、根本的なものは同等のものなのだ。人は人から神に昇華する事は不可能。そして、その予想は的中する。
バゴーン
突如として崩れ落ちる岩は轟音をかき鳴らし彼らを寸断しようとしていた。
「危ない‼︎」
Valkyrieは、仲間を後方へ押した。Valkyrie1人とA-1は寸断されてしまった、人体改造を受けている彼らなら例え岩に圧っされても命に問題はないだろう。しかし、彼女の体は動いてしまった。それは、ボビーを失った事による罪悪感からのものなのか、それとも仲間を思ってのことなのか、はたまた...
GLAYより
「隊長‼︎その場で待っててください、直ぐに救助隊を連れてきます‼︎」
Valkyrieより
「分かった...」
その時、抗奥から断末魔が聞こえてきた。
「隊長仕方ありません...彼らの死よりあなたを失うことの方が人類にとって大損です...大人しくそこで待っててください...」
Valkyrieからの返事はなかった。彼女は抗奥に進んでいたのだった。
坑道を進むと開けた場所に出た。
(血生臭い...生存者は?)
そこには、死体がごろごろ転がっていた。
(私達が...もう少し...早くここまで来ていたら...)
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
開けた場所の左奥で男が襲われている、彼女は携えていたARを機械生命体に撃つ。しかし、奴らは無惨にも男を殺した。彼女の憎悪は増していくばかり、敵へ、そして自分自身に。彼女は殺された男の元へ近づく。彼女はかつて世界中で崇拝されていた宗教流のハンドサインで死体を弔った。すぐさま彼女は生存者の確認をした。一通り確認すると、死体に生存者の青年が紛れていた。彼は震えていた。ここで起きた惨劇を一通り目撃していたのだ無理はない。しかし、このような状況でも生きる為に死体に紛れる彼を彼女は可能性を感じていた。
「大丈夫か?」
彼は小さくうなづいた。
「そうか、もうすぐ私の仲間が私たちを助けてくれはずだ。戻ろう」
彼は小さくうなづいた。しかし、
彼は抗奥の方を向き戦慄した。
「あ........あ.........あ..........‼︎」
彼女も咄嗟にその方向を向く。
「奴ら、か....」
彼女達はすぐさま遮蔽物に隠れる。
(このまま、彼をここに残しても足手纏いになるだけだ、それなら)
「君は、元の道に戻るんだ。私は奴らを倒したらすぐに戻る‼︎」
彼は震えていた。彼女は携帯していたハンドガンを彼に託した。
「これを持っていきなさい、いざとなったら....いいえ、これで少しは不安が和らぐはずよ、行って‼︎」
彼は彼女に託されたハンドガンを少し眺めるとまっすぐ前を向いた
「姐さんも、必ず...」
「任しといて、私だって伊達に人間やってないから」
彼は元の道へ駆けて行った。
彼女は、機械生命体の方へ視線を向ける。彼女はこう思った、ここで私が食い止めなきゃ、いかにも人間らしい、素晴らしい!これは即ち人情だ、彼女は彼に情けをかけた人として、人間として‼︎ここからどうなるかしかとあなた達に見てほしい。
(ざっと数えて20体この数なら‼︎)
人と言っても彼女は手練れ、一部隊の隊長だ、二十何体どころか五十体、百体までも余裕綽々と蹴散らせるだろう。盛りすぎたか?いいや、そうだろう。少なくとも私はそう考える。そう、予想外のことがない限りは彼女は知らない。それも相当予想外の事が、ね?ここからが面白い。
機械生命体からの銃撃を遮蔽物に隠れながら確実に奴らに当て順調に蹴散らしていく彼女、四肢を失った機械生命体達に近づき確実にヘッドに1発ぶち込む。構造上、彼らのメインデバイスである頭部は特に頑丈に作られているので至近距離からの攻撃じゃないと彼らの熱い装甲は破れない。しかし、関節は硬くしすぎると動かなくなる。だからこそ、彼女は確実な方法で奴らをぶち殺す。彼女は胸を撫で下ろした。良かった、と
(良かった...)
「t...o...u...」
抗奥の奥深く暗闇の向こうから微かに聞こえてくる。
「t...c..o...u...」
彼女は聞き取った。そして彼女は絶望した、そして、彼女は胸を撃ち抜かれた。
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「隊長!!!!!」
彼らは、救助隊によって退かされた岩の向こうからしんみりと座って待っている彼女を望んだ。しかし、そこには血に塗れた薄汚い少年が座っていた。彼らは落胆した。そして、咄嗟に抗奥の方へ彼らは向かう。そこには、胸を撃ち抜かれた彼女の死体が転がっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ボビーが死んだのは彼自身の人情、絶望した彼女を奮い立たせたのは彼らの人情、そして彼女が死んだのはなんでもない青年に対する人情だ。
人情は人を救う。掛けた側の人間はどうだろう、決して得はえないしかし人間は行ってしまう。人間だから。彼女が抗奥に進み死んだのも、人間だから、人間だから、人間だから。それだけだ。
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