冬の雨

れーと

第1話

 雨は気分を憂鬱にさせる。



 雨の降る音で目が覚めた。土砂降りとまでは行かないが、そこそこ強い雨だ。冬の朝というものは冷え込んで布団から出るのがとても難しいが、雨の日の朝は放射冷却で冷え込むこともなく僕はあっさり起き上がる。


 今日は休日だ。何をしようか。いや、雨が降っているんだ。今日は何もしまい。

 今日一日の予定を決めた僕はふと時計を見た。ハッとした。時刻は11時、昼にさしかかっている。ああ、雨の日は外の明るさがあまり変わらないものだから時間感覚が狂ってしまう。休日の半分が過ぎてしまったことにやや憂鬱になる。そんなの知ったことかと雨は淡々と降り続ける。気分が雨に濡れて沈む。


 午後5時。季節は冬であるからそろそろ日が傾いてくる頃だろうか。そっと窓の外を眺める。相変わらず雨が降っている。窓を開けた。ザーーと雨の降る音がする。この辺りは空気が綺麗というわけではないが、雨が降ると少し空気が美味しく感じる。

 少し遠くの建物は雨のせいで白くぼやけて見える。淡々と、雨は降る。淡々と、雨音は不規則にリズムを刻む。そんな様子を眺め、そんな音を聴いていると心が落ち着いてくる。


 雨は、いいな。


 そうだ。雨が降る中外を歩くというのなら水は跳ね、傘を持つ手は冷え、ボロボロの靴のつま先から雨水が侵入してくる。でも、家から眺める雨はいいな。濡れてしまうから外出に適しているとはとても言えないし、雲のせいで外は暗いし。ほら、今も日が沈んできて更に外は暗くなってきた。それでも淡々とリズムを刻む雨音と、冷たく冷えた空気を更に澄ましているこの雨が、僕は好きだ。



 ああ、雨は気分を高揚させる。雨が降っているけれど、散歩をしてみるのもいいかもしれない。

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冬の雨 れーと @remten91

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