元絵師はモシャスをとなえた

胡瓜。

元絵師はモシャスをとなえた

元絵描きはモシャスを唱えた

作業机の上には参考にしているキャラと

デザインをプリントする鞄などのグッズが散乱している

俺は元々、オリキャラや風景などを描いていた絵師だ

オリジナルの絵で生計を立てようと

仕事を求めて上京したものの鳴かず飛ばずの毎日

東京の人混みに飲み込まれて

ひと時の間、絵を描くのを辞めた

なんの希望も持たず生きている事を疑いさえした

そんな時、絵描き時代の仲間から連絡が来た


 「お前の絵柄が好きで忘れられないからまた見たい

  オリジナルの絵が描けないって言うなら

  俺の絵を模写してお前風にアレンジしてくれよ」


俺は何もすることが無かったから

とりあえず描いてみることにした

久しぶりに握った筆は意外な事にすんなり体に馴染み

意思を持つように動き出した

それはまるで魔法の杖の様だった

すこぶる調子が良かったから

オリジナルの絵も久々に描いてみようと思った

しかし、呪文を忘れてしまっていた

メラもヒャドもホイミも唱えられなかった

俺は模写しかできない魔法使いだった

こんな事では人を感動させることもお金を稼ぐ事も出来ない

やはり、筆を捨てようかと思ったある日

俺の前に仕事があらわれた

それは有名キャラのグッズデザインだった。

仕事は仲間を呼んだ

仕事は悩んでいる暇など与えてくれなかった。

俺は『模写の賢者』というあだ名で

認知されはじめた


人々が俺の模写に感動してくれた。

仕事を与えてくれた

俺は創り出すことを諦め、模写専門の人になった

決して絵師ではない

俺は元絵師の模写の賢者だ

俺はこれから人の作品に輝きをプラスして人々を驚かせる。

故に今日も

元絵師はモシャスを唱えた

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元絵師はモシャスをとなえた 胡瓜。 @kyuuri-no-uekibachi

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