第3話 ケモミミイケメンが!!
「お嬢さん。自分はここまでですが、よろしいですか?」
「門兵さん。とても助かりました。実はとても足が痛かったのです。」
いや、私は体力がある方だと思っていたのだが、流石に子供が南地区の家から西地区のギルドに行って、最後に坂道の第二層を登るのはきつかった。本当は南地区から西地区まで列車が走っているのだが、運賃をケチって歩いたのだ。はぁ。ケチらずに列車に乗っておけば良かった。
「いいえ。お役に立つのが我々の仕事ですので、あと、子供には酷いことはしないと思いますが、生きて戻って来てくださいね。」
ん?なんだ?最後の不穏な言葉は。一体誰がここに住んでいると言うのだ。
重厚な両開きの玄関扉の真ん中にドアノッカーが付いているが、背伸びしても届かない。こんなところで、子供である弊害が!
仕方がなく右手で拳を作って、扉をノックする。これで聞こえるのか?誰も出てこない。出直すかと諦めかけたとき、内側から扉が開いた。小さい音だったが聞こえたようだ。
「子供?」
出てきた人物は赤い髪に三角の耳が生えたイケメンだった。おっふ。ケモミミイケメン耐性がない私には強力な一撃だった。し、心臓が!しかし、私はここに来た用件を言わなければならない。
「あの、冒険者ギルドのサブマスターからここを紹介されたのですが、えーっと、問題児さん?にサブマスターからの伝言と私の依頼を受けてもらえるかお聞きしたいのですが・・・。」
サブマスター!依頼する人の名前を教えておけよ。なんて言えばいいのかわからないじゃないか!問題児じゃ通じないだろ!
「ああ、シェリーに用があるのか。」
通じた!
「入ってくるといい。」
イケメンに手招きされ、屋敷の中に入ることができた。しかし、この玄関ホールだけでも私の家がすっぽり入ると思う。世の中というのは理不尽だな。庶民はセコセコ働いて、小さな家を住処として暮らしているのに、金持ちは昼間っから家にいてもこんな大きな家に住めるんだ。
通された部屋は・・・マジで自分が場違いだと思い知らされた。なんだ?ここは。もう、目が潰れそうだ。美人の女性がイケメンに囲まれた光景。もう、お腹がいっぱいです。帰っていいですかね。
いや、待て。私よここで諦めてどうする。気合を入れろ。美人が何だ。イケメンが何だ。こちらは一生あの硬いパンを食べ続けなければならないかどうかという選択肢を迫られているのだ。
「誰?」
美人の黒髪でピンクの目をした女性が聞いてきた。
「リラと申します。私の依頼をこちらなら受けてもらえると冒険者ギルドのサブマスターからお聞きしまして、こちらにお伺いしました。突然の訪問でしたが、このように対応していただきましてありがとうございます。」
少々子供らしくないが、多分貴族か何かなんだろう。権力を敵に回すのは得策ではない。
私のその言葉に女性は立ち上がり、こちらにやってきた。え?なに?怒らせることは言っていないはず。
女性は私の前で立ち止まり、私の目線に合わせる様にしゃがんだ。そして、小声で
「貴女は何を定められていますか?」
???
定められている?
「まだ、知らない?」
なにを?首を傾げて女性を見る。
「いいでしょう。ご用件を聞きましょう。こちらへどうぞ。」
女性が座っていた向かい側のソファを勧められた。しかし、私の心臓が持つかどうか。私の目の前には美人の女性とイケメンが5人。ああ、神というものがいるのなら、私にイケメン耐性を!
「ちっ!」
何故か。女性から舌打ちをされた。私、座っているだけのはず。何も悪くないはず。
「彼女と二人で話したいので、席を外して下さい。」
女性がそう言うと、部屋には私と女性のみになったのだが、助かった。マジで私の心臓が持つかと心配をした。
「それで、用件とは?」
「まずはサブマスターからの伝言です。『いい加減に仕事が溜まっているからギルドに来い』と言われました。」
そう言えば、問題児にと言われたが、この人でいいのだろうか。
「ニールさんですか。わかりました。それで、貴女の依頼というのはなんですか?」
「ふかふかのパンの情報が欲しいです。私はパン屋の娘なのですが、あの硬いパンが許せないのです。」
そう女性に言うと「ああ」と言って立ち上がって部屋を出ていってしまった。こんな広い部屋で一人にしないで欲しい。どうすればいいのか、ソワソワしてしまう。
少し待つと女性は戻ってきて、ローテーブルの上に紅茶と見覚えのあるロールパンが!そう、ふかふかのロールパン。思わず手に取って、そのまま
あるじゃないか!普通のパン!毎日毎日あんな硬いパンを食べていたが、お貴族様は柔らかいパンを食べているじゃないか!
これはあれか?庶民は硬いパンでいいってやつか?
『柔らかいパンがなければ硬いパンをお食べ!オーホホホ』
ってやつか?
とある神:イケメン耐性って何?それって僕にお願いすること?
彼女、面白いよね。望み通り耐性を付けてあげるよ。心臓が止まっちゃったら大変だもんねー。
「ちっ。いらないことをしないでいただきたい。」
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