第7話 ギフト

 この国、ディバロ王国の成り立ちは、聖獣との契約から始まる。


 この地を住処とした聖獣との契約により、王家の血筋には必ず三人の能力者、ギフトを持ったものが生まれてくる。


 今までの歴史の中で、ギフトを持ったものが生まれてくるのは、王家の直系とは限らなかった。傍系であったこともある。


 聖獣は争いを好まないから、そのギフトをもった三人が国にとどまり、その地を守り、治める事によって、聖獣の加護が防護壁を作ってくれていた。


 三人が国内にいなければ、防護壁は形を成さない。


 だから、ギフトを持った者が王になるか、要職に就くことが多い。


 ギフトの能力の中には、そこにその人がいるだけで、作物が最高の状態に育つなど、過去にはそんな分かりにくいギフトもあったそうだ。


 あの女達の過去の出来事を視て名前だけは知っていたけど、ギフトの事を詳しく知ったのは、学園に入学する少し前。家の蔵書を読む事が許されてからだ。


 今、ギフトを所持しているのは、国王ただ一人。


 二人は見つかっていないとされている。


 王家は、国は、ギフト所持者を探している。


 私はそのギフトを持っている。


 でも、誰にも言うつもりはない。


 最初は、これが何なのか理解できなかった。


 何かに触れた時に、突然見える光景。


 人に接する機会が少なかったから、最初にそれを視たのは、食器を触った時だった。


 それを運んできたであろう使用人の、過去、そして今から起こる事がはっきりと脳裏に映し出されていた。


 その使用人は、公爵家の物を度々盗み出しては、お金に換えるような人だった。


 だから、それが見つかって、問いただされて、咄嗟に逃げ出して屋敷の外に飛び出し、直後に馬車に轢かれて血まみれで横たわっているところまでが視えた。


 初めて、人の運命を視た瞬間だった。


 それを視た後、実際にその通りになった。


 轢かれたその使用人がどこかへと運ばれて行くのを、カーテンに隠れて見ていた。


 その使用人に対しては何も思わなかったけど、自分に何が起きているのかその時は戸惑ったものだ。


 それから、誰かが触ったものに触れた時に、その誰かの過去や未来が時々視えるようになった。いつもではないし、自分ではコントロールできないから役に立つのか立たないのか分からない。


 何にせよ、それがギフトの能力だと分かって、私がギフト持ちだと分かって、愉快でたまらなかった。


 無力で小さな自分が、国を脅かす存在になれるのだから。


 これで、あの男とあの女に復讐ができる。


 私はこの学園を卒業したら、この国を出て行く。


 その瞬間が今から楽しみで仕方がない。


 防護壁が消えた瞬間のあいつらの顔を見れないのが残念だ。


 あの妹も、みんな、混乱の中で絶望すればいい。


 知るはずもない事を私が知っていると、あの男だけは、私がギフト持ちの可能性があると薄々気づいているのに。


 あの男は、散々私を虐待してきた。今更私をギフト所持者だと認めたくもないのだ。













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