その男、直観につき。

エリー.ファー

その男、直観につき。

 これがこうなって、こうなると、こうじゃん。

 で、それがこうなるからこうなって、こうなるはずだろ。

 じゃあ、そうなるんだからこれがこうして、こうなると。

 できるんじゃないか。

 これ、解けるんじゃないか。

 いや、まだこの問題に着手したわけじゃないけど、宇やる前から何となくわかる。

 はたから見たら論理的ではないかもしれないけれど、俺の中では筋の通った考え方だし、これは間違いない。

 これ、解けてる。

 やっちゃった。

 俺、やっちゃったかもしれない。

 俺の直観、冴えてるかもしれない。

 俺、この問題を解いちゃったぞ。

 エニュアルドの第三予測、および、指数パターンからのアプローチ。

 解けた。

 世界一の難問。

 ていうか、まだ誰も解いてない問題、解けちゃった。

 おいっ、解けたよっ、解けたってば。

「うるせぇな。何がだよ」

 エニュアルドの第三予測だよっ、やったっ、俺、解けたっ。

「いやいや、ベクトルのパターンで解いてるやついるから」

 ちげーよ、バカ。エニュアルドの第三予測の指数パターンだよ。

「解けるかよ、あんな難問。無理無理」

 いや、無理じゃないんだってマジで解けたんだって。

「証拠はあるのかよ」

 いや、今のところ頭の中で解けたって感じだけど。

「じゃあ、解けたっていわねぇんだよ、バカが。舐め腐ったこと言うとぶっ殺すぞ」

 いやいや、違うんだってマジなんだって。俺、結構ちゃんと考えたんだって。もう、頭の中じゃ解けてるんだよ、あとは書くだけなんだよ。

「じゃあ、書いてから叫べよ、このクソバカッ。今何時だと思ってんだよ」

 午前五時十八分、十九秒。かな。

「かな、じゃねぇんだよバーカ。死ねっ、てめぇが解けた興奮で訳わかねぇテンションになってるのと違って、こっちは記録のせいでずっと計器とにらめっこして死にそうなんだよ。解けてからものを言え、バカッ」

 さっきからバカバカ言いやがって、お前こそなんなんだよ。そんな記録とってなんかの役に立つのかよ、言ってみろよ。

「人類が滅んで、もう四年経ってんだぞっ、食料もつき欠けてるのに、これからの食料のための研究もまともにしねぇで時間を潰せるわけねぇだろっ。ていうか、お前、この問題はまだ解かれてねぇとか言ったな、お前、言ったな」

 あぁ、言ったかもしれないけど。

「エニュアルドの第三予測の指数パターンは人類の大半が滅ぶ、二年前くらいに生まれたもんだろうがっ。いいかっ、人類が滅んでなかったら、それ、誰かが解いてるからなっ。お前が解けたのは、お前の頭がいいからじゃなくて、生き抜くための努力よりも数学の問題を解くことを優先するバカ度合いが上だっただけだからな。死ぬぞっ、その問題解けても、腹は減るし、死ぬからなっ」

 だって、他に面白いことないんだもん。

「面白いとか関係ねぇんだよっ、人間は死ぬんだよっ、バーカ。数学こじらせて死ねっ、クソゴミッ」

 別にそこまで言わなくたって。

「あと、もし本当に解けていたとしてもあんまり邪魔にならないところに書けよ」

 もっと、敬えって。奉れって。

「まずっ、解けているかどうかの検証が済んでないっ、解けたとして誰も幸せにならないっ、解けても死ぬっ、あと俺を苛々させるなっ、終わりっ。あっちいけっ、バーカッ」

 なんでそんなに怒ってるんだよ。

「俺がこんなに怒るまでにっ、どんな状況が重なったのか分析しろっ、推測しろっ、論理的に考えろっ、直観で分かるだろうがよっ」

 分からん。

「あっそ、死ねっ」

 ねぇ朝ごはんは、何。

「鯖缶っ」

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