第9話 素敵なカップリング

 虐メンが自爆をかました翌日、アレクはソフィアとソフィーにその後の顛末を報告していた。


「彼女達は退学処分になったよ。他にも余罪がゴロゴロ出て来たからね。情状酌量の余地はなかった」


「そうなのね...」


 ソフィアとソフィーは目を伏せた。


「それでソフィー、改めて聞くけど、君はずっと虐められていたな? 昨日のことだってソフィアとソフィーのロッカーを間違えて荒らしたと彼女達が証言している」


「そうだったの!?」


 ソフィアは目を剥き、ソフィーは目を逸らした。


「あぁ、俺もたまたまその場面を目撃したことがあるからな。ソフィー、ちゃんと訴え出るんだ。証言を求められたら俺がするから」 


「わ、分かりました...」


「ソフィー、なんで黙っていたの?」


「ごめんなさい、お姉様に心配掛けたくなくて...」


「もう...しょうがない娘ね。これからは我慢せず、すぐに言うのよ?」


「はいっ! お姉様!」


「じゃあ放課後、俺と一緒に学園長に会いに行こう」


「はい、よろしくお願いします」



◇◇◇



 放課後、ソフィアはいつものようにカップリングのネタを求めて校舎を徘徊していた。すると、


「ソフィア様、ちょっとよろしいでしょうか? お話ししたいことがありまして」


 なにやら険呑な雰囲気を漂わせた令嬢達に囲まれた。


「あなた達は?」


「ここじゃなんですから場所を変えましょうか」


 そう言われてソフィアは空き教室に連れ込まれた。


「それでお話というのは?」


「私達が誰かご存知でしょうか?」


「ごめんなさい、ちょっと分からないわ」


「私達はそれぞれレイナルド様、マシュー様、デレク様、ブラッド様の婚約者ですわ」


「はぁ、そうなの。それで?」


「人の婚約者に色目を使うのは止めて下さい!」


「えぇっ~! ちょっと、なんのこと!?」


「とぼけないで下さい! 生徒会室でずっと一緒に居たでしょう! 昨日だってあなたのことを皆様が庇っていたわ! あなたが誑かしたんでしょう!」


「ちょ、ちょっと待って! 私、誑かしてなんかいないわよ!」


「じゃあなんでいつも皆様方を熱い目で見詰めているんですか!」


「そ、それは...」


 カップリングのためですとは言えない...


「レイナルド様、あなたに夢中になってから人が変わってしまったようだわ...あなたのせいよ!」


「マシュー様も!」「デレク様も!」「ブラッド様も!」


「「「「 責任取りなさいよ! 」」」」


「えぇ~!?」


 ソフィアは困惑するしかなかった。



◇◇◇



 一方その頃、学園長室には、アレクとソフィーと生徒会役員であるレイナルド、マシュー、デレク、ブラッドの面々が顔を揃えていた。虐めの実態を報告するためである。


 ちなみに学園長室からソフィアが連れ込まれた空き教室が良く見える。何気なく窓の外に目をやったアレクは、令嬢達に囲まれているソフィアの姿を目で捉えた。


「ソフィア~!」


 気付いたら大声を上げて走り出していた。残された面々はポカンとしている。


「ソフィア! 無事か!?」


 息を切らしてアレクが空き教室に飛び込んで来た。


「アレク!? どうしてここに!?」


 そしてソフィアを囲んでいる令嬢達を見て、瞬時に状況を判断し舌打ちした。ソフィアを庇うように令嬢達の前に立ち、


「ソフィアに何の用だ!」


 眼光鋭く令嬢達を睨み付けた。令嬢達が怯んだ時、今度はレイナルド、マシュー、デレク、ブラッド、そしてソフィーが部屋に飛び込んで来た。


「「「「「 ソフィア(お姉様)! 無事か(ですか)!? 」」」」」


 一瞬でカオスになる空き教室。婚約者同士が揉め始め、ソフィーがそれに巻き込まれている。その間隙を縫ってアレクはソフィアの手を取り走り出した。


「逃げるぞ、ソフィア!」


「ちょ、ちょっと!?」



◇◇◇



「はぁはぁ...ここまで来れば大丈夫だろ。それで? 何があった?」


 息を切らしながらアレクが尋ねると、ソフィアは事の顛末を語った。


「なるほどな...令嬢達が勘違いするのも無理ないか...」


「やっぱりそうなのかしらね...」


 ソフィアはちょっと落ち込んでいるようだ。


「なぁソフィア、前に俺がお前に聞いたこと覚えてるか?」


「なんのこと?」


「ほら、カップリングの話だよ。俺は誰とカップリングされてんのかって」


「覚えてるわ。なぜかアレクは誰ともカップリング出来ないのよね」


「だったらさ、俺とカップリングしないか?」


「えっ!? それってどういう!?」


「鈍いヤツだなぁ~! 俺と付き合ってくれって言ってんの! ソフィアに相手が居るってことが分かれば、今日みたいなことは無くなるだろ!?」


「そ、それはそうだけど...アレクはそれでいいの?」


「知らなかったのか? 俺の中ではずっと俺とソフィアはカップリングされていたんだぜ?」


 アレクの告白を聞いてソフィアは真っ赤になって俯いてしまった。



~ Fin. ~








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残念令嬢は今日も推しメンを愛でるのに忙しい 真理亜 @maria-mina

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