第13話 最初の一撃
「なあ桃園さんさぁ、もうさっさと
そう何か、まるで犬か猫……いや多分桜井さんから見れば私はそれ以下の存在なのだと思った。
何故そこまでの態度と言葉を彼女より浴びせられなければいけないのかがわからない。
蔑む様な視線と何か汚いモノを追い払うかの様に手でしっしっと私へ、一刻も早くあっちへ行けと言わんばかりに何度も手振りをしつつ桜井さんは厭らしく、そう人を完全に小馬鹿にした様相で嘲笑いながらも軽快に言い放ったのである。
この日は丁度今年最後の日、つまりは12月31日である。
今まで雑務に追われていたけれどもである。
この日は偶々火曜日で、午後からは比較的時間に余裕があった。
私は相も変わらずリーダー業務だったと思う。
夕方近くとなりある程度の仕事を片づければだ。
17時の退勤までにまだ少し時間があった頃、それを見た最初の人間は一体誰だったのだろう。
それは年末年始の勤務表。
日本全国の病院で働くスタッフ達にとって一番のベストセラー。
そして当然透析センターにおいてもその存在は絶対に揺るぎはしない。
「私は今日の勤務が終われば九州へ帰るよ。もう絶対九州からは出ないよ」
「ふーん、私はどうしようかな。2月で契約が切れるけれどこのまま延長してもいいし……」
本日12月31日を以って鷲見山さんの雇用期間は終了となる。
本人は自宅で待っているだろう愛犬と彼女の愛する弟の許へ一刻も早く帰りたいようだ。
この半月と言うもの毎日の様に聞かされ続けてもうお腹が一杯である。
まあ私からすれば面倒な存在が一人減るだけ精神的負担も幾分かましになるのかも……と鷲見山さん本人には悪いけれどもだ。
しかしもう相手へ心を気遣う余裕が私にはなかった。
だから特段その話題に関して何も返事はしていない。
第一私が気にするとすればである。
明日の年始からの自分の勤務の確認をするだけ。
しかしこればかりは何度勤務表を見ようともである。
穴が開く程見つめたとしても私からリーダー業務がなくなる訳ではない。
また私がBチームのリーダーが続けばである。
藤沢さんは何故かAチームの受け持ちへと隣のフロアーへの応援に行く日が増えていた。
そう見ようによっては常勤の准看護師の私が高確率でBチームのリーダーとなり、透析を円滑に回していかなくてはいけない状態になっていたと言う訳である。
はっきり言ってこれには流石の私も何でこうなる?……と思ってしまう。
私はあくまでも一介の准看護師なのだ。
そこは普通に病棟若しくは外来より人員を移動させてでも正看護師をリーダーへ据えるのが普通でしょ。
そして私とは色々と捉え方は違えどもだ。
私がリーダーとなる事を善しと思っていないのが桜井さんと……多分藤沢さんもだろう。
最近になって……いやいや土山さんが退職してからもだが、本当に桜井さんと言う人物は日が経つ毎にその態度は色々と嫌味なくらい露骨なのである。
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