刑務所って青春だ!!〜私の2回目の青い春〜
GK506
第1話 幕を開けた刑務所ライフ
私は今、刑務所の中にいる。
それも、酷いイジメが横行しているとの悪名高い某県のK市にあるK少年刑務所に収監されているのだ。
なぜこうなったのか?
この法治国家である日本国において、法を犯し犯罪者と認定されたから。
簡潔に答えろと言われたのなら、そう答えるだろう。
しかし、世の中の全ての現象は、1+1=2であるという様に、簡単に定義出来るものではない。
それに、1+1=2にした所で、なぜそうなるのかと問われれば、その原理を正確に証明出来る人間は、あまり多くないであろう。
そんな訳で、私は色々な事情(いつの日にか語る日が来るかもしれない)の末に、犯罪者と認定されて、K少年刑務所に収監される運びとなったのである。
私は、今年で42歳になる。
なぜ、中年の私が少年刑務所に収監されるのか?
それは、私がピンク(性犯罪)で捕まったからだ。
K少年刑務所では、性犯罪の矯正プログラムが実施されていて、私は、犯した犯罪の性質上、そのプログラムを受けなければならない為、中年であるのに、少年刑務所にはいる事となったのだ。
工場に入る前の準備施設、新入訓練工場では、おやじ(刑務官)に、異常なまでに厳しい指導を受けた。
例えば、作業中は手元以外は見てはならず、名前を呼ばれれば全力で叫ばなければならない。
こんな事をしていたら、
おやじは明らかに受刑者の数段上をいく社会不適合者であった。
再犯率の高さは、日本の刑務所の異常な生活環境にあるのではなかろうか?と、私は思わずにはいられない。
そんな厳しい新入訓練工場での日々を終え、いよいよ私は、工場へ配属される事になったのである。
新入訓練工場では、上も下もなく、皆同期(年齢はバラバラであるけれども)であったのだが、配属された工場では、番手(古い者が偉いという謎のシステム)というものが存在していた。
私は【さらっこ】と呼ばれ(由来はよく分からないけれど、どうやら新人を表す言葉であるらしい)部屋の2番手に引っ付かれる日々が始まった。(嫁をイビル姑の様に細かい所作にいちいちダメを出してくるのである)
まるで中学生の様なレベルの低いイジメ。
学生時代イジメとは無縁だった私(イジメる事も、イジメられる事もなかった)からすれば、とても新鮮な経験ではあったけれども、出来ればこんな経験はしたくはなかった。
工場で何かミスをすれば、部屋に帰って報告しなければならず(工場では用便に行くタイミングや、おやじに許可を貰う方法など、細部に至るまで事細かなルールがあり、一つでも間違えようものなら、舎房で報告しなければならないのである)ミスのあった日は、夕飯を
そして、【さらっこ】は刑務所のルールなど分からないから、結果として毎晩夕食抜きという地獄の日々が続くのであった。
ただでさえ刑務所の食事は量が少ないというのに、夕食を抜かなければならないので、私の体は悲鳴を上げ始めていた。
それに加えて、この刑務所では運動がとても激しいのだ。
何とか運動を終えた後、点呼を取る時が一番キツかった。
動いていないと、裏ももが痛くて、息が苦しくて、どうにも堪らないのである。(それに加えて、私の配属された工場にはご高齢の方もちらほら混じっているので点呼を何度も間違えるから、なかなか動き始められないのである)
そんな地獄の日々を送る事1ヶ月、私はようやく地獄【地獄の一つ】から解放された。
私の部屋の2番手の不正が発覚して、懲罰を受ける事になり、この工場を去る事になったのだ。
この刑務所では、3ヶ月に1回程の頻度で
その受刑者が意を決しておやじに私の部屋の2番手の悪事を密告して、その結果、2番手と共に懲罰房へ連行される事となった。
暴行の被害者も懲罰を受けるとは、全く意味が分からなかったけれど。
とにかく、その出来事をきっかけに、私のプリズンライフは大きく変貌を遂げるのであった。
部屋の2番手があがり(あがるとは懲罰を受けるという事らしい)私の部屋は解体されて、私は工場で
その衛生係は、元官僚という事もあり、前の部屋の2番手とは打って変わって常識人であった。
20年の社会人経験がある私の細やかな気遣いが、衛生係に評価されて、くそもた(どんくさい、
偉い人に気に入られると、自分の評価も上がる。
私自身、この短期間で何か特別な能力を手に入れた訳ではないし、私は、くそもたと呼ばれていた私のままであるのに、衛生係に気に入られた途端に世界が変わった。
刑務所とは、閉じられた狭い世界なのだ。
娑婆の人間は刑務所を恐れるけれど、刑務所は娑婆よりずっと安全で快適な場所なのである。
私の自由な刑務所ライフが、今、幕を開けようとしている。
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