第96話 肉食系女子

「ひょうわぁ!?」


 奇声を発してアリィが仰け反る。


「こ、これは...なんともグロいな...」


 ユウもかなり引いた。


「そうか!? 単なるデカいミミズじゃろ!? なにを気にすることがある!?」


 ラキは平然と言い放った。


「ねぇこれ食えるの!?」


 リオは思考がぶっ飛んでいた。肉を求めるあまり、頭がおかしくなったのかも知れない。


「「 こんなもん食えるか! 」」


 ラキとユウの声がキレイにハモッた。


「...で!? どうする!?」


 ユウがラキに尋ねる。


「そら倒すしかないじゃろ。こんなに揺らされたんでは、おちおち昼寝も出来んからの」


 ラキはサラッと言い切る。


「...分かった。じゃあ行くか...」


 ユウが渋々といった感じで腰を上げるが、アリィは小刻みに震えて涙目になって踞ったままだ。


「あ~...アリィは無理しなくていいかな。ここで待機しててくれ」


 アリィは「あんなの無理無理無理...」と呟きながら頷いた。



◇◇◇



「で!? どうやって倒す!?」


 外に出たのはいいが、相手は土の中だ。どうするつもりなのかラキに尋ねる。


「そうじゃな...まずはヤツを誘き寄せるとするか。リオ、お主が動き回れ。エサに釣られて寄って来たヤツを」


「食っていいの!?」


 リオが食い気味に答える。目は虚ろだし、ヨダレを溢している。ちょっと...いやかなり危ないヤツみたいだ。


「じゃから食うな! そうじゃな、ヤツを倒したら好きなだけ肉を食わしてやる」 


「やったぁ~! 肉ぅ~!」


 喜び勇んで飛び出して行ったリオの瞳には「肉」という文字が見えるようだ。ユウは慌ててリオをバリヤで包む。


 するとエサに食い付いたデザートワームがリオを追って来た。地面をめくり上げながらリオに食い付こうとする。


「リオ! こっちじゃ!」


 ラキが自分達の所に誘導しようとする。ユウはユグドラシルの枝を構えた。が...


「肉肉肉ぅ~!」


 肉のことしか頭に無いリオは、振り返って単身デザートワームに向かって行ってしまった。ラキもユウも止める間がなかった。


「ウオォォォッ! 肉ぅ~!」


 リオの渾身のパンチを浴びたデザートワームの10mはあろうかという巨体が、宙に浮いてもんどり打って倒れて...そのまま動かなくなった。


「イェイッ! 肉ぅ~!」


 ラキとユウはその様を呆然と見詰めていた。



◇◇◇



「はふぅ~♪ 幸せ~♪」


 今、リオの目の前には鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉などなど。あらゆる種類の肉料理が所狭しと並んでいた。リオは至福の笑みを浮かべている。


「さぁさぁリオちゃん♪ ドンドン食べて下さいね♪」


 こちらも満面の笑みを浮かべたアリィが、甲斐甲斐しく給仕している。余程あの気持ち悪いデザートワームを片付けてくれたことが嬉しかったのだろう。


 その側でラキとユウは苦笑しながら肉を軽く摘まんでいた。

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