日常に潜むどんでん返し
桜乃 ソラ
第1話 バレてはいけない
俺は今、耳をよくすませている。人の声、足音を聞き逃さないために。
今いるのは2階。とある理由でこの建物にはよく来るのだが、ここはその中で唯一人目につかないところであり、隠れることができる場所である。
かと言って、絶対に安全というわけでもない。それに耳だけに神経を集中させるわけにはいかない。目もしっかり使うのだ。
ヤツらが一階にいるときはいいが、階段を上がってきたり、この場所に近づいてきたりすると危険だ。
すぐに対処できるように。
耳をすませ。
足音を、聞き分けろ---
トッ、トッ、トッ・・・・・・
あっ、誰かが来た。階段を上る足音。
このゆっくりとして、でもしっかりと質量がある響きは--あの大人の女性の音だ。
やばい。
すぐさま俺は準備に入る。床に伏せていた身体を起こして座り直し、定位置にスタンバイ。
ここまでにまだ二秒もたっていない。もちろん足音の主は部屋にたどり着いていない。
完璧だ。
そして約一秒後。ガチャッと扉を開く音がした。
「あらユウヤ、ちゃんと勉強してるのね。いつきても机に向かっていて偉いわ」
「今日はもう宿題が(学校でやって)終わったからね。明日の予習だよ」
「そう。邪魔して悪かったわね。頑張って」
大人の女性、母が去っていく。
---デイリーミッション完了。
今日はもう来ないだろうと、俺は安心してマンガの続きを読み始めた。
日常に潜むどんでん返し 桜乃 ソラ @Ciel-sorairo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。日常に潜むどんでん返しの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
つぶやき日記/桜乃 ソラ
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 33話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます