5.


「お前は誰が失敗作を生み出したか解るか?」


主人公は巻き戻りながら貴方に話しかけているようだ。


貴方はその答えを知っている。


「誰が失敗作を生んだかは解らなくても、失敗作がどこへ辿り着くかは予想が付くだろう」


「俺はそうなってしまう前に、失敗作を生み出した親を削除する」


主人公の左頬に瞳が芽吹いた。


主人公は地面に十字剣を置くと、剣と共に空へと落ちていった。


宙で上手く剣が主人公の手に吸い寄せられ、主人公はそれを慌てて突き放すように掴んで見せた。


空へ足を付けると、暗い色をした建物から気の弱そうな少年が翼をはためかせながら迎えてくれた。


「あ、貴方は一体誰なんです?」


「8の地点で会っただろう、覚えていないか?」


「え?ええ、そうなんですかね?」


「お前は嘘を付いていないんだな?」


「な、何のことです?」


「6の地点に失敗作を生み出した者は居なかった」


「は、はあ?その方なら5つ先に居ますよ」


「お前はデタラメしか言わないんだな」


「いえ……」


気の弱そうな翼の生えた少年は背中を丸めて建物の中に戻っていくと主人公も戻っていく。


「どうして追いかけてくるんです?」


「物語が進んでいるからだ」


「は?はあ……?」


「いつも疲れた顔をしているぞ、たまには休むんだな」


「あ、ありがとうございます……」


建物の中の吹き抜けの天井を見上げると、主人公は今一度、空へと落ちた。


虚空の雲の中へと吸い込まれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る