飢餓と罪

たーくん

一章〜友〜

第1話《餓鬼》

【西暦2200年日本・旧東京】


「俺達人類の成れの果て。と言ったらいいのだろうか、もはやを人類と言ってもいいのだろうか。


奴らはとにかく飢えている。

人間も動物も関係無い、奴らの視界に映った生物は全て捕食対象に変わる。

たとえ獰猛な肉食動物でさえも臆すること無く向かっていく。


奴らには痛覚が無ければ恐怖心も無い。

確か、大昔にはなんと言ったか…

そう、ゾンビ?とかいう空想生物に近いモノと考えてくれていい。


だが、その空想生物は足もノロければ、胴体へ大きな損傷を与えれば死んだらしいし、知恵も無い。

なにより、腐敗した体が臭く力が強い以外の脅威は無かったらしい。


だが、『餓鬼』奴らは違う。

足も早ければ、力も強い。

脳を破壊、又は首を落とさなければ死ぬことも無い。生半可な傷や四肢の欠損程度では時間が経てば回復する。

更に厄介なのは奴らの知恵だ。

会話が出来るわけでも道具を使う訳でもないが、

自分の生命の危機が訪れれば逃走するし、

奴らが声をあげた時は直ぐに逃げろ。


・生命の危機に陥った時

・逃走が測れず窮地に陥った時


この2つの条件を満たすと奴らは吼える。

絶叫と言っても良いだろう。

その声を聞いた奴らは声の元へ集まってくるのだ。


一対一でもキツいのに、大勢集まって来るってことはどうなるか、想像できるだろう?


また、奴らに噛まれた者は直ぐに自害、又は最後まで抵抗すること無く食われ尽くされる事をおすすめする。


ヒトとして死にたいならな。


餓鬼に噛まれたものは5分も経てばヤツらへの仲間入りを果たせる。


高い再生力と人外の力を手に入れる!魅力的だなぁー?

だが、代償はデカいぞ?

永遠の飢えを味わい、知能を捨てることになる。


更に最悪なのは女達だ。覚悟をしとけ、

男の餓鬼は女の人間を喰いながら犯す。

もちろん5分もすれば餓鬼になるが、女の腹には子が宿る。

どういう訳か、奴らの種は9割の確率で孕む。

そんでもって腹の中の子供の成長も早い。

ひと月もすれば母親の腹をぶち破って産まれてくる。

普通なら親は死ぬが、奴には回復力があるからな、数日もすれば元通りだ。

産まれた子供は一見普通の人間の子供だ。よく泣くし力もそんなに強い訳では無い。


だが、見た目で騙されるな。親が餓鬼なら子も餓鬼だ。

子供の泣いた姿に同情した人間が、隙を見せて近付けばそのまま首元をガブッと喰われる。


そして、1番重要なのは、いっちょまえに奴らは子を守ろうとするということだ。

餓鬼の子が吼えたら生きることを諦めろ。

通常の餓鬼が吼えた時に比べ、5倍近くは寄ってくる。全力でな。下手に逃げて仲間を危険に晒すのだけは絶対にやっては行けない。

肝に銘じておけ。

よし、ここら辺で今日はいいだろう。


以上!第1回『餓鬼学』の授業を終了する!』


人類戦陣訓じんるいせんじんくん、始め!!」


1つ!

人としての尊厳を保ちたいなら、傷を受ければ直ぐに死ね。


1つ!

友を守りたいなら直ぐに死ね。


1つ!

家族を守りたいなら直ぐに死ね。


そして、我らが人である限り!


我々人類に残された道は他に非ず!


奴らを殺せ!戦友ともを助け!人類かぞくを守り!

我々の世界を取り戻すのだ!」


「敬礼!!」


『対・餓鬼駆逐戦兵士養成学校第3支部』

総勢102名の男女が一斉に右の拳を握り、心臓を2回叩く。

そして開いた指先を前へと伸ばし、敬礼の構えをとる。


それは、自身の心臓いのちをかけ、

人類の希望に手を伸ばし、足掻いていく様を形にした敬礼であった。






■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪


はじめまして、作者です。

こちら『飢餓と罰』が初作品となります。

至らぬ点などもあると思いますが、暖かな目で見ていただければなと思います。


面白い・続きが気になると思ってくださった方!

ぜひ、評価の方をよろしくお願い致します。

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